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キラキラ 308

 僕も足を止めた。疲れの色にまみれている奈月は、それでも瞳だけは黒々としている。
 どうした? と僕が話しかけるより前に、彼女は瞳を閉じて、キスをせがんできた。僕は彼女の乾いた唇に、自分の唇を押しつけた。もはや、危ない、という声すら聞こえない。
 ただその瞬間、これからも奈月と一緒に歩くことができるという思いが、ぐらぐらと傾いた。キスをしながら僕はそんな不安を覚えていた。いや、絶望感と言った方がいいのかもしれなかった。
 ただ、それにしても、さっきまでとは違い、静かな、そして、自然なキスだった。僕たちは、もう、大学時代までの関係ではない。次第に強さを増す陽光が、じりじりと竹林に照りつける香りがほのかに立ちめるのを感じた。
 ホテルに戻ってきた時には、背中は汗でぐっしょり濡れていた。部屋に入ってもう少しゆっくりしていこうと強く提案したものの、奈月は黙って笑いながら首を振るばかりだった。
 僕たちは、タクシーを使って京都駅に戻ることにした。
「楽しかった」と窓の外を見ながら奈月はつぶやいた。まだ朝が早いために、嵐山の町には人通りはない。陽光だけが、存分に降り注いでいる。
 気安く言葉をかけることができないくらいに、奈月の横顔は物憂げだ。昨日よりも首筋が細く見える。この旅をするうちに、奈月はぐっと年齢を重ねたように映る。
 いや、昨日までの奈月とは、別人になったのかもしれないとさえ思う。奈月の抜け殻に、誰かの魂が宿っているのではないだろうか? そう疑った途端、陽光が顔面に照りつけ、すべてをくらました。
「そんなに急いで帰る必要はない」と僕は、目を細めながら、さっきから何度も言っていることを改めて口にした。だが奈月は、その言葉には何ら反応せず、ただ、乾いた笑顔を窓の外に投げかけるだけだった。奈月との距離は触れることができるほどに近いのに、とてつもなく遠く感じられた。
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想い出がいっぱい

 先週書いた「補欠の人へ!」に対して、思いの外、いろんなコメントをいただきました。共感してくださる方もいれば、やはり努力してレギュラーを勝ち取ることの尊さを語られた方もいました。いずれにせよ、感想をいただくということは、これほどうれしいことはないです。
 さて、結局サッカー日本代表は、熱戦もむなしく、惜しくもグループリーグで敗退してしまいましたね。で、予想通りですが、代表チームの敗退とともに、日本でのワールドカップ熱も冷めてゆくのを感じざるをえません。勝負の世界はやはり厳しいです。
 それにしても、ワールドカップのおかげで、日頃考えないことを考えるきっかけになりました。特に最近、「想い出」ということについて、思いを馳せるようになりました。
 私が高校時代にラグビーをしていたというのは、何度か書いてきたことですが、じつは、私のチームは県内でもなかなかの名門で、当時は9年間連続で、花園ラグビー場で行われる全国大会に出場していました。それが、私が高校2年生の時、県大会決勝で0対0で引き分け、抽選になってしまいました。結果はハズレ。連続出場が途切れました。くじを引いたキャプテンは、さぞかしつらかったでしょう・・・
 で、3年生の時、何とかリベンジしようとチャレンジしたのですが、僅差で負けてしまいました。『スクール・ウォーズ』が流行った、ラグビー全盛の時代。高校生活のすべてを賭けただけに、悔しさを言葉に表すことなんてできませんでした。その翌年、後輩たちが再び優勝し、そこからまた7年連続で全国大会に行くことになるのですが、やはり、複雑な心境でした。
 ただ、敗戦の悔しさは、5年経つときれいに消えました。おそらく、もしあそこで花園に行っていても、同じくらいの時間が経つと喜びも落ち着いたのではないかと思います。つまり、「勝敗」は、すべて「想い出」へと昇華されるのです。サッカーについても、今でも一番語られるのは「ドーハの悲劇」だったりしますよね。
 ならば、すべては消えてしまうのかということになりますが、それも違います。目標達成に向けてひたすらに努力したそのプロセスだけは、血となり骨となって今を支えている、そう思います。

キラキラ 307

 早朝の竹林の道を小走りで進みながら、そういえば、ここへ来る時にはまだ夜も明けておらず、空気もひんやりとしていたことを思い出した。あれからいったい何年経っただろうかと思う。
 いや、よくよく考えてみると、ほんの数時間しか経っていないのだ。僕は思わず両手の手のひらを広げて見た。今はいったいいつなのだろうと思う。そうして僕はいったい誰なのだろうと思う。不安になってふと顔を上げると、いつの間にやら奈月の隣に追いついている。その瞬間、心が少し落ち着いた。
 昨日はずっと奈月の隣を歩いた。それはとても自然な感じをもたらした。
 大学時代、僕たちはよく2人で歩いたものだ。僕は正門から学部キャンパスに続くけやきの道が好きだった。特に梅雨の晴れ間の風情には、何度も気分を良くしてもらった。地表から立ちこめる水気を含んだ空気が、けやきの緑をより鮮やかに浮かび上がらせるように思われた。授業が終わった後、僕はその道を奈月と歩いたものだ。あの時も奈月は決まって僕の少し前にいた。そうして、時折振り返りながら、いろんなことを、まるで少女のように楽しそうに話した。僕はそんな奈月の話を半分くらいにして聞いた。だからか、彼女が何を話したかはほとんど覚えていないが、その時の光景だけはくっきりと思い出すことができる。
 そうして、僕は今、やはり奈月と歩いている。大学を卒業して会うことのなかった時間の長さを実感することのないくらいにありふれた自然な光景だ。
 これからもこうして一緒に歩くことがあるに違いない。僕はそう思った。今回の旅が僕たちにどんな意味をもたらすことになろうとも、僕たちの関係は途切れることはない。そう考えるとすっと背筋が伸びた。それと同時に、辺りを囲む竹林のみずみずしい香りが鼻の奥に入り込んできた。
 もう少し奈月と一緒にいたい。離ればなれになった光源氏と六条御息所が文通したように、これからも気軽に連絡を取り合う関係でいるために、話をしておきたい、そう思った途端、奈月はふと足を止め、僕の顔をまっすぐに見上げてきた。

