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キラキラ 298

「大学生の頃から、先輩と、こうなりたかった」と奈月は、僕の知っている奈月らしい口調でこう言った。それなのに、僕には何ひとつ、気の利いた言葉が返せなかった。
「先輩には絶対に分かってもらえないだろうけど、1日も忘れたことはなかったです。電話もメールもしなかったし、手紙も書かなかったですけど、先輩のことを毎日思ってました。そうして、いつかはこうなりたいって、憧れてました」と奈月は続けた。彼女の言葉は、僕の心を強く揺さぶった。心に突風が吹き込んできたかのようだ。
「もちろん、こうなっちゃいけないとも思ったんですよ。先輩は私にとっては、すごく大切な人ですから。先輩とはこれまでのままの関係でいた方がいいという考えもあったんです。でも、先輩を思う気持ちは止められなかった。先輩は、これまでで一番好きな男の人だし、これからも、これ以上好きになる人は絶対に出てこないと思っています。だから、どうしても諦められなかったです」
 僕は奈月の腰に手を遣った。そこは汗で濡れている。僕の汗か奈月のものか、判別のつかない汗だ。
「だから、私だけ佐賀に帰ることは、やっぱりできなかった。それがベストだったかもしれないけど、私にはできなかったです。心ではだめだと思えば思うほど、かえって身体は反対の方向に動いていくんです」と奈月は声を小さくしてそう言った後、「思い通りにならないようで、じつは思い通りになっているのが人生なんですね」と自嘲気味に笑った。
「だから先輩、これが最初で最後だと思って、私を抱いてください」
 奈月はそう結論づけるように言った。
「これが最後だとは限らないよ」と僕は返したが、奈月は何の反応もしなかった。心の中の突風は弱まり、冷たくゆるい風に変わった。これからも奈月とは会える、と心の中で叫んでみたが、そう思えば思うほど奈月は遠ざってゆくようで、どうしようもないほどにやるせない気持ちになってきた。
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Author:スリーアローズ
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