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京都物語 400

「まさか、ありえないわよね、そんなこと・・・
 でもね、この神上寺を歩いてるとね、本気でそう考えてしまうくらいにいろんな声が聞こえるの。明子さんは、T・M先生の言霊の力によって、平安時代に連れて行かれたんじゃないかって思い込んでしまう。(ごめんなさい。いつの間にか明子さんっていう本名を出してる。でも、許してね。「あなたの愛する人」っていうのは文字数も多いし、なんだか哀しくなっちゃうから。どこかで嫉妬を吐き出す場がないと、私も破裂しちゃう。なので、どうか大目に見てやってください(●≧з≦)
 藤壺は罪の意識から出家して尼僧になった。明子さんも同じ道をたどってる。もちろん、尼僧になる女性は他にもいる。でも、藤壺と明子さんには不思議なつながりを感じるの。私の第6感がそう言ってるのかもしれないし、平安時代から続くこのお寺のどこかから声が聞こえるのかもしれない。
 私は吸い寄せられるように、このお寺にたどり着いたの。ヤマシタ君と決別するつもりで来たはずなのに、どうもそればかりじゃないみたい。さっきも書いたけど、何かと出会うためにここへ連れてこられたような気がしてならないの・・・」
 長かった文章はそこで終わっている。それにしても、途中からは不特定多数の読者に向けられているというよりは、完全に僕個人に向けられたメールのような趣になっている。あれほど自分のブログにこだわりを持っていたレイナだったからこそ、申し訳ない気もする。
 レイナが僕に伝えたかったことはたくさんあるはずだ。だが、その中で最後まで心に残ったのは、本当に僕と決別しようとしている覚悟とも諦めともつかぬ彼女の思いだった。僕の目にはもう涙は浮かばない。だが、胸だけは塞がるように苦しかった。
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京都物語 399

「もちろん、そんなこと言ったところで、あなたにはぴんと来ないことは分かってる。あなたが求めてるのは、もっと現実的な答えだから。
 でもね、私たちが過ごした時間は1年だったの。今このブログを読んでくれてる方は、私がいったい何を書こうとしてるのか、全く分からないはず。でもあなたには分かるでしょ。
 つまり、私たちはもはや現実的な世界にはいないのよ。もちろん、「私たち」の中にはあなたの愛する人も含まれてる。

・・・ところで、いきなり話変わるけど、このお寺、パワースポットよ。いろんな所から声が聞こえるの。このお寺が創建された平安時代の人の声が空気中に染みこんでいるみたい。
 さっきの写真の中に、時間に浸食されたような鳥居の周りにお地蔵さんがたくさん座ってたの気づいた? このお寺、やたらとお地蔵さんが多いのよ。しかも、どれも表情豊かなの。ひょっとして、この声はお地蔵さんが話してるのかな?

IMG_3418.jpg

 とにかく不思議。平安時代がすぐ近くに感じられるの。いや、ひょっとして私は今、平安時代を歩いてるんじゃないかって、そう思うくらい。
 そういえば、T・M先生、やたらと言霊って言ってたでしょ。私たちはあの先生の作り上げた言霊の世界に含まれている。そんな話だったじゃない。私、思うんだけど、あなたの愛する人も、言霊に含まれているのよ。でも、その人は、私たちと違って、より真剣にT・M先生に傾倒していた。だから、1年では抜けられないくらいに深い世界に連れて行かれたんじゃないかしら。
 ねえ、何だか今、嫌な声が聞こえた。あなたの愛する人は、『藤壺物語』の中に含まれているって。
・・・もしかして、明子さんは、藤壺?」

京都物語 398

「今、私は歩きながら、どこかであなたを探してる。ここに来れば、何かと出会えるんじゃないかって、第6感がささやくの。覚えてくれてるかな? 新山口駅で初めて出会った日のこと。ブログに書いてたと思うけど、あの前日、私は仙崎に来てたのよ。
 おととい、六条ホテルを出て、もうあなたとは決別したつもりだったのに、京都駅に立った途端、自然と足が仙崎に向いちゃった。前の記事に、決別するために仙崎に来たって書いたけど、それでも私はあなたに会いたいと思ってる。素直になった途端、涙が出てきた(´∩`。)
 もちろん、もう会えないのは分かってる。あなたは今比叡山にいる。あなたは愛する人を探して歩いている。だから私はこれ以上あなたのそばにいるのがつらくなっちゃったわけ。だったら、私はいったい何を求めてこの神上寺を歩いてるんだろう?
 話は戻るけど、その答えは絶対に出ない。でも私は歩いてる。何かと出会えるような気がして」