キラキラ 306

 その、竹箒が石畳を掃く音は、憎らしいほど軽快に境内に響き渡り、すっかり明らんだ空へと抜けていく。杉の枝にはガラスフレークのような陽光が散りばめられている。
 奈月は最後にもう一度、僕の胸に深く顔をうずめた。そうして、しばらくしてから、深くて短いため息をつき、「行きましょう」と小さく言った。
「とりあえず、ここを出ようか」と僕は、箒を手にした神官に一瞥して同調した。だが心は今にも割れて砕けんばかりだ。奈月は何も応えずに、いかにも名残惜しそうに空を見上げている。上からは蝉の声が、足下からは虫の声が聞こえる。奈月に何かを言おうとしているようだ。
 黒木の鳥居をくぐり、境内の外に出た瞬間、また何かの境界を越えたような気がした。明石海峡大橋を過ぎた時とはまた違った感覚だ。境界線を越えたというよりは、ページが1枚めくられて、次の場面にさしかかったような感じだった。
寂しかった。もう前のページには2度と戻ることができないと分かりきっているからこそ、寂しさは絶望的だった。「生きることって、こんなにつらいんですか?」という奈月の言葉が心の奥から聞こえる。それは奈月の声でありながら、僕の声でもあった。
 少し先を歩く奈月の背中を見ていると、この距離感自体が僕たちを象徴しているような気がしてならない。僕よりも若い奈月は、僕よりも生きることの苦悩を、しかも僕の気づかぬうちに経験していたのだ。そうして僕は、奈月が経験してきた苦悩を、自分のものとして後からなぞっている。
 昨日から奈月は『宿世』という言葉を何度も口にしている。ひょっとして、僕にとって、この旅は、奈月の苦悩に気づき、そうしてそれを追いかける旅だったのではないかと思えてきた。だとすれば、それはいったい何のためだろうかとも思う。というのも、昨日から、この世に無意味な出来事などないのではないかと思い始めている。
 気がつくと、奈月の背中はぐんと遠くなっている。

キラキラ 305

「光源氏が感じたことなんて、俺には分からない」と返した時、今度は自動車の音が早朝の空気を震わせた。ふと奈月を見ると、涙を流している。僕は思わず彼女を抱きしめた。
「つらいです」と彼女は声を震わせた。
「だから、もう少し一緒にいよう」と僕は提案したが、彼女は何も答えぬまま、やつれた肩を僕の腕の中で震わせるばかりだった。
「生きることって、こんなにつらいんですか?」と奈月は、僕の胸の中で声を大きくした。僕は「そんなことはない。きっといいこともあるはずだ」と答えた。ほとんど必死だった。
「だから、もう少し一緒にいよう。今すぐ帰ることはないよ」
 僕がそう言っても、奈月はむせび泣くだけだ。それはいかにも哀しそうな泣き声だった。これまで聞いたことのないくらいに。
 それからしばらく僕たちは抱き合った。そうするより他になかった。だが、さっきまで1つに溶け合っていたはずの僕と奈月の心は、ほんの少しだけズレが生じたような感覚があった。それで僕はより強く彼女を抱きしめた。奈月も、おそらくは僕とは違う思いを秘めながら、強く抱き返してきた。
 なんとかして、心のズレを埋めたかった。だが、最初はほんの小さな差だったのが、時間の経過とともに徐々に大きくなってゆくのを感じざるをえなかった。つまりは、奈月に、自分に対して素直になってほしかった。だがそれを直接口に出すことがどうしてもできない。
 そのうち、彼女を抱けば抱くほど、むなしさがしみわたりはじめた。今僕が抱きしめているのは奈月じゃなく、ほんとうは何かの抜け殻のような気がしてきた。あまり強く抱きしめると、壊れてしまうのではないかと思ったとき、境内に竹箒の音が聞こえた。見ると、白い装束を着た神官が境内を掃きはじめている。

キラキラ 304

「光源氏は、この野宮で六条御息所と別れる前に、和歌を詠んだんですよね。 

あかつきの 別れはいつも 露けきを こは世に知らぬ 秋の空かな

 平安時代の恋愛は、夜に、しかも月の夜に行われるのが普通だったって昨日言いましたよね。だから、朝は別れの時間になる。もちろん光源氏ともなると、何度も朝の別れのつらさを経験していたわけです。それでも、この日のつらさは、これまで経験したことのないくらいだと彼は嘆いているのです。『露けき』と言っているわけですから、涙が出るくらいだったのでしょう。
 そんな源氏に対して、六条御息所も和歌を返します。

おほかたの 秋の別れは かなしきに 鳴く音な添へそ 野辺の松虫

 朝の別れというのはただでさえ悲しいものなのに、鳴き声を添えてさらに悲しくさせないでおくれ、野辺の松虫よ、と虫たちに呼びかけています。源氏の和歌に同調しながらも、この野宮で鳴く虫たちに向けて呼んでいる辺り、彼女らしいですね」
 奈月はそう言って、蝉の声に耳を傾けている。すると、境内のすぐ外で、オートバイの音が聞こえた。その音を聞いて、僕は目が覚めたような気がした。
「なあ、奈月」と僕は言った。「もう少しだけ一緒にいよう。いろいろと考えたいことがあるんだ」
 すると彼女はやつれた表情を残したまま、笑いながらこう返した。
「野宮での別れの時に、光源氏が感じていたことと同じようなことを言うのですね」

キラキラ 303

「先輩」と奈月は言った。かすれた声だった。僕は思わず彼女の肩を抱いた。つい今まで裸のまま抱き合っていた時とは別人のような、華奢な肩だった。
「最後に、もう1回だけ、キスしてもらえませんか?」
 奈月は僕の顔を見上げて、わざわざそう頼んできた。
「最後?」とだけ、僕は問い返した。奈月はそれに対しては何も答えぬまま、強引にキスをしてきた。
 彼女の唇の熱を確かめながら、もはや僕たちは、学生時代の間柄ではなくなっていることを真に実感した。
 唇を話した時、奈月はうつむいて下唇を噛んだ。彼女が何を考えているのか、自分のことのように分かる。心がひとつになったような感覚は依然として心の中にある。
 それで僕は「最後なんかじゃないよ、また会おう」と自分の問いかけに自分で答えた。それから「新幹線の便をもう少し遅らせることはできないの?」と再度聞いた。奈月は何も答えないだろうと思ったところに、意外にも彼女は口を開いた。
「用事があるんです。それに、これ以上先輩と想い出を作ると、寂しさが増すばかりです」
 僕は何も返せなかった。僕の方も、昨日までの僕ではなくなっている。このまま奈月を連れて東京に戻ることができればどれほどいいだろうと思い始めている。だがそれを実行に移すには障害が多すぎる。なにしろ彼女はもうじき結婚を控える身なのだ。地元の市役所で働く誠実な婚約者が奈月を待っている。奈月のことだ。きっと心から可愛がられていることだろう。しかも、奈月の結婚を誰よりも喜んでいるのは、彼女の両親だ。一家の主の重病を乗り越えて、やっとのことでたどり着いた幸せの構図を僕が壊すことなどできない。
 奈月はすっと顔を上げて、杉の木立の間に顔をのぞかせている空を見上げた。その疲れの見える横顔は、「虫が鳴いていますね」と言った。それから奈月は風と対話するかのように、こう続けた。

