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鎌倉物語 18

 その日は午前中の新幹線で帰った。出国を控えた美咲は、いつまでも京都にいるわけにはいかなかった。
 たしかに、京都を出た彼女は、完全に未来だけを見ていた。もはや、やり残したことなどなかった。 
 新幹線の中で僕はこれから旅立ってゆく美咲の横顔をそれとなく眺めた。少なくともすでに彼女は僕のものではない。だったらなぜ今僕たちは二人でいるのか、その理由がどうしても呑み込めなかった。
 すべてが形而上的な旅だった。

 美咲が旅立って半年もしないうちにジャズハウスは閉鎖し、五十年もの歴史に幕が下ろされた。建物はただちにショベルカーで叩き潰されて瓦礫の山と化し、跡地にはセブンイレブンが建った。あっという間の出来事だった。
 店がなくなった後にママから葉書が届いた。
「山下君にはほんとうにお世話になりました。正直ほっとしてるのよ。これからはホームヘルパーの資格でも取ろうかなって思ってます。その前に自分が介護されないようにしなきゃね」
 沖縄のシーサーが描かれた大きめの切手が貼ってある葉書には、味わい深い太い筆跡が連なっていた。
 僕も簡単な返事を書いた。それをポストに投函し終わった時、自分は完全なる独りぼっちになっていることに気づいた。
 何より苦しかったのは、孤独に陥ると同時に可南子への罪悪感が沸き上がってきたことだった。取り返しのつかないことをしてしまったと、その時になってようやく悟った。
 これは彼女からの報復だと解釈した。しかしそのうち、単なるエゴイズムの敗北だったことに気づいた。
 そして、しまいには、可南子は僕と別れて正解だったのだという結論に達した。その考えは、かえって僕の心を落ち着けた。

 その後、夜間警備のアルバイト以外はアパートの部屋にひきこもっての生活を繰り返した。
 決して楽しくはなかったが、かといって悪い暮らしでもなかった。
 だが、そんな生活も二年は続かなかった。冬眠を終える虫のように、いや、刑期を終えた罪人のように、そろそろ僕にも光が必要だった。
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鎌倉物語 17

 京都へは大学四年の秋に可南子と二人で訪ねたことがあった。可南子は秋の京都が好きだった。
 僕たちは嵐山で紅葉を見、それから二条城の辺りをあてもなく歩いた。あの時に撮った何枚かの写真は今も本棚の引き出しにしまってある。
 そんな想い出があったがために、京都駅に降り立った時、隣に美咲がいることにどうも違和感を覚えずにはいられなかった。
 あの日の可南子に比べると美咲には力強さがあった。彼女は世界に羽ばたくかもしれないジャズプレイヤーなのだ。
 親友同士だった可南子とは共通点があるようで、じつはまるで異なった人格だったとその時気づいた。
 とはいえ、美咲との旅の途中で、可南子と訪ねた京都を何度も思い出すことになった。それは、季節が同じ秋だったからかもしれない。とにかく目に入ってくる風景すべてがあの日の延長線上にあった・・・

 僕と美咲は駅前のターミナルからバスに乗り、いったんホテルに立ち寄った後で、清水寺に行った。それから清水の坂を下り、八坂の塔を抜け、祇園の街に出た。昼はにしんそばを食べ、八坂神社と円山公園を歩き、銀閣へと向かった。
 とにかく有名な場所を見ておきたいと美咲は繰り返した。銀閣の参道を歩きながら、そういえば可南子はそんなことは言わなかったことを想った。
 その後、龍安寺の庭を見て、金閣へと移動した。まさに京都のゴールデン・ルートともいうべき行程をたどったわけだ。
 美咲はカメラを持たなかった。その分、しっかりと心に焼き付けておきたいのだと説明したが、僕はそうは思わなかった。未来において、写真を見ながら僕を思い出すのが嫌なのだろうと想像した。
 夜は先斗町で京料理をつまみ、その後ビストロでワインを飲んでから、ハイアット・リージェンシー京都に戻った。
 部屋の窓に掛けられたシェードを上げると、眼下には京都国立博物館がひっそりと佇んでいた。セピア色にライトアップされた重厚な建造物は、何かの遺跡を連想させた。美咲は珍しくしんみりとした顔つきでそれを眺めていた。
 僕たちは軽くビールを飲み、シャワーを浴びた後で最後のセックスをした。

 あくる日の朝食はレストランでのビュッフェだった。大理石調の広々としたフロアには、大きな窓から差し込む朝日の光があふれていた。
「すてきだ」
 美咲はテーブルにつくと同時にそう漏らした。彼女の言うとおり、いかにも絵画的な風景だった。
 窓の外には日本庭園がしつらえられてあり、風に吹かれる一群の青竹が光を揺らし、テーブルの上に光と影を交互に作りだした。
 僕たちはその光の揺らめきの中で朝食をとった。周りの席では外国人を含む多くの宿泊客がにぎやかに食事をとっていたが、僕たちは淡々と、それぞれの思考に沈みながら料理を口に運んだ。

鎌倉物語 16

 美咲がジャズハウス専属のプレイヤーになって二年経った時、彼女はアメリカに出たいと言いはじめた。
「ママさんにはほんとに悪いとは思うんだけどね、今のうちに、もっと広い世界でチャレンジしたいんだ」
 美咲は僕の部屋でそう説明した。
 彼女の言い分はよく理解できた。演奏のレベルはすでに一定のレベルを越えていたし、特定のファンや音楽関係者も出入りするようになっていた。今の美咲なら夢を叶えるチャンスが待っているかもしれないと心から思えた。
 ただ、彼女が去った後の不安もあった。すでに司法試験を諦めていた僕は、美咲のいない生活というものがどうしてもイメージできなかった。
「いろいろと調べてみてね、ハワイに日系の専門学校があるのを知ったんだ。そこで一年間英語を勉強してテストを受けるの。で、成績に応じて自分の行きたい大学を選ぶことができるシステムになってて、その中にバークリー音楽大学があるのよ」
「バークリー?」
「名門中の名門だよ。ジャズ科があるの。大西順子とか上原ひろみもそこを出てる」
 美咲の瞳からは熱気が放射されていた。彼女を止めることなど、もはや不可能だった。
「いつかはニューヨークでデビューしたいんだ。ヴィレッジ・ヴァンガードのステージに立ってみたいの。ビル・エヴァンスと同じステージにね」 

 その年の秋に、美咲はアメリカに向けて飛び立つことになった。初めて話を持ち出してから、わずか三ヶ月後のことだった。
 表立ったラストライブは行わなかった。これが最後の演奏だということを知っていたのは、僕とママだけだった。
 僕は座り慣れた後方の席でウイスキーを飲みながら他の客に紛れて美咲のピアノを漠然と聴いた。リクエストしておいたキャロル・キングの『君の友達』も弾いてくれた。
 現実味はまるでなかったが、それでも心がチクチクと痛んだ。これまで聴いてきたどの演奏よりも甘美で、ほろ苦かった。
 店を閉めた後、三人でお別れ会を開いた。ビールとウイスキーとフライドポテト、それにサラダだけの簡素な会だった。これじゃあまりにもわびしいと、ママは店を出て近所のステーキハウスに行き、肉を焼いてもらってきた。それから冷蔵庫に一本だけ残っていたワインで乾杯し直した。
 ママは最後まで陽気だった。この店から世界に羽ばたくアーティストが出るのは光栄だというようなことを始終口にしていた。美咲は不自然なまでに饒舌なママに気を遣っているようにも見えたが、やはり希望を身にまとっていた。
 その夜僕はほとんど喋らなかった。話すべき内容が見当たらなかったのだ。それと引き換えに、珍しく酒に飲まれた。どうやってアパートに帰ったのかさえ覚えていなかった。

