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キラキラ 307

 早朝の竹林の道を小走りで進みながら、そういえば、ここへ来る時にはまだ夜も明けておらず、空気もひんやりとしていたことを思い出した。あれからいったい何年経っただろうかと思う。
 いや、よくよく考えてみると、ほんの数時間しか経っていないのだ。僕は思わず両手の手のひらを広げて見た。今はいったいいつなのだろうと思う。そうして僕はいったい誰なのだろうと思う。不安になってふと顔を上げると、いつの間にやら奈月の隣に追いついている。その瞬間、心が少し落ち着いた。
 昨日はずっと奈月の隣を歩いた。それはとても自然な感じをもたらした。
 大学時代、僕たちはよく2人で歩いたものだ。僕は正門から学部キャンパスに続くけやきの道が好きだった。特に梅雨の晴れ間の風情には、何度も気分を良くしてもらった。地表から立ちこめる水気を含んだ空気が、けやきの緑をより鮮やかに浮かび上がらせるように思われた。授業が終わった後、僕はその道を奈月と歩いたものだ。あの時も奈月は決まって僕の少し前にいた。そうして、時折振り返りながら、いろんなことを、まるで少女のように楽しそうに話した。僕はそんな奈月の話を半分くらいにして聞いた。だからか、彼女が何を話したかはほとんど覚えていないが、その時の光景だけはくっきりと思い出すことができる。
 そうして、僕は今、やはり奈月と歩いている。大学を卒業して会うことのなかった時間の長さを実感することのないくらいにありふれた自然な光景だ。
 これからもこうして一緒に歩くことがあるに違いない。僕はそう思った。今回の旅が僕たちにどんな意味をもたらすことになろうとも、僕たちの関係は途切れることはない。そう考えるとすっと背筋が伸びた。それと同時に、辺りを囲む竹林のみずみずしい香りが鼻の奥に入り込んできた。
 もう少し奈月と一緒にいたい。離ればなれになった光源氏と六条御息所が文通したように、これからも気軽に連絡を取り合う関係でいるために、話をしておきたい、そう思った途端、奈月はふと足を止め、僕の顔をまっすぐに見上げてきた。
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Author:スリーアローズ
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