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キラキラ 323

 地下通路を最後まで歩き、階段を上がっていると、あふれんばかりの日差しが再び窓から差し込んできた。僕の少し前を歩く奈月の白いワンピースも、ぱっと照らされ、より白く映えた。
 野宮でこの服を脱がしたことが嘘のようだが、逆に、サブリミナル効果の画像のように、妙に鮮明に思い出される瞬間もある。
 階段を登り切った時「新幹線口」の標示が目に飛び込んできた。奈月は、改札へと続く短いエスカレーターに足をかける前に、ガラスドアの向こうに広がる京都駅八条口の光景に目を遣った。
「アバンティ」があり、大きなホテルもある。レンタカー店はまだ営業を始めていない。パチンコ屋の電飾も消えたままだ。目の前のタクシー乗り場には車両が連なっているが、動いてはいないようだ。運転手たちは外へ出て、缶コーヒーを飲んだり、たばこをくわえたりして、相場を語り合っている。
「烏丸口に比べると、こっちの八条口は、なんとなくもの寂しいですね」と奈月は言った。僕も同感だった。「でも、私としては、こっちの方が、京都らしい気もするんですよね」
 奈月はそうつぶやき、前髪をゆっくりと掻き上げた。
「いったい、何回来ただろう、京都に。帰る時にはいつもここの風景を見ては、何となく寂しい気分になってこのエスカレーターを上っていくんです」
 そういえば、前回東山たちと来た時にも、奈月は同じようなことを言っていたのを思い出す。どんなことを言ったのかははっきりとは思えていないが、寂しそうな表情を浮かべていたのはよく覚えている。
「これから先、あるのかな、京都へ来ること」と奈月はつぶやいた。
 僕は何かを言いたかった。何かを言わなければならなかった。だが、口に出すべき言葉の候補があまりにも多すぎて、かえって何も言えなかった。それに、何を言っても嘘っぽくなりそうなのが、言う前から分かった。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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