 旅立ちの一週間前になって、美咲は突然、京都を見ておきたいと言ってきた。
「じつは私、まだ行ったことないんだ。それがどうしても心残りでね」
 髪をばっさりと切った彼女は、さらに若くなったように見えた。

遠くに工事現場の音を聞きながら・・

 4月から生活ががらりと変わりました。
 あまりの変化に、3月から5月にかけて、2回インフルエンザにかかりました。
 そして今は、遅ればせながらの5月病です! 
 適応力には自信のあった私ですが、今の環境にはまだまだ慣れません。職場やライフスタイルががらりと変わって、なにかと気を遣う毎日。やはり気疲れが1番応えますね。

 とはいえ、少しずつですが活路は拓けてきています。
 今自分がやろうとしていること、それは、新しい職場であれ、プライベートであれ、これまで何となくこなしていたことを、できるだけ丁寧に、心を込めてするということに尽きます。

 4月当初は過ぎた日々とこれから先のことばかり考えていましたが、やはり、基本は今、この瞬間。
 自分にできるのは、今という瞬間にすべてを賭けるということなのだと、ようやく思い出しました。

 今を丁寧に、心を込めて過ごすこと。
 現在の私に与えられているテーマです。そんな時間が、きっと未来のどこかにつながっていくこと、そして、このブログに参加してくださる方々とも、どのような形であれつながっていくことを願いつつ、私なりの「今」を過ごしています。

鎌倉物語 15

 長谷川泰子との出会いによって人生に光を見いだした中也は、二人で上京し、そこで小林秀雄と親交が深まる。
 小林といえば、後の文学界に評論家として大きな功績を残すことになる人物だ。その小林もまた中也の詩の支持者で、詩人としての中也に多大な示唆と勇気を与える。
 ところが、泰子は、その小林と駆け落ちしてしまう。
 薄暗い展示室には、ぼさぼさの髪の小林と、首にスカーフを巻いた泰子と、着物姿の中也の写真が三枚並んで照明に浮かび上がっていて、その下に数編の詩が紹介してあった。
 僕はしばらくそこに立ちすくんだ。すべてが奇妙であり、そしてリアルに感じられた。
 恋人と親友の裏切りを味わった中也は、いったん山口に戻り、見合いで結婚し、子供を授かる。
 我が子の笑顔に慰められながら今度こそ人生の悦びを手にしたかに見えたが、それもつかの間、長男と次男を立て続けに病気で亡くす。
 廃人同様になった彼は三十歳でこの世を去る。
 最後の展示室に掲げてあった直筆の詩の冒頭部分が、眼球の奥にしこりのように残った。

ホラホラこれが僕の骨だ

 実家の近くにありながらそれまで足を踏み入れることのなかったこの記念館を出た時、空は目に沁みるくらいに青く、蝉の鳴き声が焼き付くように響いていた。
 実家からアパートに戻った日の夜、僕は美咲と初めて一緒に寝た・・・

 ところで、僕がジャズハウスに入り浸るようになってからも、ほぼ毎日、可南子から連絡があった。彼女から電話がかかってくることがほとんどだったが、僕が電話することもあった。
 まさか可南子は僕と美咲がそんなことになっているとは思ってもみなかっただろう。なにも僕に罪悪感がなかったわけではない。ただそれ以上に可南子を傷つけたくないという思いが強かったのだ。
 もちろんそれは僕の勝手な都合だということも承知していた。だからこそ、何も行動ができなかった。
 欲望と罪悪感。まるで、倒れる寸前で支え合う二枚のドミノのような矛盾だった。
 しかし、最後まで隠し通すことはできなかった。
 ある夜、可南子はぬきうちでジャズハウスに現れた。しかしその夜は僕が店に足を運ばない数少ない日に当たっていた。
 可南子はその後で僕の部屋に入ってきて、僕の顔を見るや否や大泣きした。何がどうなっているのかまるで分からなかったが、いずれにせよ僕は命拾いしたようだった。
 その日は夜通し可南子を看病しなくてはならなかった。彼女の髪を撫でながら、身の毛がよだつのを必死にこらえた。
 そして、結局それが彼女との最後になった・・・

 恋人と親友からの裏切り――中原中也と同じ運命をたどったのは、じつは可南子だった。

鎌倉物語 14

 美咲は週の半分ほどジャズハウスで演奏していた。ソロの時もあったし、トリオの一員の時もあった。オスカー・ピーターソンやデューク・ピアゾンの曲をよく弾いていたが、僕が特に好きだったのは、キャロル・キングのカバーだった。美咲の弾く『君の友達』は、今でも心の奥に古いシミのように残っている。
 ふだんの美咲はどこか天真爛漫さが残るバイタリティあふれる女性だったが、いざピアノの前に座るとたちまち大人びたふうになり、その腕の運びはどこかエロティックにさえ映った。
 いつしか僕は受験勉強を忘れて彼女の演奏を聴くために店に足を運び、ウイスキーを飲みながら『君の友達』を口ずさむようになっていた。
「ヤマシタ君が私のピアノを聴きに来てくれるのは、ほんとに嬉しいんだ」
 ある時美咲は、実感のこもった声でそう言った。美咲に自分の存在を認めてもらうことによって、僕は自尊心を取り戻すことができた。
 そのうち美咲の評判は高まり、遠くからわざわざ彼女の演奏を聴きに来る客も増えてきた。僕は後方の高い所に設けられたイスに座るようになり、美咲との間には多くの観客を挟むようになった。
 そうやって彼女を眺める時間は幸福感に満たされた。美咲のピアノに聴き浸っていると、司法試験の競争の中に身を投じることが面倒臭く感じられるようになっていた。
 何も法曹界で活躍するということだけが人生ではない、人生における幸福とは社会的評価を得ることよりも、己の内面に根ざす絶対的な価値を追求ことではないか、美咲の奏でるメロディはそんなメッセージを僕に発してきた。

 そういえば、その年の盆休みに、久々に山口の実家に帰省することがあって、その時たまたま中原中也記念館に立ち寄った。
ようは一つの暇つぶしとしてただ足を運んでみたまでのことだったが、僕はこの詩人の生き様をはじめて知り、そして共鳴することになった。
 エントランスを抜けて、常設展示室に入るとすぐに中也の人生がパネルで紹介されていた。軍医だった父に勘当され、京都の中学に転校し、下宿生活を送る中で退廃的な作風の詩に傾倒してゆくその顔は、孤独に歪んでいた。
 その頃、長谷川泰子という女優志望の女性と出会う。パネルの中の泰子は当時風の都会の女、とでもいうべき澄ました表情で僕を見つめてきた。
 泰子は中也の詩を褒めた。中也にとっては初めての悦びだったろう、二人は同棲を始める。
 展示室に立たったまま、僕は美咲のことを強く思った。表現者にとって、自分の作品を褒められることほど幸せなことはないのだろうと。不安はたちまち希望に変わり、諦めかけた夢の後ろ姿を再び見させてくれる。
 もちろん、僕の中にも中也はいた。美咲に感謝されることで自らの存在意義を確かめることができたのだから。
 そんなことを考えながら、その先に続く展示室に足を踏み入れた。室内は、一段と深い紫の照明で薄暗くなっていた。

