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キラキラ 318

 僕は奈月の手の温かさに違和感を覚えた。なぜ、こんなにも温かいのだろうかと考えるほどだった。もちろん、手自体がぬくもりをもっている。だが、それ以上に、野宮での身体の冷たさとの対比なのだろうとすぐに僕は思った。
 ほんの1時間前、僕たちはまだ夜が明けていない野宮の境内で抱き合い、性交した。その時僕は後ろから彼女の裸をことごとく抱きしめた。汗ばんだ奈月の身体は、冷たく、こわばっていた。その時の感覚は僕の身体にまだはっきりと残っている。それゆえ、今の奈月の手がよけいに温かく感じられるのだ。
 そんなことを思っていると、奈月は握る手にぎゅっと力を入れたり、逆にふっと力を抜いたりしてきた。そのほんの微細な動作は、紛れもなく奈月なりの感情表現だった。それで僕も、彼女の手を包み込むようにして、上からやさしく撫でた。
 奈月は何食わぬ顔をして前を向いたままだ。僕も背筋を伸ばしながら、横目でそんな彼女の様子を気にしている。つまり僕たち2人は、はじめて隣の席になった小学生の男女のような風情で座っている。そうしながら、手だけはしっかりとつなぎ、そこでお互いの感情を交わしている。
 奈月の指は、細い若竹のようでもある。僕はそんな彼女の手に対して、自分の感情が伝わるようにと、心を込めて撫でた。奈月もそれに応えるかのように、僕の指を撫で返したりしてくる。
 その間、僕たちは何も言葉を交わさなかった。運転手がルームミラーを覗いて何度か様子をうかがってきた。おそらく彼は、いきなり黙り込んだ僕たちを怪訝に思ったはずだ。だが僕は、運転手の様子など、もうどうでもよかった。僕が手を握ったり、撫でたりすることに対して、奈月からかすかな、それでいて確かな反応が返ってくるだけで十分すぎるほどだった。
 そのうち、奈月の手のぬくもりからは、様々なものが感じられるようになった。
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Author:スリーアローズ
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