レイナは背中を向けたまま、お尻を少し突き出すような格好で横になっていた。最初僕は彼女に触れないように細心の注意を払っていたが、六条ホテルの狭いベッドは身体のあちこちに力を入れなければ落ちてしまいそうだった。それで体勢を保つために彼女の肩に手を当て、脚を軽く絡めた。とにかく下腹部が彼女のお尻に密着しないように腰だけは引いていた。たった今セーターとジーンズを脱ぎ捨てたレイナは、その下に着ていた長袖のシャツとロングタイツ姿で寝ている。
レイナの肩を抱いて間もなくして、彼女は幸せそうな寝息を立て始めた。ボリュームのあるソバージュの髪からはヘアリンスの香りがほんのりと立ち上がっている。まだ完全に乾いていないということは、彼女はずっと浅茅しのぶの本を読んでいて、その後でシャワーを浴びたのだろう。僕はレイナの髪にそっと指を通した。
それにしてもベッドの中は心地よいぬくもりに包まれている。女の子と寝るときに共通するぬくもりだ。ふと僕は結花を思い出す。彼女と過ごした青く輝く日々。若くてしかも気配りのできる彼女とこうして一緒に寝たことが、遙か過去のことのように思われる。そんなすばらしい女の子を僕は傷つけてしまった。結花はフェイスブック上で中学の同級生と再会したという。今頃彼女はその人と上手くやっているだろうかと思う。いくら新しい幸せを手に入れたとしても僕と過ごした日々の想い出だけは心のどこかに刻み込んでおいてほしい。そんなことを想いつつ僕はレイナの頭を撫で続けた。「しかたないんだ、予め敷かれた運命にはどうしても逆らえないんだよ」とつぶやいているとそのうち眠りについていた。
明くる朝目覚めた時、レイナは椅子に座ってビールを飲みながらニュースを見ていた。
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