鎌倉物語 13

 その時ちょうど、僕たちはせせらぎに架けられた小さな橋を渡った。そして、左手に明月院へと続く道が現れた。明月院といえばガイドブックの表紙を飾っていた寺だ。
 つまり僕たちは北鎌倉駅からだいぶ歩いたことになる。明子と歩いているとついつい時間を忘れる。
 明月院入口を過ぎると歩道はぐんと狭まり、その分車の往来が近くに感じられるようになる。自動車用の標識は、このまま進むと鎌倉駅に出ることを伝えている。
 すると、歩道の脇に、味わいのある看板が飛び込んできた。古い杉板には「無窓庵」と彫られてあり、その横のイーゼルには紫陽花のイラストの入ったメニューが置かれ、ビーフシチューやスパゲッティの文字が見える。店は竹藪に囲まれた石段の上にあるようだ。
 明子は「ここだね」とささやきかけてきた。

 すでに二時を回っているにもかかわらず、店内には客の姿がある。僕たちは靴を脱いで畳の間に上がり、座卓に並べられた座布団に腰を下ろした。腰がずしっと重かった。
 隣の席には年配の夫婦がいて、ちょうどビーフシチューを食べ終わるところだった。店内に漂う香りからしても、どうやらこの店の一押しはこの料理らしかった。それで僕たちも同じものをオーダーした。僕はライスで明子はパンをとることにした。
「いかにも鎌倉らしいお店ね」
 明子は店内を見回しながら言い、冷水を口にした。
「無窓庵」という店の名前からして、店内には窓が存在しないのかと思ってみたりしたが、実際は縁側に大きな窓があって、外には風情のある竹が青空を背景に、競い合うかのように伸びている。
 おしぼりで手首を拭きながらその光景を眺めていると、現実の視界の上に過去の記憶がゆっくりとオーバーラップしてくる。
よりによってこのタイミングでこんなことを思い出すとは、偶然というものは意地悪なものだと息苦しくなる。

 その記憶とは、ハイアット・リージェンシー京都のレストランでの光景だ。あの時僕はまだ二十四歳で、目の前には美咲が座っていた。
 大きな窓は朝日がふんだんに差し込むように工夫され、窓の外には限られたスペースの中にもモダンな日本庭園がしつらえてあり、若竹が整然と並んでいた。何から何まで丁寧に計算された庭だった。 
 当時、僕には大学時代から付き合っていた可南子という女性がいて、卒業後も遠距離恋愛を続けていた。その時一緒だった美咲とは可南子の親友で、僕たちは何度かダブルデートをするほどの仲だった。
 卒業と同時に郷里に戻った可南子とは対照的に、美咲は卒業後もこれといった定職に就かず、音楽活動に励んでいた。というのも、彼女はジャズピアニストを目指していたのだ。
 一方僕はというと、その頃はまだ司法試験に挑戦する身で、卒業した後も大学に残って受験勉強をしていた。
 僕と美咲はたまたま近くに住んでいたためにちょくちょく連絡を取り合い、二人で食事をとるくらいの仲になっていた。同級生たちが大学を離れていった中、美咲との時間は、心を落ち着けてくれるものだった。

おしらせ

『静かな散歩道』に訪問してくださいまして、ありがとうございます。

さて、現在連載中の小説について、タイトルを『鎌倉物語』に変更することにしました。
この小説は、以前完結したものをリバイスしたものですが、やはりタイトルはそのままのほうがふさわしいと考えました。

なお、目次については「新・鎌倉物語」に入れてあります。

引き続き、よろしくお願いいたします。

鎌倉物語 12

 僕と明子は北鎌倉駅の自動販売機でアイスコーヒーを買い、ベンチに座って飲んだ。
「だいぶ歩いたね」と明子は小さなハンドタオルを首筋にあてがいながら言った。
「まるで別世界だったな」と僕は応え、コーヒーを喉に流し込んだ。心と体がリセットされるようだった。
 円覚寺と駅の間には道路が走っていて、そこには「鎌倉街道」という標示が立っている。僕たちは空き缶をゴミ箱に入れ、街道に沿って作られた歩道をこれといった目的もなく東に向かって歩き始めた。すると、ほんの少し進んだところにさっそく「東慶寺入口」と書かれた看板が見えた。
「この辺りは、まるで寺の博物館みたいだな」
 僕が言うと、明子は「これが北鎌倉よね」と呼応するように返した。
 東慶寺を過ぎたあたりからいろいろな店が並ぶようになる。アンティークな店が多いようだ。
「お腹空いたでしょ?」
「ぺこぺこだよ」
「どんなものが食べたい?」
 これといって思い浮かばない。軽食ではなくしっかりしたものが食べたいと返すと、明子は少し考えた後で、「じゃあ、適当に歩いてみて、気に入ったお店があればそこに入りましょう」と結論づけた。
 明子は何かをする時に周到な計画を立てるというタイプではない。だから彼女と一緒にいると、新鮮な発想に触れることがよくある。
 街道沿いにはいくつかのレストランが見えるが、もう少し歩けばさらにいい店に出会えるだろうという期待が沸いてきて、結局僕たちはだらだらと歩くことになった。
「鎌倉時代の御家人の気分だね」
 明子は微笑を浮かべながら言った。
 この鎌倉街道は、鎌倉幕府の時代に将軍と御家人の間に結ばれた、いわゆる「御恩と奉公」の道なのだと明子は説明した。
 鎌倉で有事が起こると御家人たちは「いざ鎌倉」と口を揃えてこの道を急いだ。ただ、当時の道は放射状に張り巡らされていたらしく、今僕たちが歩いているのは現存する数少ない道の一つなのだと明子は教えてくれた。
 歴史において、道はとても重要な意味をもつ。情報が今のような形をとらない時代においては、それは人間同士がつながるための重要なツールだった。特に中世には、どこに要塞を築き、そこからどうやって道を張り巡らせるかということは、幕府の戦略的ビジョンそのものだった。日本だけではなく、中国の秦や漢の時代から作られた軍事用の道路や、ローマのアッピア街道などもそうだ。
 道と並んで重要なのが橋である。幕府の要塞を置くための地理的条件は川や海に囲まれているということであり、その時、領地の「端」に作られたのが「橋」だった。
「つまり、橋って、歓迎すべき人物と排斥すべき人物の取捨選択の場だったのね」
 明子は静かに言った。その時代、彼女は橋の建設計画に携わっていたのではないかと思わせる語りぶりで。
 ただ、明子の心に架けられた橋は、容易に他人を歓迎したりはしない。いや、その橋を渡ることが許される人間など誰もいない。もしいるとすれば、彼女が今なお愛し続けている夫だけだ。