キラキラ 302

「なあ、奈月」
 僕はジーンズに足を通しながらそう言った。とはいえ、何かを伝えようというわけでもなかった。言葉を口にした後になってそのことに気づいた時、思わずジーンズに足を引っかけてしまった。
 奈月もべつだん返事をしなかった。まるで何の気なしに声を掛けてしまった僕の心を見透かしているかのようだ。とにかく僕は、奈月が彼女のペースでどんどん服を着てゆくのがつらかったのだ。
「奈月」と僕はもう一度声をかけた。すると今度は顔だけこちらに向けた。暗闇の中ではよく分からなかったが、こうして見ると、彼女もずいぶんと疲れているようだ。髪の毛は乱れがちになり、目の周りには影が落ち込んでいる。さしずめ、無造作に扱われ続けた日本人形と言った風情だ。
「もう、帰ってしまうのか?」
 僕はそう言った。自分の心の真ん中にある言葉だった。
 すると奈月は、口元だけ笑みを浮かべた。それはもちろん「もう帰る」という答えだ。
「まだ早いよ。何も始発で帰ることもないだろう」と僕は言った。日はぐんぐんと高くなってゆく。ついさっきまで冷たさが混じっていた風にも、太陽の熱がにじみはじめている。蝉の声も徐々に大きくなり、足下の虫たちもそろそろ本気を出そうとしている。
 それにしても、美しい光景だった。早朝の、まだ誰もいない野宮の風景。風の匂い、虫の声。まるで僕たちのためにしつらえられたと思いたくなるような世界だ。
 結局奈月は何も言うことなく、すんなりと服を着てしまった。僕は寂しさによって空けられた心の穴がどんどん大きくなるのを感じながら、渋々と自分の服を着た。
 すっかり身支度を整えた奈月は、そっと僕のそばに歩み寄ってきた。そうして、僕の胸に寄り添い、その疲れ果てた顔を向けた。朝日に照らし出されたその表情は、美しかった。

補欠の人へ!

 サッカーのワールドカップ、盛り上がっていますね。日の丸を背負って戦う選手たちには、心から敬服します。これまでの2試合は予想以上に苦戦を強いられているようですが、勝負は終わってみないと分かりません。残りのチャンスを生かして、ぜひとも決勝トーナメントに進んでほしいですね!!
 さて、ピッチで戦う選手たちの影には、必ず控えの選手の存在があります。さらには、代表にさえ選ばれなかった選手たちも数多くいるわけです。私は、むしろ、そういう選手たちのことを考えたりします。
 というのも、私は中学まで野球をしていましたが、最後は補欠だったからです。あの時は本当につらかった・・・。その後、高校・大学時代はラグビーをしたのですが、いろんな選手と出会いました。期待されながらも不祥事を起こして選手生命を終えたり、また、有名選手になっても、引退した後で自分を見失ったりと、一流選手になれば最高の幸せが保障されるとは限らないのが現実です。
 結局、物事の価値というものは、何年か後になってみないと分からないものなんですね。

 さて、全国の補欠の人。くやしいですよね。プレーがうまくいかないこともあるかもしれませんが、指導者に評価されないということもけっこう多いのではないでしょうか。もちろん、指導者の方も必死なので、一概に責めることはできませんが、それでも、試合に出る機会がなければ、日頃の製菓を発揮するチャンスがないわけですから、たまらないですよね。
 これは私の経験則ですが、補欠にもかかわらずがんばり続けている人は、優しいです。「くやしさ」とか「たまらなさ」を知っているから、他人の心の痛みも分かるのでしょうね。しかも、この「くやしさ」とか「たまらなさ」は、孤独の世界に引き込みます。だからこそ、自分に声を掛けてくれる人のありがたみがひしひしと分かるのでしょう。
 そうして、ずっと後になって、気づくはずです。本物の優しさほど強いものはないということに。日本の強さは、きっとそういうところにあるのだろうと思いながら、テレビの前で手に汗握っています!

キラキラ 301

 昨日、須磨で奈月から聞いたばかりの『源氏物語』の場面が、まるで実際に体験したことのように鮮明に浮かび上がる。この世のものとは思えぬほどの光景だ。雷鳴が轟き、大荒れの海からは海竜王が現れた。海神として伝えられる住吉の神の化身だ。何が何やら分からない光源氏は、這々の体で自分の屋敷に避難する。だが雷光は連日連夜、空を切り裂くばかりで、ついには屋敷に落ちる。源氏の枕元には尊敬する桐壺院が現れ、須磨にとどまっていてはならないというメッセージを告げる。
 その亡き父の示唆に従って須磨の浜へ出たところに、明石の入道が船で現れる。入道もまた、住吉の神の導きによってここにたどり着いたという。かくして光源氏は、明石の君と出会う。まさに神がかり的な「縁」の仕業だった。
 だが奈月は「縁」という言葉を好まなかった。彼女の人生において、縁に見放されてしまったと実感しているからかもしれないし、もしかすると、明石の君の登場と引き替えに、六条御息所が物語から退出され、やがては死へと追い込まれたということがあるのかもしれない。東山がこよなく愛した六条御息所という女性を、奈月もことのほか身近に感じている。
 絶頂を終えた僕は、奈月を後ろから抱きながら、そんなことを考えた。散り散りに砕け散った単色の世界は、すでに僕の前から消え去り、目の前には、さっきまでの野宮の光景が、何事もなかったかのように広がっている。
 僕に抱かれたまま、奈月は空を見上げた。僕も彼女に倣って同じ方向を見ると、いつの間にか、東の空が明るくなっている。奈月はまぶしそうな目をした。
 それから彼女はそっと僕の腕から離れ、建物に近い榊の木まで歩き、黙々と服を身につけはじめた。さっき奈月が折った榊の枝が、地面に落ちている。その葉は思った以上に濃い緑をしている。空が明るくなったことによって、すべてのものに色彩が与えられてゆくようだ。

キラキラ 300

 そのうち僕はまた、自分が曖昧になっていくのを感じだした。僕の一部が奈月の中に入り込んでいき、反対に僕の中にも奈月が入り込んでくるようだった。自分と奈月の境界線がどんどん消滅し、やがては僕たちは完全に一体化したような実感があった。おそらく、奈月も同じようなことを感じているはずだ。
 そんな奈月は声にならない声を上げている。それは、僕に向けられているというものではなく、かと言って奈月の独り言というふうでもなかった。無意識のうちに声が出ているという感じでもない。
 その声は奈月のものであって、同時に僕のものでもあった。あるいは、僕と奈月以外の誰かの声のようにも聞こえた。いずれにせよ、その声には何らかの意味があるのは確かだった。それはもしかしたら、言葉を超えた意味なのかもしれなかった。その、これまで聞いたことのない声は何かの暗号となり、僕に安らぎをもたらし、より濃厚な快楽の世界へと誘ってくれた。目の前に迫った到達点に向けて、僕は思うがままに身体を動かした。奈月も呼応するかのようにますます声を大きくする。美しく、艶めかしい声がこの野宮の森の隅々にまで響き渡っている。もはや羞恥心などない。神は許してくれている。なぜなら、ここは「犯される場所」であり、そのことによって神は、より完全性を身にまとうことができるからだ。ここにあるものすべてが救われるのだ。
 いよいよ僕は、最後の坂を滑り落ちる段階にさしかかった。奈月もひときわ艶やかな声を上げはじめた。その声を耳にしながら、あぁ、いってしまう、と思った途端、目の前が急に真っ白になった。いや、それは灰色かもしれなかった。僕はその単色の世界に一瞬間包み込まれた。そうしてすべてを支配された。それを自覚した時、突然、脳しんとうに似た大きな衝撃が走り、僕の中にあるものすべてが、まるで海底爆発が起こったかのような不気味な音を伴って、弾け散った。
 僕を支配していた色のかけらが散ってなくなるまでに、しばらく時間がかかった。僕はなぜか、光源氏を襲った須磨での暴風雨を思い出した。