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「ねえ、ヤマシタ君、今ふっと思ったんだけどさ、あなたの愛する人は、何かと1つになっちゃったんじゃないかしら? あなたはそのことにうすうす気づいてる。ただ、信じたくないだけ。
 でもね、私とあなたが経験した1日は、1年だったでしょ。もしそれが事実なら(何となく、事実のような気がするの・・・)あなたの愛する人が、T・M先生と一緒に過ごした時間は、何年にも、何十年にも、何百年にもなることだって、ありうるんじゃないかな。だとすれば、あなたの愛する人は、その時間の中に同一しちゃったんじゃないかしら?」

京都物語 397

「ヤマシタ君、私思うんだ。私たち必死になって歩いてるけどね、探している答えを手に入れることなんて、できないんじゃないのかなって。たとえばそれは、死んだらどこに行ってしまうのかを真剣に考えるのと同じような、不毛なことじゃないかしら。
 答えは絶対に見つからない。でも、「その時」が来たら、私たちは何かと1つになるのよ。それが答え。ただ、何と1つになるかという肝心のことが分からない。だから苦しいの。ねえ、ヤマシタ君、私の言ってること分かる?
 私ね、あなたのことが本当に好きだったのよ。私あなたに言ったでしょ。タイで出会ったソラブッドっていう人のこと。あの時私には日本に彼氏がいたの。でも、ソラブッドと一緒にいるうちにもう首ったけになっちゃって、彼氏のことなんてあっという間に心の隅っこに追いやられてしまった。ソラブッドの虜になったのは、やさしいとか男らしいとか、そんな表向きの理由じゃなかった。運命だったの。私たちは前世から愛し合っていた。つまり絶対に避けることのできない宿縁だったわけ。
 だけどソラブッドはバイク事故で先に死んじゃった。そうして後ろに乗ってた私だけが生き残った。彼の身体がクッションになったの。彼は自分の命と引き替えに私をこの世にとどめてくれた。
 あの事故自体が私たちの運命に組み込まれていたのかもしれない。だとすれば、私は彼の分まで生きようって、心に決めたの。ずるい私は日本に帰ってすぐに彼氏と結婚したけど、寂しくなかったわ。ソラブッドがいつも私の心の中にいてくれたから。でも、あなたにも話した通り、結婚生活は長くは続かなかった。今思えば、当たり前のことだったのよね。
 でもね、ヤマシタ君、あなたのことソラブッド以上に好きだった。信じられる? あれほど好きだった人のことを、私忘れてたのよ。あなたが忘れさせたの」 

京都物語 396

「異様な雰囲気・・・。
 この感じは、いったいどこからくるのだろうと思う。お寺の中に鳥居があるっていうのが異様なのかしら?
 いいや、それだけじゃない。何というのかしら、徐々に浸食してゆく感じ。そうして、やがてはすべてが同一してゆく感じ。この神上寺は、何かがどこかに向かって1つになってゆく過程にある。そこが、異様に感じるのだ、きっと。
 でもそれは、見方を変えれば異様なんかじゃない。むしろ正常な姿だと言えるかもしれない。たとえば、人は死んだらどこへ行くのだろうかと脂汗をかきながら悩んだことがある。でも答えなんて絶対に出ない。ただ言えるのは、死とは何かと同一してゆくということだ。京都大学の西田幾多郎先生は、それを「絶対矛盾的自己同一」と呼んだ。
 そう考えると、私もこの寺の何かと同一しているような気がする。
 足がすくむけど、それでも、奥へと進んでゆく。他の参詣者などいない。修行者たちが歩いた道らしく、参道はとても長そうだ。所々に石段が崩れていて、湧き水が流れている。ハイヒールだったら、絶対にこけてただろうな」

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「ふとヤマシタ君のことを考える。彼は今頃、何をしてるだろう?
 ふふふ・・・大体分かってる。私の第6感は、ちょっとしたものなの。
 彼は今、比叡山にいる。そうしてまた、私と同じように、必死に歩いている」

作者

Author:スリーアローズ
*** 
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とびっきり寂しい旅に・・・

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