鎌倉物語 11

 境内を一周して再び山門に戻った時には、太陽は中空に近いところにあった。
 明子は、最後に夏目漱石が籠っていたという帰源院という小さな塔頭に僕を連れて行った。漱石はここで死の恐怖と戦い、その体験をもとに描かれたのが「門」という小説なのよと説明した。一見民家のようでもある塔頭の入口は堅く閉ざされていて沈黙が漂っていたが、かの文豪がこの場所で修行をしたことを想像すると、歴史の世界とは思うほど大きくないような気もしてきた。
 帰源院を下りたところに「国宝 梵鐘」という看板が掛けられていて、この上には有名な鐘があるけど行ってみるかと明子は訊いてきた。君は行ったことがあるのかと問い返すと彼女はあると答えたので、それなら行かなくてもいいということになった。
 正直なところ歩き疲れもあるし、何より腹が減っている。もうとっくに昼を過ぎているではないか。
 それで僕たちは円覚寺に別れを告げることにした。山門を抜ける直前、明子はもう一度振り返って伽藍を見た。この景色を瞳に焼き付けておこうとしているようでもあった。
 石段を下りながら、次にここに来ることがあるとすればそれはいつだろうかと考えた。そしてその時には明子も一緒にいてくれるだろうかとも思った。
 僕の願いは彼女と一緒に暮らすことだ。結婚までは求めない。とにかく彼女を隣に生活したい。彼女の作った食事をとり、一緒に眠る。それができれば、どんなに幸せだろうといつも思う。
 その時、上の方で鐘が二つ鳴った。同時に円覚寺が遠ざかってゆくのを感じた。

 木立に覆われた石段を降りると、再び北鎌倉駅が見えた。その瞬間、目の前の風景がぐらついた。非現実から現実の世界に戻ってきたのか、それとも現実から非現実の世界に戻ってきたのか、分からなくなる。
 それは、夕方、明子が僕の部屋から出て行った後に残るあの感覚と同じだ。

 僕たちはこれまでに二度ほど旅行に行ったことがある。一度目は長崎、二度目は仙台。その他に明子は僕と一緒に夜を明かしたことがない。
 明子は週に二、三度は必ず僕の部屋に来てくれる。他愛のない話をし、テレビを見たり、休日には読書をしたり、音楽を聴いたり、そしてセックスをしたりする。僕たちはそれなりに濃密な時間を共有する。
 だが、どんなに楽しいひとときを過ごしても、明子は決まって自分のマンションに帰っていく。
 今なお家族も仕事ももたない彼女は、その気になれば僕の部屋に住むことだってできるはずだし、事実僕はそれを望んでいる。
 しかし強要は逆効果だ。海底に潜む二枚貝が開くには絶対的な安心感が必要なのだ。それゆえ僕はその時が来るまで彼女を急かさぬようにじっと待っている。
 僕にとっては、彼女と過ごす時間はいとおしく、現時点におけるすべてだと言っていい。だからこそ彼女が去っていった後の部屋には複雑な余韻が残る。 

鎌倉物語 10

 舎利殿を見終わった後も、明子はさらに奥へと進んだ。
「まだ何かあるの?」と聞くと、彼女は前を向いたまま「あまり人が行かないところだけどね」と応えた。
 道は狭くなり、緑が近くに迫っている。そろそろ紅葉しかけている葉も見られる。木々が陽光を遮っているために、仏殿の辺りよりも温度が低く感じられる。
 そうやって空を仰ぎながら歩いていると、石段が現れ、その頂に武家屋敷のような山門が見えた。そこには立派な字で「黄梅院」と書かれた板が懸けられている。
 明子は石段を上り、門をくぐった。僕も今度はつまずかないように慎重に敷居をまたいだ。
 境内にはこぢんまりとした庭園が広がり、小さなお堂もある。人の気配はなく、円覚寺の中にいることを忘れさせるほどの独立したのどかな世界がある。庭園の緑は丁寧に刈り揃えられ、梅の古木の枝先は勢いよく上に向いている。まるで、多くの手が天に恵みを求めているようだ。
「さっき塔頭の話をしたけど、ここがまさにそれね。ちゃんとした山門があって、本堂と観音堂というシンプルな伽藍がある」
「ということは、ここは誰かの墓だったんだな」
 明子は朽ちかけた杉板に書かれている「夢窓国師 御塔所」という文字に手のひらを向けた。
「夢窓疎石の墓みたいね」
「さっきの池を作ったお坊さんか」
「夢窓疎石は京都と鎌倉を行き来して文化をつないだけど、最後はここに眠っているのね」
 小鳥の声が漏れている。その声は森という楽器により増長され、空間全体に響き渡る。ひんやりとした空気が、さらに鮮明に音を伝えているようだ。
「心が落ち着く場所ね、ここは」
 明子は目を軽く閉じてそう言った。僕は彼女に寄り添い、肩を抱いた。すると明子はいつも僕の部屋から帰るときにするように、軽いキスを求めてきた。
 それから僕たちは肩を寄せ合いながら、突き当たりの観音堂まで進んだ。中には仏像が安置されている。
「千手観音だ」
 明子は静かに言った。内部が暗くてはっきりと分からなかったが、全体的な雰囲気から、とても安らかな姿の仏像であることが想像できた。
「本尊の釈迦如来像よりも仏様らしいね」
 明子は小声で感想を述べた。線香の煙が古い木材にまとわりついている。
 僕たちは揃って賽銭を入れ、手を合わせた。
 その時、観音堂の横に立ててある小さな掲示板を見つけた。そこには白い紙が貼ってあり、決して達筆とは言い難い文字で一句したためてある。

山の色澄みきつてまつすぐな煙  山頭火
 
 山頭火といえば、僕と同じ山口の人だ。俗世を捨てて全国を漂泊した歌人だったと記憶している。
 思わず周りの山々を見渡す。しかし、どこにも煙など上がっていない。だが、心の中には、山頭火が詠んだ光景をはっきりと思い浮かべることができた。
 煙は空に向かって細くまっすぐに伸び、やがて消えていく・・・

鎌倉物語 9

 明子が僕の職場である社会保険事務所を訪ねてきたのは三年前のことだ。多くの年金データが消失したという問題が持ち上がり、お金の管理についてはふだんあまり神経質になることのない明子も社会保険庁からの度重なる連絡を受けて、しかたなく事務所に足を運ぶことになったというわけだ。
 初めて明子を見た時、僕はそれまで体験したことのない衝撃を受けた。
 まず彼女はどきっとするほど美しかった。しかし美しい女性なら他にもいる。明子はさらに別のところで僕の心をとらえる何かをひきずっていた。
 彼女がふっと笑う。僕にはそれがうれしいのか哀しいのか、まるでつかめない。窓口で対応する僕の顔を彼女は見る。しかし僕を見ているのか、それとも僕と彼女の間にあるわずかな空間を見ているのか、分からない。事実僕は何度か彼女に説明が伝わっているのかを確認しなければならなかった。それでも彼女は分かったような分からないような反応しかしなかった。
 それに、彼女の年金記録には、家族がないにもかかわらずこれまで定職に就いた形跡も残っていなかった。いったい、どうやって生活をしているのだろうと首をかしげた。
「私だって初めてあなたを見た時、何かへんな気持ちになったわ」
 僕たちが会うようになったある夜、明子の方もそんなことを言ってきた。
「つまり俺たちは運命で結ばれていたのかな」
 その時は少し酔っぱらっていて、ずいぶん子供じみたことを言ったものだと恥ずかしくもなるが、それについて明子は、すぐには反応しなかった。
「私って、本を読むのが好きだから、言葉を信じて生きていたところがあるのよ。でもやっぱり実際の人間同士のつきあいって、言葉では表現しきれないところがあるのね。あなたとはそんなふうにしてつながっていられるように思えるの」
 少し考えた後で明子はそう言った。運命などという言葉は使わない、いかにも彼女らしい文脈だった。
 