キラキラ 299

 僕はたまらなくなって、彼女の乳房を後ろから両手で包み込んだ。見た目よりもずっと大きくてやわらかい乳房だった。その途端、たちまち心が落ち着いていくのが実感できた。
 汗で濡れて冷たくなっている彼女の乳房をぬくもりで満たすつもりで、僕は心を込めて包み込んだ。いつしか僕の性器も固くなっている。今まで饒舌だった奈月も、何も言わずに僕の行為を受け入れている。時折吹く風が榊の枝を揺らす音さえも耳に入ってくる。
「ほんとうに、大丈夫なんだね?」
 僕はそう念を押した。奈月は、力強く首を縦に振った。不思議なくらいに説得力のある反応だった。奈月と僕の間には子供は産まれない、私たちはそういう関係ではない、というさっきの奈月の言葉が、焼き印のように、正式に耳の奥に刻まれた気がした。だからこそ今という時間を永遠に刻みつけておきたいのだ、と。
 僕の方も、もし、子供が産まれてしまったとしても、その時は自分がどうにかしようという覚悟さえわき上がってきた。僕たち2人で力を合わせればなんとでもなる。だが、そう腹をくくった途端に、僕の心にも、僕たちの間には子供は産まれないのだということがはっきりと浮かび上がった気がした。
 それで僕は、無心で奈月の中に深く入り込んだ。その時、再び猿の性交のシーンが頭の中にちらつき、奈月と快楽をともにしているという充足感だけが弾け散った。同時に、これまで築き上げてきた僕と奈月との関係も弾け飛んでいくように思えた。だが、もう細かいことは考えない。ただひたすらに、奈月のことだけを考えることにする。今という瞬間は、もう2度と戻ってはこない。そんな当たり前の事実が、やけに哀しく感じられ、その反動としてますます強く彼女の中に入り込んでいった。
 射精の予兆はまもなくやってきた。奈月の方もそろそろ限界が近いようだった。僕たちは何から何まで息が合っていた。

キラキラ 298

「大学生の頃から、先輩と、こうなりたかった」と奈月は、僕の知っている奈月らしい口調でこう言った。それなのに、僕には何ひとつ、気の利いた言葉が返せなかった。
「先輩には絶対に分かってもらえないだろうけど、1日も忘れたことはなかったです。電話もメールもしなかったし、手紙も書かなかったですけど、先輩のことを毎日思ってました。そうして、いつかはこうなりたいって、憧れてました」と奈月は続けた。彼女の言葉は、僕の心を強く揺さぶった。心に突風が吹き込んできたかのようだ。
「もちろん、こうなっちゃいけないとも思ったんですよ。先輩は私にとっては、すごく大切な人ですから。先輩とはこれまでのままの関係でいた方がいいという考えもあったんです。でも、先輩を思う気持ちは止められなかった。先輩は、これまでで一番好きな男の人だし、これからも、これ以上好きになる人は絶対に出てこないと思っています。だから、どうしても諦められなかったです」
 僕は奈月の腰に手を遣った。そこは汗で濡れている。僕の汗か奈月のものか、判別のつかない汗だ。
「だから、私だけ佐賀に帰ることは、やっぱりできなかった。それがベストだったかもしれないけど、私にはできなかったです。心ではだめだと思えば思うほど、かえって身体は反対の方向に動いていくんです」と奈月は声を小さくしてそう言った後、「思い通りにならないようで、じつは思い通りになっているのが人生なんですね」と自嘲気味に笑った。
「だから先輩、これが最初で最後だと思って、私を抱いてください」
 奈月はそう結論づけるように言った。
「これが最後だとは限らないよ」と僕は返したが、奈月は何の反応もしなかった。心の中の突風は弱まり、冷たくゆるい風に変わった。これからも奈月とは会える、と心の中で叫んでみたが、そう思えば思うほど奈月は遠ざってゆくようで、どうしようもないほどにやるせない気持ちになってきた。

キラキラ 297

 そんな僕の心の声が聞こえているかのように、奈月は顔を半分こちらに向けたまま言った。
「ホテルを出る前まで、私もずっと悩んでました。楽しかった昨日の旅行でやめとこうと思ったんです。一生忘れられない想い出になるのは間違いないです。つらかった大学時代の思いがすべて消えてなくなるくらいの時間を過ごすことができました。だから、先輩が寝ている間に佐賀に帰っても、私は十分だったんです」
 僕は腰の動きを止めた。だが奈月は、今度は懇願してこない。僕の性器はまだ十分に固く、奈月のぬくもりがひしひしと伝わってくる。
「あのまま佐賀に帰ってたら、きっと、それはそれで、ハッピーエンドだったんでしょう。先輩は怒っちゃうかもしれませんが、それでも、トータルで考えたら、誰も傷つかなかったはずです。だけど、それは、できなかった」
 奈月はそう言いながら、自分の性器を僕に押しつけるように何度かゆっくりと腰を動かした。そうして、子猫の鳴くようなかすかな声を時折上げた。
「もし先輩を置いて、私1人だけ佐賀に帰ったとしたら、大きな心残りを心のど真ん中に空けたまま生きていかなきゃならない。たぶん、まともな結婚生活なんて送られないかもしれないなって、心のどこかで思ったんです。ホテルの洗面台で身支度を調えながら、これからの苦しみが異様にリアルに想像できました。そしたら、いきなり先輩が起きてきて、洗面台の鏡の中に現れたんです。あの時私は、ああ、やっぱりなって、正直安心しました」
 奈月の話を聞いているうちに、再び冷静さが体内に入ってきた。どうすればいいのかまた分からなくなる。いろんな魂が入れ替わり立ち替わり入ってくる、さっきの奈月と同じようなことが、僕にも起こっているのかもしれない。

キラキラ 296

 奈月の訴えを聞き、僕は動きを緩めざるをえなかった。すると奈月は、「やめないでください」と別の訴えをしてきた。
「いってしまいそうなんだ」と僕は、とにかく今の状況を伝えた。
「だから離さないで。そのまま、いってください」と奈月は声を震わせた。
「何を言ってるんだ?」と僕は聞いた。知らないうちに汗が噴き出し、奈月の背中の上に滴り落ちている。彼女は首を少しだけ僕の方に向けて、「いいんです、中でいってほしいんです。そのために私はここへ来たんですから」と答えた。
「子供ができてしまう」と僕は、思いのままを返した。だが奈月は、意外な答えを口にした。
「大丈夫です。子供はできませんから」
 下半身の力を完全に抜くと、「お願いだから、やめないでください」と奈月はまた懇願してきた。そうして、再度「大丈夫ですから」と念を押した。
「私たちの間には、子供は産まれません。私たちの関係は、そんなものじゃないです」
「言うことがよくわからない」
「そういうふうに決まってるんです。私たちは、今だけの関係なんです。でも、だからこそ、私は、絶対に忘れたくないんです。永遠に忘れたくないんです。だから、私の中でいってください。私も一緒にいきますから」
 奈月はそんなことを言ってきた。
 快楽に満たされている僕ではあるが、いろいろと細かいことを考えてしまったがゆえに、さっきよりも冷静になっている。この期に及んで、改めて、これまでの奈月との関係が崩壊してしまうのを怖れた。だが、現在、彼女の中に入っていることを実感した途端、すべてが手遅れだという事実がずっしりとのしかかってきた。 

鉄は熱いうちに打て!