 妙香池を過ぎた後、僕たちはさらに伽藍の奥へと進んだ。緑の匂いは鼻のすぐそばにまで迫り、線香の香りも濃くなっている。太陽もずいぶんと高いところに上っている。
 すると「円覚寺舎利殿」の看板が左手に見えた。
「このお寺の中でも一番有名な塔頭じゃないかしら」
「塔頭?」
「お墓の周りに作られた建物のことよ。この舎利殿はたしか」と明子は言い、説明板に目をやった。
「うん、やっぱりここは無学祖元のお墓ね。北条時宗の依頼でこのお寺を開いた僧侶よ。舎利っていうのは、釈迦の骨っていうことなんだけど、どうやら舎利を南宋から持って来させたのは源実朝のようね。鎌倉幕府の三代将軍。若くして暗殺された悲劇の将軍」
「実朝?」
 思わず口走ると、明子は僕の方を見た。
 舎利殿は公開されておらず、柵の奥に茂る緑の間に、ひっそりとした姿をわずかに見せているだけだ。それでも、じっと眺めているうちに、実朝に近づいているような気がしてきた。

鎌倉物語 8

 明子は説明板から目を離し、池の底を覗き込むようにしながらこう言った。
「やっぱり鎌倉と京都はつながってたんだね」
「それって、驚くことなの?」
「だって、鎌倉に幕府があった頃にも、天皇は京都にいたわけでしょ。当然両者は敵対してた。実際、幕府と朝廷の間で何度か争乱も起こってるし」
「そういえば、ある天皇がどこかの島に流されたっていう話を聞いたことがあるな。今じゃ考えられないけどね」 
「争い事になると、やっぱり武器の使い方に長ける幕府の方が強いのよ。それでも、当時の文化人の多くは天皇のいる京都に残った。藤原定家も鴨長明も兼好法師も。でも、僧侶をはじめ、多くの人たちは京都と鎌倉を行ったり来たりして、文化をつないでいたのね」
 緑色の水面に、帽子をかぶった明子の姿がくっきりと映っている。
「君は大学で歴史も勉強したんだね」
 竹で組まれた柵に手を置き、池に映る明子を見ながら問いかけた。すると彼女はゆっくりと首を振った。
「大学の時に研究してたことなんて、もう思い出せない。そもそも歴史と文学というのは似ているようで全然違うものだし」
 僕は彼女の横顔に視線を移した。その瞳には再びうつろな色がにじんでいる。
「私が歴史に興味を持つようになったのは、大学を卒業してからずっと後のことで、禅の思想に惹かれたのがきっかけなのよ。あなたにも言ったことがあるかもしれないけど、本気で出家を考えたことがあるの」
 明子はさみしげに笑った。

 今回の旅で明子についての印象がほんの少しだけだが変わった。ふだんから彼女は、彼女にしか見えない世界を抱え込んで生きている。それはたぶん、さっき横須賀線の中で話していた「たまらなさ」の世界だ。僕はその部分も含めて彼女を愛してきた。いやむしろ、そういう部分があるからこそ、彼女に惹かれてきたのだ。
 しかし鎌倉に来てからというもの、日頃はなかなか見せない一面を覗かせている。それはまるで虫かごから解放された蝶を連想させる。
 再び池に視線を落とすと、水面の緑はさらに深みを増したような気がした。
「鎌倉時代の末期には世の中の秩序が乱れて、僧侶たちもずいぶんと堕落していたようだけど、この円覚寺を創建した人たちは、目の前に起こる現実にとらわれない、壮大な宇宙観を抱いていたのね。だからこそ、今でもこのお寺は私たちを惹きつけるのよ。私が求めたのも、そんな世界だった」  
 明子が出家を志したことがあると聞いても僕は全く驚かない。言葉にしなくとも彼女がどんなことを考えているか、僕にはよく伝わっている。
 コミュニケーションとは必ずしも言葉によってのみ行われるものではないということを知ったのは明子と出会ってからのことだ。
 いや、コミュニケーションという言葉自体、なんて空疎な響きだろうとさえ思う・・・

鎌倉物語 7

「だって、禅の中心教義は『空』であり『無』であるわけだから、こんな顔で睨まれるのはふさわしくないような気がする。何もない、ただ空っぽの部屋で、ひたすら座禅を組む方がそれっぽいと私は思うけど」
「でも俺なんかは人間的に弱いから、空っぽの部屋に放り込まれたら手を抜きそうだな。怖い顔で睨まれた方が修行になりそうだ」
 僕は率直なところを述べた。
 そういえば今の仕事に就いてまもなくの頃、学生時代の友達と二人でインドへ行って、ペナレスの寺院を廻ったことがあった。この釈迦如来像の表情はあの時に見たヒンドゥーの神々に近いような気がした。
「人間は弱い存在・・・たしかに、その通りだと思う。だから死ぬまで修行しなければいけないのよ」
 ペナレスの街角を思い起こしていた僕の意識は、明子の言葉によって、再び現実の重みを感じることになった。
「俺の言葉には別に深い意味なんてないんだから、そんなところで引っかからなくていいよ」
 本当はそう言いたいところだった。
 明子がきびすを返したのはそれからしばらくしてのことだった。彼女は何の未練もなく仏殿を離れ次の順路を進み始めた。外へ出ると、仏殿の暗がりにいたせいか、空はよりまぶしく感じられ、参拝する人も増えているように思われた。
「円覚寺の魅力って、伽藍にあると思うの」
 明子は何事もなかったかのようにそう言った。その横顔に僕は安堵した。
 今日の明子は僕の知っている彼女とは少し違う。表情は総じておだやかで、何より饒舌だ。おそらくこれが本来の姿なのだろう。
「ところで、伽藍って、何だっけ?」
 彼女の少し後ろを歩きながら聞く。
「お寺の建物のことよ。これくらいのお寺になると、いくつもの建物が配置されているでしょ、特にこの円覚寺はその一つ一つが調和していると私は思うの。きっちりと計算して造られてるのよね、きっと」
 広大な境内を見渡してみる。明子の言う伽藍が、目の前に迫力を持って並んでいる。こうしてみると、荘厳な山門で仕切られた寺の内側には、それだけで完結した世界が存在しているようにも感じられる。一見何かのテーマパークのようでもある。
 すると、左手に大きな池が現れた。妙香池という看板が立っている。
「ただの池じゃないな」
 立ち止まってそう言うと、明子は池の畔に設置してある説明板を読み始めた。
「へぇ、この池は夢窓疎石が作ったんだ」
 明子はふだんよりも高めの声を上げた。その人物は誰だと聞くと、彼女は説明板に目をやったまま答え始めた。
「鎌倉時代の禅僧よ。南禅寺とか、京都でも相当レベルの高いお寺の住職を務めた人。庭師としても超一流で、たしか西芳寺の庭園にも関わってるはずよ、ほら、きれいな緑色の苔が生えている有名なお寺」
 明子は満足げに説明し、それから再び池に視線を落とした。緑色の水面は、周りの木立を映してよりいっそう深い緑を湛えている。その色合いは、底なし沼を連想させた。 