 去年までは、人と関わる仕事をしていた私ですが、今年から大きなイベントを作り上げていく仕事に変わり、パソコンに向かって「文書」を作ることが急激に増えました。
 で、この「文書」がなかなか手強いのです。季節の挨拶やら、「平素より大会の開催について御理解と御協力をいただいていることに対し、感謝申し上げます」的な独特の言い回しがあって、ビギナーの私には厳しい戦いが強いられているところでございます。
 さて、そんな私たちの室では、文書でも企画案でも、みんなでアイデアを出し合って完成に近づけてゆくことを「叩く」と言っています。たとえば私は今、東北の復興関係のイベントを作っているのですが、まずは私が案を出し、その後で直属の上司がチェックをし、さらにそれを班で見直し、最終的に課長や部長が決裁を下すという流れになります。つまり多くの人に叩かれるわけです。
 高校、大学とラグビーをしていた私にとって「叩く」という言葉は決して心地よい響きをもたらしませんでした。でも、今の仕事をするようになって、そのイメージが少しずつ変わりつつあります。
 よくよく考えると、「叩く」というのは、いい意味で使われたりもします。凝った肩を叩いたり、鉄だって鍛冶屋さんが叩くことによって強くなります。あるいは、医者だって、聴診器を当てて、身体のいろんな部分を軽く叩いて様子をうかがったりもします。

 20代の頃、私はいろんなところからバッシングを受けることが度重なり、自尊心を損ないかけたことがありました。「叩きのめされた」わけです。でも、今思えば、あの時の経験は、決して忘れることができません。むしろ、楽に運んだことの方が記憶から消えていることが多いです。
 そうして、この年齢になると、叩かれることにある種の快感さえ抱くようになりました。するりと喉を通るうどんのように、しっかりと叩かれて、コシとつやのあるような「文書」を作りたいと、密かに目論んでいます。もちろん、小説だって同じことです、よね! 

キラキラ 295

 奈月は僕の性器をまるでもてあそぶかのように、思いのままに動いた。そのたびに、さっきよりもさらに濃密な快楽が僕のすべてを貫き、それと同時に、あらゆる方向から打ち上げられる花火のように、危ない、という声が響いた。だが、もはや、僕には選択肢など残されていない。ひとたび奈月が自分の中に入ってしまった以上、後は同じだった。  
 気がつけば、僕は金縛りから解き放たれ、奈月と呼応しながら快楽を追求していた。そのうちまた、快楽以外の観念を体内に入れることが面倒臭くなってきた。
 僕は奈月が離れてしまわないように慎重に立ち上がり、彼女の両手を杉の木立につかせて、後ろから性交した。すべてが僕以外の何かに導かれているかのようだった。これまでしたことのないくらいに滑らかに腰を動かし、しかもその間、細かいことを何一つ考えなかった。ただひたすら奈月を求め、その見返りとしての快楽に酔い痴れた。今度は奈月の方も大きな声を上げた。だがその声さえもあまり耳に入ってはこなかった。それほど、自らの快楽に夢中になってしまっていた。
 いや、それとも、僕は本能によって支配されているのかもしれなかった。その時ふと、なぜか猿の性交を思い出した。いつだったかテレビで見たことがある。彼らは誰に調教されたわけでもなく、ただ子孫を残すという目的のために性交をする。無我夢中に奈月を求める自分の姿が、どういうわけか猿と重なる。
 だがその動物的なイメージも、そのうち薄れていく。というのも、僕が今感じている快楽は、誰のものなのか区別がつかなくなってきたのだ。自分のものかもしれないし、奈月のものかもしれない、あるいは僕たちの魂に入り込んだ何者かのものかもしれない。
「私が誰であるかは大した問題じゃない」という奈月の言葉を思い出した時、次の射精が近づいてきた。
 すると奈月は、そのことに気づいているかのように、こう訴えかけてきた。
「そのまま、離さないでください」

キラキラ 294

 まもなく、僕は、あっけなく射精してしまった。
 奈月は、そんな僕を冷静に眺めている。完全に下半身の力が抜けてしまった僕は、杉の大木にもたれたまま腰を下ろす格好になった。身体は火照りきっている。奈月は僕の額にかかった前髪をやさしく撫で、頬に手をやった。冷たい手だった。
 それから彼女は、慈悲深い視線で僕を見下ろしながら、ゆっくりと立ち上がった。いったいどっちが年上なのか分からなくなるような心持ちがした。しかもその姿からは幸恵が想像された。
 幸恵と過ごしたあの時間は、たしかに間違いだったかもしれない。だが、その「間違い」というのは、何を基準にしているというのだろう? 物事の評価は、基準によって変わるものだ。ある視点からすると間違いに思えることが、別の視点で捉えると間違いではなくなることはよくある。
 そう考えると、あの頃僕は、幸恵によって何度も慰められ、自尊心を取り戻すこともできた。幸恵との時間は今でもたしかに輝いている。幸恵と密会することを別の面から捉えると、自尊心を失ったことにもなる。それでも、今となっては、彼女との出会いは僕のこの人生においては避けては通れなかったと思っている。宿世だったのだ。そうして、今、総合的に考えた時、僕は幸恵と出会い、彼女と愛し合ってよかったと感じている。
 だとすれば、今の状況も、後から考えればよかったと思うことができようか・・・
 それにしても、下半身に力が入らなくなった僕は、金縛りにでもかかっているかのようだ。しかも幸恵を彷彿とさせる奈月に見下ろされていることによって、不思議な感覚の中に墜ちている。つまり、今がいつなのか、うまくつかめないでいる。 
 すると奈月は僕に背中を向けて、ゆっくりとしゃがみ込んだ。そうして、まだ十分に固い僕の性器を、いたわしげに撫でた後で、自分の中に挿入した。その間、僕は、まるで映画のシーンでも傍観しているかのように、何の主体性も持たなかった。

キラキラ 293

「なんだか、哀しくなってくるな」と僕は、今の心の中を言葉にした。学生時代の奈月なら、間違いなく、哀しげな僕に同情の声を掛けてくれたはずだ。だが、今の彼女ときたら、すべてを悟ったような顔をして、ただこっちを見ているだけだ。まるで、僕の眉間に開いた穴から、野宮神社の建物を眺めているかのようにさえ見える。
 昨日の夕方、バスで嵐山を通る時、奈月は「過去を受け入れたり諦めたりすることができないから苦しい」と述懐していた。だが、今そう感じているのは、僕の方だ。奈月の言うように、これから起こることは宿世で定められているのだと諦めて、過去に積み上げてきた奈月との関係を壊してしまうことが僕にはできない。
 それで僕は「君が奈月だとは思えない」とつぶやいた。
 すると彼女は「私が誰なのかというのは、大した問題じゃないです」と、さらに予期せぬ返答をしてきた。それから、僕に何かを考えさせる間すら与えずに、キスをしてきた。僕の頭の中には、今の奈月の言葉が居続けた。
「私が誰であるかは大した問題じゃない」
 キスをしながら、頭の中で絡み合った糸が再びもつれだしたのを感じていると、奈月はやおらしゃがみ込み、今度は僕の性器を口に包み込んだ。それは、ほんとうにすばらしい愛撫だった。さっきとは、また違った意味合いが込められているかのようだった。奈月が本気になるにつれ、僕の脳は瞬く間に溶け始め、すべてが快楽に満たされた。この世に天国があるとすれば、まさに今がそうなのだと納得させられるほどの、完璧な快楽だった。 
 僕は無意識のうちに奈月の頭に両手をあてがい、空に向かって声を上げた。そのうちその声は、危ない、と言っているようにも聞き取れた。だからといって僕にはどうすることもできない。快楽に、ただ心身をうずめることしかできない。

キラキラ 292

 そう言われても、僕には最後の最後の所で踏みとどまらせるものがあった。奈月と性交するということは、正真正銘、2度とは前の間柄には戻れなくなることを意味している。つまりそれは、僕の青春を失うことであり、同時に、信頼すべき後輩を、ともすればこれからの人生で頼りになるであろう大切な後輩を失うことでもある。
 奈月は「だめですか?」と再度促してきたが、僕には何も答えられない。
 すると、彼女はいくぶんか声のトーンを下げ、「いくら先輩がだめだと言ったところで、私たちがここで結ばれることは、もう決まっているんです」と言った。それから「もう、すべてが手遅れなんですから」と改めて付け足した。
「抗うことのできる運命もあると思うよ」と僕が言うと、奈月は、間を置いた後で、「その段階は、すでに過ぎてるんです」と答えた。どこか残念そうだった。僕は奈月の言う意味を理解しようとした。
「運命っていうのは、文字通り、運です。だから、まだ選択肢がある。そして、選択をした先に待っているのが宿命です。昨日から言っている『宿世』の世界。つまり、運命は変えることはできても、宿命は変えることはできない。私たちは、『宿世』を受け入れるところにいるのです」
「ごめん、よくわからない。選択肢があるなら、宿命だって自らの意志で選ぶことができるはずだ」
 僕がそう言うと、奈月はこう返してきた。
「どんな選択肢を選ぼうと、それは途中のプロセスが変わるだけで、最終的に行き着く場所は同じなんです。光源氏も、様々な体験をし、愛も栄光もつかんだけど、最後には自然に凋落していくんです」
「ということは、人生とは、最初から決まっているというわけだな」と思わず強く言うと、奈月はそれについては直接答えずに、「少なくとも、私たちは、運命の段階はすでに通り過ぎてます。だから私は、あなたをこうして求めてるんです」とあくまで話を元に戻した。

キラキラ 291

 それで僕は、「何が遅いの?」とそのままを聞き返した。
 奈月は「すべてが手遅れです。もう、すべてが境界線を越えて、次に進んでしまいました」と応えた。やはり、哀しげだった。
「奈月が何を言いたいのか完全には分からないけど、すべてが手遅れということはないだろう」と僕は語気を強めた。だが奈月は何も応えぬまま、ひたすら僕の胸に顔をうずめるだけだ。そのぬくもりだけは、僕の肌に直接伝わってくる。そのうち、人知れず彼女の抱え込んできた哀しみも一緒になって伝わってくるように感じられてきた。奈月はそれを丸ごと僕に届けようとしているのではないかと想像させるほど、彼女は肌をすり寄せるように密着してきた。
 どれくらい時間が経っただろう。奈月は顔を僕の胸からふと離し、「してください」と言ってきた。
 その瞬間、また、危ない、という言葉が森のどこかで聞こえた。すべてを細かく考えることが面倒臭くなっていた僕だが、しばらく奈月と抱き合っているうちに心が整理されたのかもしれないし、あるいは彼女を受け容れることはそんなに細かい問題なんかではないと本能的に判断したのかもしれない。僕はその声にびくりと反応した。
「でも、さっき、奈月は、これ以上はやめておこうって言ったよね?」と問いただすと、彼女は、うつむいたまま、「もういいんです」と小さく答えた。
「あれからいろんなことが先に進んだんです。私はもう、あの時の私ではない。今言った通りです。すべてが手遅れなんです」 
 僕には彼女の言う意味が、全く理解できなかった。
「ここで私を抱いてください。今という時間を刻みつけておきたいんです」と奈月は、さっき六条御息所に向けて言ったようなことを、彼女自身に対して言った。

キラキラ 290

 うまく表現することはできないが、この場所に守られている安心感があった。僕と奈月は、この野宮において、すべて許されている。この境内のどこからか、そんな声さえ聞こえるようだ。
 それはたしかに危ない感覚かもしれなかった。だが、もはや、今の行為が危なかろうが危なくなかろうが、さしたる問題ではなかった。僕はどこかで境界を越えていた。昨日、奈月と2人で明石海峡大橋を越えた後と同じような感覚だ。今の僕にできることは、目の前にいる女性と、心ゆくまでのコミュニケーションを交わすことだけだ。
 僕の動きに、奈月は憚ることなく声を上げた。杉の木立の高いところにいる鳥たちでさえ、遠慮して鳴くのをやめているかのようだ。そうして奈月は、もはやどうすることもできないくらいに濡れている。僕はそんな彼女を見上げながら、六条御息所が伊勢で詠んだ和歌を思い出した。

うきめ刈る 伊勢をの海人(あま)を 思ひやれ もしほたるてふ 須磨の浦にて

 僕の奉仕がひとおおり終わった後、僕たちはしばらくの間抱き合った。さっきまで冬のように冷たく感じられた風が、一転して今は温かくなっている。もちろん、そんなことはどうでもよかった。今の僕には奈月しか見えない。僕の外側にあるもの全てが面倒臭いものと化している。
「ずっと待ってたんですよ」と奈月は泣きながら言った。
「申し訳なかった」と僕は返した。そう言った後で、その言葉は自分の口から出てきたものではないような違和感にとらわれた。
 すると奈月は「でも、もう遅いです」と力なくささやいた。何が遅いのか、よく分かるように思えたが、よく考えてみると、じつは何も分からなかった。

この小さな世界

 ようやく体調が戻りかけてきたので、今朝は新聞を買いにコンビニまで行くことにしました。歩いて行ける距離なのですが、雨がぱらついていたので、車を走らせました。
 今の愛車はスズキのMRワゴン。軽自動車です。この車で、1ヶ月6,000㎞も走ったわけです。これまで、フォルクスワーゲン・ゴルフを3代乗り継いできた私にとって、初の日本車で初の軽自動車です。
 ところが、この車が、意外にもよくやってくれるのです。さすがに加速や坂道、それに高速の安定性はゴルフに劣りますが、デザイン性の高い室内や、高音質のオーディオ、それにゴルフの2倍近くは走ってくれる燃費など、魅力にあふれています。
「大は小を兼ねる」とはよく言いますが、その逆に、小さいものにできて大きいものにできないことって、けっこうあるような気もします。