鎌倉物語 6

 途中に現れた小さな門の先には、さらに石段が続いている。入念な構造だ。両脇には巨大な杉の木立が迫っていて、辺りはいっそう暗くなり空気も冴え渡っている。
 この石段の頂上には楼閣が立っているらしく、すでに僕たちを見下ろしている。一歩ずつ近づくにつれて、ずいぶんと大がかりな建物だということが明らかになる。
 ついに石段を登り切ったとき、それは息を呑むほどに美しい木造の門だと分かった。陽光を跳ね返す屋根の先端は流麗に反り上がっていて、窓など細部の意匠もなかなか凝っている。
「円覚寺山門。このお寺の顔とも言える建物ね」
 明子が隣で言った。
「こんな林の中に突然現れるんだね」
 僕は息が切れている。冷静な明子とは対照的だ。
「禅宗のお寺はこの山門に大きな意味をもたせてあるのよ」
「というと?」
「禅の世界ってね、例えば浄土真宗みたいに念仏を唱えれば誰でも極楽浄土に行けるというような懐の深さを持ってないの。つまり、確固たる覚悟を持って寺に入らなければならない、覚悟のない者は寄せ付けないの。だからお寺に入る前に、入門者自身に自らの心を確認させるという意味があるのよ」
 僕は改めて全体に目を行き渡らせた。大した覚悟などない僕がここをくぐってもいいのだろうかと思う。すると明子は僕を気にも留めずにすたすたと境内に入っていった。慌ててついていこうとしたら敷居につまずいた。明子は振り向いて苦笑をにじませた。
 周囲を取り囲む木立からは小鳥のさえずりが響き渡り、線香がほのかに香っている。明子は何も言いはしなかったが、全身から開放感がみなぎっているのは一目瞭然だった。
 彼女の日々の暮らしは、精神面においても肉体面においても、様々な枷によって制限を受けている。僕には、時にその枷は彼女自身が自らに課しているようにも映る。彼女は過去を忘れるべきなのだ。もし忘れ去ることができないのなら、せめてそこに目を向けないようにして、残された人生の方にスポットライトを当ててほしいといつも願っている。
 しかし彼女は僕の願いとは常に逆の方向に進もうとする。その姿に触れるたびにどうしようもなくやるせない気分に陥ってしまう。さっき電車の中で彼女が言っていた「たまらなさ」を実は僕も抱えている。
 すると、土を踏む明子の足音がぴたりと止まった。ふと顔を上げると、ひときわ大きな建物がそびえている。
「本堂だな」
「禅宗のお寺の本堂は、仏殿って呼ぶのよ。禅寺は修行の場でもあるわけだから、建物の役割が細かく分けられてるの」
 明子の声を聞きながら堂内に安置されている仏像と対峙した。そこには炎のような形の冠を被った像が立っている。僕が見てきた仏像の中でもずいぶんと人間らしい表情をしていて、まるで睨みつけるかのような形相でこっちを向いている。思わず背筋がぴんと伸びる。
「釈迦如来像ね」
 明子のつぶやきが堂の内部に小さく響く。
「修業の場だからこんなおっかない顔をしてるのかな?」
「どうなんだろう?」
 明子はうつろなまなざしを仏像に向けた。

鎌倉物語 5

 北鎌倉駅のホームに降り立つと、まずひんやりとした空気にさらされ、緑の匂いが鼻先にまとわりついてきた。青いプラスチック製のベンチと、大学や旅館などの看板が掛けてあるだけの、ありふれた田舎の駅の光景だ。何より、思っていた以上に人が少ない。僕たちの他には年配の男女が五、六人といったところだ。格好からして旅仲間だろう。ケーブルテレビのローカル線の旅番組を見て、明子がこの駅をイメージした理由が分かるような気がした。
 ホームを降りてすぐに踏切を渡り、改札に向かって歩いていると、駅舎とは反対方向に大きな石柱が見えた。そこには堂々とした文字で「臨済宗大本山円覚寺」と彫ってある。どうやらここが円覚寺の入口になっているらしい。奥は石段が続いているようだが、周りの木々が深いためにその先は見えない。
「円覚寺ってこんな駅のそばにあるんだな」
 僕がそう言うと、明子は「夏目漱石もここに籠もって人生について思索したのよ」と返し、森の奥に続く道を見た。たしかにどこか風格のある森のようでもある。
 それから僕たちは駅舎に向かい、二つしかない改札を抜け、とりあえずコインロッカーに荷物を預けた。
「これからだいぶ歩くことになるけど、大丈夫?」
 ロッカーを閉めた後、彼女は言った。僕は鍵を財布にしまいながら、もちろん大丈夫だと返した。そのつもりでスニーカーを履いてきたのだ。
 駅から一歩外に出ると、初秋のやわらかな日差しが僕たちを包み込んだ。明子は深くかぶっていた帽子のつばを少しだけ上げて、乾いた空に向けて気持ちよさそうな視線を送った。
 僕は北鎌倉駅の駅舎を外から見上げた。木造瓦葺きの小さな駅舎は、幼い頃に住んでいた借家を彷彿とさせる佇まいだ。鎌倉といえば日本を代表する観光地のはずなのに、その名に不相応な駅舎だ。
 僕がそんなことを考えていると、明子は一人で歩き始めていた。彼女は彼女で、僕とは違う思索の中に沈み込んでいる。それが彼女の愛した夫のことだということはよく分かっている。過去形ではない。彼女は今もなお、夫のことを愛し続けている。
 僕は彼女を驚かさないように、そっと後を追いかける。 すると明子はぴたりと足を止めて、「やっぱり円覚寺からお参りするべきかな」と言った。
「君に任せるよ。なにしろ僕は初めての鎌倉なんだから」
 一週間前に書店でガイドブックを買い、ざっと概要はつかんでいたが、やはり実際に足を踏み入れると想像とはだいぶ違う。観光客でにぎわい、多くの店が並ぶ、京都や箱根のような街を思い浮かべていた。
「私に任せると、行き当たりばったりの旅になるけど」
「そういう旅の方が、いい想い出になるもんだよ」
 自分でそう言っておきながら「想い出」という言葉が耳の奥に残った。始まりは終わりをも意味する。この旅もやがては想い出に変わる・・・
 明子はさっき見た円覚寺の石柱の前に僕を導いた。もうすぐ色づきはじめるであろう紅葉の大木の影が奥に続く石段に染みこんでいる。
 すべては想い出に変わる。一歩ずつ登る石段は、次の瞬間には過去のものとなる。今という瞬間はもう二度とは戻らない。そんな当たり前の事実が、なぜかしみじみと実感された。