 これまで私たちは大きな世界に憧れてきたように思います。宇宙船にしてもパソコンの容量にしても、経済のシステムにしても、どんどん大きくなっていくようです。そうして、やがては宇宙の謎を解明し、人類の生活範囲を広げてゆくような方向に、科学は向かっていると言えるでしょう。
 ただ、小さな世界の奥深さにも人々は気づいてきたのかもしれません。医学の世界では様々な細胞が研究されていますし、端末機もどんどん小型化してきています。
 私は、趣味で家庭菜園をしていますが、ほとんど毎朝土を触りながら、この中にいるであろう微生物たちの存在を不思議に思います。彼らがいないと野菜は育たないし、ひょっとして私たち人間も存在しないかもしれない。そう考えると、小さくて普段は気づかないようなものに、私は助けられているような気もしてきました。たとえば、誰かのやさしさとか。
 コンビニで新聞を買った後、愛車のハンドルを握りながら、小さな世界に目を向けられるゆとりをもちたいものだと、つくづく思いました。

キラキラ 289

 すっかり固くなった僕の性器が奈月の口に吸い込まれた瞬間、次なる感覚が沸き上がってきた。それは「哀しさ」という言葉に一番近いような気がした。いったい何が哀しいのだろうと思うが、いろんな哀しさが複雑に絡み合ってできあがっている感情なので、その根源にあるものはすぐには特定できない。それで、またもや僕は面倒臭くなってしまった。
 ただ1つ、目の前の奈月の姿が哀しげだということは間違いなかった。彼女は大地にしゃがみ込み、僕のズボンを下ろし、愛撫している。その姿を見下ろしていると、罪悪感さえ感じてしまう。だが僕はすぐにはそれをやめさせようとはしない。なぜなら、哀しげな奈月に慰められる僕もまた、哀しい存在に違いなかったからだ。互いの哀しさは相殺され、昇華されていた。
 だからか、彼女の奉仕は心の底から癒しを与えてくれた。油断すればいつでも射精に導かれそうなほどだった。さっき心の奥で崩れ落ちてしまったものがいつのまにか全く別の形で整理し直されたようだ。
 すると奈月は口の動きを止めて、しゃがんだまま僕を見上げ、「私もなめてください」とささやきかけてきた。もちろんそれは僕の望むところでもあった。だが、一方でさっきのホテルでの記憶がある。あの時奈月は、忘れられなくなるからと一線を越えさせようとはしなかったのだ。
 それで僕は「いいの?」と念を押した。奈月はすんなりと「なめてください」と言ってきた。その姿は、やはり、哀しげだった。
 僕は奈月を連れて森の中まで歩き、杉の大木に彼女をもたれさせて、今度は自分がしゃがみこんだ。奈月の性器はすでに濡れに濡れていた。あまりに濡れていたので、何がどうなっているのか一瞬わからないほどだった。そこに舌を挿入した時、奈月は信じられないくらいに大きな声を出した。人が来たらどうしようかと思いもしたが、ここには誰も来ないという妙な確信もあった。

キラキラ 288

 その瞬間、またも、危ない、と声が聞こえ、その直後に、何かが音を立てて崩れ落ちる音がした。これまで僕が慎重に、1つずつ積み上げてきたものが、どうやら崩れてしまったらしい。でも僕は、その残骸に拘泥することもなかった。すべてが仕方のないことだった。
 すると奈月は、背を伸ばして僕にキスをしてきた。僕は、彼女の要求に応じながら、ホテルでのキスを思い出した。あの時僕はある種の寂しさを感じた。これまで妹のようだった奈月との関係が壊れてゆくのが寂しかったのだ。もちろん、今もそれは感じる。現に奈月の動きは、ホテルの時よりも扇情的で、エロティックだった。もはや、兄妹の間柄と言えないところに僕たちは立っている。だが、戻ることなどできない。僕にはどうすることもできなかった。
 寂しさと、諦め。僕は物事を細かく考えることが面倒臭くなってしまっていた。もう開き直るしかなかった。それで、すべてを紛らわせるつもりで彼女の舌の上に自分の舌を何度も這わせた。
 僕の勢いに、奈月はいったん唇を離し、「せめて今だけ、主役でいさせてほしい」と吐息のような声を出して懇願した。
「大丈夫だ。奈月はいつでも主役だよ」と僕は応えたが、彼女はうれしい顔ひとつ見せぬまま、再び背伸びをして僕の唇を激しく求めた。
 気がつけば、僕たちは互いの裸を露わにしていた。今野宮にいるということは頭では理解していたつもりだ。だが、それは「言葉」の上の問題であって、本当のところ、僕たちはどこにいるのか分からなかった。いや、どこでもよかった。
 奈月の乳房は、少し汗ばんでいる。彼女の背中に手を回し、ゴムのように固くなった乳首を唇に挟んだ時、彼女は背筋をのけぞらせた。必死に声を押し殺そうとしていたようだが、そのうち彼女の方も開き直ってしまったのか、憚ることなく声を出し始めた。その声は、やはり誰のものか分からなかった。そのうち、声は、境内の森の空気を揺らしはじめた。

キラキラ 287

 すると奈月は、今まで胸に抱えていた榊の小枝をひらりと大地に落とし、その後で、低く震えるような声でこうつぶやいた。

もの思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける

 僕の腰の辺りからゾクゾクと駆け上がった不吉な冷たさが、ゆっくりと首筋に到達する前に、奈月はいきなり僕の胸の中に飛び込んできた。これまでで一番大きな声で、危ない、と聞こえたが、僕にはそれを聞き流すことしかできない。
「『宿世』とは残酷なものです。こんなに人を好きになっても、どうしても結ばれない恋があるんですから」と奈月は僕の胸元に顔を押しあてて、冷静に、それでも十分に哀感を込めて言った。
「私はずっと物語の主役でいたかった。いいえ、主役でなくてもいい、せめて2番目・3番目の役を与えてほしかった。でも、それすらも許されなかったんです」
「それって、『源氏物語』の話だよな」と僕は、奈月の髪に頬をすり寄せながら聞いた。
 すると、彼女は見当はずれのことを話し出した。
「あなたが須磨・明石にお流れになったのも、『宿世』だったんでしょう。私と似たところのある明石の君と出会い、そのことによって、彼女は物語の2番目に駆け上がっていったのです。そうして、私は、彼女と引き替えに、物語から退出させられ、人々からも忘れられていった。その現実を受け容れるのに、どれほどつらかったか。きっと、私の叶わぬ思いは、そのうち諦めに変わり、やがては葬り去られてゆくのでしょう。昨日、あなたに言った通りです。ただ一さいは、過ぎて行くだけなのです」 