鎌倉物語 4

「その小説の主人公は貧しい女の子なんだけどね、列車の中で芥川の隣に腰を下ろすの。よく見れば、三等室の列車の切符を握っているのに、間違えて二等にいるのよ。でね、トンネルに入る直前に、重い窓を必死に開けようとするの。芥川はすべてが我慢ならなくなったんだけど、結局窓は開いて、トンネルの中だから黒煙が立ちこめてきて、彼は怒り出す寸前だったのよ。そしたらね、トンネルを抜けた瞬間、女の子は窓の外に身を乗り出すの。何をしたと思う?」
 全く予想がつかないと僕が言うと明子は口元をほころばせて話を続けた。
「見送りに出ていた弟たちに蜜柑を投げるの。つまりその娘は家族のために身売りに出されるところで、弟たちに最後の愛情を注ごうと蜜柑を投げたのよ。その光景を目撃した芥川は切ない気分になるの。そして、それと同時に憂鬱が少しだけ晴れる、そんなお話よ」
「なんだか、俺の知ってる芥川とは印象の違う話だな」
「彼は古典をモチーフにした小説が得意だったからね。『羅生門』も『鼻』もそのたぐいよね」
 さっきまでとは別の魂が宿ったかのように、明子の口の動きは滑らかになっている。そんな彼女を見ると僕の心も少しだけ晴れた。
 明子と一緒にいると格別の居心地の良さを感じる瞬間がある。人は天国に憧れる。明子から放出される心地よさは僕にとってはまさに天国に近いものがある。
「私にとってあの小説は、たまらなさを吹き込んでくるの。何とかしたいけど、どうすることもできない、でも決して諦められない、だからたまらなくなる」
 明子の話はまだ終わっていなかった。
「じつはね、あの小説の舞台は、まさにこの横須賀線なのよ。だから、この列車に乗るたびに、芥川のことを思い、主人公の女の子を思い出すの」
 明子はそう言い、浅く座り直した。そして空気中に浮かぶ窒素原子でも追いかけるような目で虚空を見つめた。
紫の眼鏡には光の筋が反射している。横浜では薄曇りだった空は、青色の部分の面積を確実に大きくしている。初秋の乾いた空だ。
 保土ヶ谷を過ぎてからは住宅地が続き、のどかな景色が広がりはじめた。横浜から離れれば離れるほど、明子の表情からは硬さが消えていく。東戸塚の駅で何人か降りて行った後は、乗客もわずかになった。
 彼女は軽く目を閉じて何かを考え込んでいる。その肩越しに、とてつもなく大きな白い仏像が現れ、そっちに気をとられていると、隣で明子がつぶやいた。
「大船観音だ」
 明子はその慈悲深い仏像をぼんやり眺めながら言った。
「ということは、次はいよいよ北鎌倉ね」
 大船駅を過ぎた途端、辺りの雰囲気は急変した。突然緑が深くなってきたのだ。間近にまで迫る森で空が見えなくなり、別次元の世界に突入するかのような感覚にとらわれる。
 すると、「次の停車駅は、北鎌倉」というアナウンスが流れる。景色に合わせるかのような低くて渋い声だ。それにしても、こんな森の中に駅があるのだろうかと疑念さえ抱く。
 やがて列車は減速し、森を抜けたところに集落が現れる。明子は風景を気にすることなくボストンバッグを手に取って、やおら立ち上がった。

鎌倉物語 3

 新幹線の車内にオルゴール調の「いい日旅立ち」が流れ、次の停車駅は新横浜ですというアナウンスが耳に入ってきた時、僕はめまいにも似た感覚にとらわれていた。それはもしかするとデジャブに近いのかもしれなかった。
 隣には明子が座っている。二人で新幹線に乗るのは初めてのことなのに、それがどうも信じられない。 
 僕はよく不吉な夢を見る。自分がまさに今から死ぬという瞬間の夢だ。目が覚めた時には首筋に嫌な汗をかいていてほっと胸をなで下ろす。ああ、夢でよかった、と。
 そんな夢を見るからか、僕は、やがてやって来るいまわの際から現在を眺めることがしばしばある。すると、今この瞬間が、すでに起こったことを回想しているように感じられることがある。
 今の状況もそうだ。過去において、明子と二人で新幹線に乗り、鎌倉に行ったことがあるような気がしてならない。いや、あるいは、今日のこの旅を無意識のうちに予感していたのかもしれない。暗殺される運命であることを知っていた実朝のように。
 一定の早さで窓の外を流れてゆく景色、それをぼんやりと見つめる明子、どうすることもできずにただ彼女を眺めるだけの僕・・・
 この景色を見たのはいつのことだったろうとあやしげな記憶をたどっていると、新幹線は徐々に減速をはじめ、外にはビルや大きな広告が間近に立ち並ぶようになってきた。明子はようやく視線を窓から離し、降車の準備をしている人たちの背中に顔を向けた。それから、降りようか、と僕にしか聞こえないような声でささやいた。
 新横浜駅のホームは多くの人々がうごめいていて、ホーム独特の陰湿さが漂っている。僕たちはそのまま市営地下鉄に乗り、横浜駅へと向かった。
 明子はベージュのキャンパス地の帽子を深めにかぶり、普段はめったにかけない眼鏡をかけている。そうして、他の乗客から身を守るようにうつむいて目を閉じている。僕はつり革に手を載せ、そんな彼女の姿を見るともなしに見ている。
 横浜駅に着くと、明子は横須賀線のホームに向かって歩き始めた。かつてこの町に住んでいたことがあるというだけあって、動きには無駄がない。それからタイミングよく滑り込んできた列車に乗った。平日の昼前ということで、車内には十分な空席が残っている。
 列車の速度が安定してきた時になって、明子はようやく口を開いた。
「久しぶりだなぁ」
 僕はさっき新幹線の中で買ったミネラルウォーターの残りを飲んだ。明子もそれを少しだけ口に含んだ。
市街地を離れると、辺りには緑もちらほらと見られるようになってきた。
「『蜜柑』っていう小説読んだことある?」
「蜜柑?」
「そう、蜜柑」
「誰が書いた小説?」
「芥川龍之介よ」
 彼女は、東京の女子大に在籍していた頃は国文学の研究室に入っていたらしく、現代文学だけではなく古典なども読み込んでいる。僕の部屋に来た時でさえソファに座って読書をする時があるほどだ。
「大正時代のお話なんだけどね」
 明子は子供に絵本でも読み聞かせるようなトーンで話を続けた。

鎌倉物語 2

 ローカル線は次の駅に停車している。カメラは線路を離れて周辺に広がる海の景色を映している。理想的とも言えるほどの青空が広がり、海面はその青さを鏡のように反映し、波は白い飛沫をあげている。その情景を見ていると、ふと源実朝の和歌を思い出す。明子が鎌倉の話をしたからだ。
 
大海の磯もとどろによする波 われてくだけて裂けて散るかも
 
 僕はどちらかといえば理系の人間で、特に文学に興味があるというわけでもないが、頭の中に残っている和歌や漢詩の一つ二つくらいはある。この実朝の短歌もそのうちの一つだ。
 実朝は元々将軍になるような豪傑ではなく、父の頼朝や兄の頼家と同じように自分も暗殺される運命だと幼い頃から予感していた、そんなエピソードをどこかで読んだことがある。
 果たして実朝は、その予感通り、鶴岡八幡宮の石段で公暁に首を取られた。公暁とは彼の甥だった。
 僕の記憶からこの和歌が消えなかったのは、ある種のインパクトがあったからに他ならないが、それでも、今、明子の隣で思い出すとは、不思議な偶然を感じる。
 もちろんテレビの中の景色には実朝暗殺に結びつくような不吉な世界は微塵も感じられない。そこにあるのは胸がすくほどに美しい海岸線の光景だ。しかしえてして美しいものの裏側にはそれにふさわしい影が張り付いているというのが僕の捉え方だ。
 ふと明子に目をやると、彼女はテレビに目を向けていながら、画面を見てはいない。明子は時々こういう顔をする。その時、彼女の瞳の中には誰も存在しない。
 しばらくして彼女は、抑揚なくこう言う。
「仕事のお休み、とれる?」
「有給休暇ならたっぷり余ってるよ」
そう返した後、僕はソファを立ってキッチンへ移動し、冷蔵庫から取り出したジンジャー・エールをラッパ飲みした。
 明子は休日には外へ出たがらない。彼女とつき合い始めて三年経つが、二人で外出するのはもっぱら平日と決まっている。彼女はいつも仕事のある僕に気を遣っているように見せているが、その言いぶりからは、僕と二人で休日の人混みを歩くのを避けていることが伝わってくる。
「ということは、鎌倉に行くというのは現実的な話なんだね?」
 僕はそう言いながらソファの背もたれから出ている彼女の後ろ頭を見た。
 明子は半分だけ顔をこちらに向けて応えた。
「でも、今晩、よく考えてみて、それから決めることにするわ」
 僕の方もいつしかその気になっていた。ただ漫然と過ぎるだけの日常生活の流れを変えるのには悪くないアイデアだと思った。
「いい返事を待ってる」
 僕が言うと、明子は頬を緩めてそっと立ち上がり、コットンのカーディガンを羽織った。それからいつものように僕に軽くキスをしたあと、今日もありがとうまた来るわと言い残して、ドアの向こうの夕闇の中に消えていった・・・

鎌倉物語 1

「お寺に行きたいね」と明子はつぶやいた。
 その時僕たちは、僕の部屋のソファに座って紅茶を飲みながら、ケーブルテレビの旅番組を見ていた。画面の中には、新緑豊かな無人駅にクリーム色に塗られたローカル線の車両が停車している。
「寺?」
「そう、お寺」
 明子はそう言い、ティーカップにそっと口を付けた。
「こういう番組見てるとね、無性に、どこかに出かけたくなるの。それも、心が癒されるようなとこにね」
「で、それが君の場合は寺というわけか」
 僕がそう言うと、明子は少し微笑んで、再びテレビの画面に目をやった。ローカル線は無人駅を出発し、青い空に誘い出されるかのように走り出している。
「ずいぶん前に横浜に住んでたことがあってね、もうかれこれ二十年近く前になるかな」
 明子は低い声でそう言い、ティーカップをサイドテーブルに置いた。コトッという乾いた音がした。
 明子が横浜に住んでいたという話は、彼女の口から聞いたことがあるが、初めて話すかのような口ぶりだ。それは意図的なのかどうかと勘ぐっている僕を尻目にかけるように、彼女はテレビの中に広がる景色に過去の自分を重ね合わせるかのごとく述懐した。
「はるか昔のことのようにも思えるし、ついこの間っていう気もする」
 僕はソファにもたれて彼女の横顔を眺めた。カーテンのすき間から漏れる夕暮れの明かりが、頬を濡らしている。
「週末になると、現実逃避するの。あの頃よく行っていたのが鎌倉。タカシくん、行ったことある?」
 明子はどこか呆然とした顔でそう言った。僕は首を横に振った。上京の折に箱根には何度か足を運んだことがあるが、その場合鎌倉を通ろうとすると遠回りになってしまう。鎌倉の渋滞は僕でも知っているくらいに有名だから、どうしても避けてしまうのだ。
「静かなところよ、鎌倉は」
 明子はそう言って再びティーカップを手に取り、フルートを吹くかのように口元に運んだ。ローカル線はいつの間にか海岸線沿いをひた走っている。
「鎌倉ってね、北と南で全然違うの」
 僕はまだ見たことのない鎌倉の街を想像した。真っ先に思い浮かぶのはやはり大仏だ。青い空を背景に堂々と鎮座しているおなじみの風景。それから江ノ島のある相模湾の情景もイメージできる。
「街の真ん中にあるのが鎌倉駅。でね、そこから南は海に向かって開けてるの。観光客も多いし、ハイカラな町並みが続いてる。それが、北に上がると、とたんに鬱蒼として、独特の静寂に包まれるの」
 明子はそう言い、テレビの上の方を見上げた。彼女の言う景色が僕にはうまく想像できない。ただ、こんなにもよく話す明子はあまり見たことがない。
「行ってみるかい?」とためしに言ってみる。
 明子は少し驚いたような顔で僕の方に顔を向けた。だがその表情は、まるで氷砂糖が水に溶けるように、しだいにゆるやかになっていった。

おはようございます!

 静かな朝です。
 私の街では空は青いですが、空気は少しひんやりとしています。

 もうすぐ梅雨の季節なのでしょうか、春が過ぎるのもあっという間ですね・・・

 さて、明日からこのブログを一新します。
 これまでいろいろな準備で更新もままならなかったですが、引き続きよろしくお願いいたします。

 みなさまと、またブログにてお会いできる日々が来ると思うと、なんだかほっとします。
 コメント等も歓迎いたしますので、いろいろな声もぜひお寄せください!

 それでは、またお会いいたしましょう。

無音な1日

 そういえば、今日は誰とも話をしませんでした。したがって、たぶん、声を出していません。いったい何年ぶりのことでしょう?
 朝5時に起きて、コンビニで日経新聞を買い、家に帰って焼きたてのホットケーキを食べながら読み、それから狭い書斎にこもりました。
 9時過ぎに30分ほど仮眠を取った後、昼まで書斎に。で、冷蔵庫の残り物を使って焼きそばを作り、レバーを煮て、そんな食事を済ませてから再び書斎へ。
 17時過ぎになってようやく昨夜からの暴風雨が収まったので、庭の草取りと家庭菜園の畑を耕し、それからスーパーに行ってトマトソースの平打ちパスタをゲット。
 再び書斎にこもった後、1時間程度のランニングをして、シャワーを浴びたのちにキッチンへ。庭で採れた紫アスパラガスとミニトマトをトッピングして冷凍パスタをグレードアップし、プロ野球中継を見ながら、パイナップルの酎ハイと一緒にディナー。その後風呂に入って、今また書斎にこもっています。
 今日は10時間以上この部屋にいることになります。何をしているかというと、新しい小説を執筆しています。新しいと言っても、以前公開した『鎌倉物語』をリバイスしているのです。タイトルも『灰色の青い風』と改めました。
 この半年の間で、いろいろと環境の変化があって、心も体も落ち着かなかったのですが、最近になってようやく執筆の時間に恵まれるようになりました。それと同時に、自然体の自分を思い出すことができるようになった気もします。
 というわけで、今日は無音の1日だったにもかかわらず、そのぶん、かえって、心の中ではいろいろな声が聞こえました。
 小説は近日中にアップロードさせていただきます!
作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

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