キラキラ 286

 その時、体に触る風が冬のように冷たく感じられた。だが、それは決して不思議な感覚ではなかった。僕の身体が熱を帯びているのかもしれないし、真夏の風が今だけ本当に冷たいのかもしれない。いずれにせよ、そんなことはどうでもよい。風が冷たいという事実がここにあるだけだ。
「六条御息所はもう一度源氏に抱かれたかった。源氏のぬくもりが身体を貫く時の恍惚が離れなかったのです。伊勢に赴いても、彼女の身体は濡れていました。それでも、源氏は会いに来てくれない。くれるはずはない。御息所も源氏もすでに都を離れていました。しかも、お互いに、自らの意思で。だからどうすることもできなかった。それで、御息所は手紙に思いを刻むしかなかったのです。そうでもしなければ身がもたなかった。また魂が『あくがる』ことになれば、さらなる『人笑へ』を招いてしまう」
 奈月は榊を両手に持ったまま、声を震わせながらも、しっかりとした口調で語った。その姿を目の当たりにすると、この野宮で禊を行った女性とはこんな雰囲気だったのだという想像がますます膨らんだ。
「六条御息所は、『伊勢をの海人』とか『もしほたるてふ』とか、須磨という土地に染みついた言葉を用いながら、自分の体が濡れていることを暗に伝えたんです。この野宮での交わりを思い出しながら、自分で自分を慰め続けるつらさを打ち明けたのです」
 僕はもう一度、六条御息所の和歌を思い浮かべた。藻塩が垂れるという須磨から、うきめを刈る伊勢の海人のつらさを思いやってくださいと彼女は詠んだのだ。奈月の話からすると、海人とは尼でもあり、つまり心の中の一番深いところにいる光源氏を思いながら、その人に抱かれたいと性器を濡らし続ける六条御息所だということになる。
 もちろん、これまで古典文学をまじめに読み込んだことのない僕には、奈月の読み方が的を射ているかどうかの判別はつかない。だが、昨日見た須磨の海と磯の香り、それから塩屋の駅での風情を思い起こすと、それらは不思議と六条御息所が人知れず抱え込んでいた苦悩と結びつくように思えた。

キラキラ 285

 奈月は僕のすぐ目の前にいる。そうして、胸元に榊の枝を大事に持っている。彼女こそ、神に仕える斎宮という女性を想像させる。白を基調とした花柄のワンピースも、暗闇の中には、装束にさえ見える。
「六条御息所の心にあったのは、光源氏との思い出であり、彼の身体でした。特に、最後にこの野宮で抱き合った時の記憶は鮮明に刻み込まれていました。境内の一角にあった彼女の寝所で裸になった時の光景。月明かりに浮かび上がる光源氏の身体に見下ろされながら、御息所は恍惚感に身を悶えました。そうして、これまでにないくらいに濡れました。必死に声を押し殺そうともしましたが、おそらく、禊を行っている他の女性たちにもばれていたでしょう。光源氏に憧れ、彼を待ち続けた1年と半年の思いがすべて昇華されるかのような夜を彼女は過ごしたのです」と奈月は言った。
 潮の香りが風に運ばれて遠ざかってゆくのを感じる。それと入れ替わるかのように、奈月の存在がゆっくりと近づいてくるように思う。危ない、という声が再び聞こえる。だが僕はどうすることもできない。自分の心と体が少しずつ離れてゆくのを、あきらめの気持ちで傍観することしかできない。
「伊勢に下ってもなお、光源氏の身体は六条御息所の心から消えることはなかった。むしろ、時間とともに強く濃くなってゆくようでした。でも彼女は、完全に絶望していたわけではありません。野宮で結ばれたことにより、手紙のやり取りができるようになっていたからです。彼女は伊勢から光源氏に手紙を出した。それは、自分の苦悩を打ち明ける唯一の場でもありました。そうして彼女は、手紙の中で和歌を詠んだ。

うきめ刈る 伊勢をの海人(あま)を 思ひやれ もしほたるてふ 須磨の浦にて

 六条御息所の一番深いメッセージは、この歌の中にそれとなくつづられたのです」

キラキラ 284

 僕が自分の心の中をさまよっているところに、奈月はもう一度、和歌の後半部分を口にした。

もしほたるてふ 須磨の浦にて

「東山君が電車の中で熱く語っていたとおり、須磨は古くから塩の産地だったんです。ワカメなどの海藻を浜に上げて、それを焼いて水分を蒸発させてから塩を取り出したようです。『もしほたるてふ』っていうのは、海人の身体や彼女たちが浜辺に引き上げた海藻から『藻塩』が『垂れる』ということを表していました」と奈月は昨日話したことを丁寧におさらいした。
 明石から須磨へと向かう電車の中で、窓の外を見ながら東山が話していた光景が、磯の風情とともに鮮やかに甦ってくる。途中、塩屋という駅もあった。そこでは浮き輪を持った海水浴客や、釣り竿を持った親子が駅の薄暗い構内を歩いていた。たしかに潮の香りは今でも十分に感じられた。
「そもそも、光源氏が流離した頃から、須磨には『藻塩垂る』という言葉がセットで思い浮かべられていたんです。東山君のしおりにもずいぶんと強調して書かれてありましたよね。在原行平という歌人が詠んだ和歌が、あまりに有名だったんです。

わくらばに 問ふ人あらば 須磨の浦に 藻塩垂れつつ 侘ぶとこたえよ

 誰か人が来たら、私は今、藻塩が垂れる須磨の浦で、侘びしく暮らしていると答えてくださいっていう意味です。伊勢の六条御息所が、須磨に流れた光源氏に詠んだ和歌にも、当然この和歌が意識されていたわけです。そうして御息所は、誰でも知っていたその和歌の中に、特別な秘密を読み込んだんです」

蛍の光

 今日はあまりに暑かったので、いつも以上にビールが美味しく喉を通りました。それで、心地よい夜風にさらされながら道を歩いていると、小川のほとりの様子がいつもと違うことに気づきました。
 見ると、蛍が舞っていました。
 それにしても、自分の家の近くで蛍が見られるなんて、驚きです。ほんの10匹程度といったところでしたが、思わず足を止めて、暗闇に舞う光の粒々に見とれてしまいました。水を張った田んぼからは蛙の鳴き声も聞こえます。そのうち蛍の光は、小さな火の玉のようにも見え始めました。光っては消えるはかない命。そんなことを想像したりもしました。

 普段は仕事のことで頭がいっぱいの毎日を送っています。朝起きてから、寝床に就くまで、仕事上の段取りとか、予算のこととか、仕事の成果とか、上司や同僚からの評価、そんなことばかりにとらわれています。
 もちろん、それは苦痛ばかりではないです。
 本物の苦痛とは、必死に取り組むべきものが何も見あたらない時に直面するものだということを、私は経験しているつもりです。
 それに、お金やテクノロジーも大切なものだということにも気づいています。自分の好きなものを手に入れたり、最新の科学技術の恩恵を受けて生活することは、たしかに幸福感につながっています。

 でも、暗闇の中で私を立ち止まらせたのは、そういう幸福感とは少し違う魅力でした。澄んだ空気、きれいな水、大地の匂い。そのようなものに囲まれているという実感こそ、人間としての、本物の幸福感なのかもしれないなと思いつつ、川沿いの小道を歩いて帰途につきました。
作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
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