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キラキラ 326

 何かを訴えかけるかのような目で僕の顔を凝視していた奈月は、しばらくしてから、視線をわずかにずらした。それと同時に、震える唇は今にも泣いてしまいそうな形にゆがんだ。
 季節の変わり目の空のように、刻一刻と変化する奈月の表情には、言葉をかける隙間を見いだすことができない。彼女が何かを言うのを待つ僕の心も震えだした。
 奈月は何も言葉を口にすることなく、電光掲示板の下にたたずんでいる。野宮にいた時には、彼女の身体に様々な魂が入れ替わり立ち替わり宿っているかのように見えたが、今の奈月は、僕がよく知る奈月だ。彼女は自分という器の中で彼女自身の葛藤と格闘している。そんな奈月に、いったいどんな声をかけようというのか?
 その時、博多行きの始発列車が13番線から発車予定であるという男性駅員のアナウンスがホームに鳴り響いた。いかにも事務的な口調だった。このままタイムアウトに持ち込んで、始発をやり過ごすというのも1つの方法だと考えた時、奈月は長いため息をはき出して、ついに口を開いた。
「帰ります」
 予期せぬ言葉に、思わず彼女の唇を見た。それはたき火の残り火のように、まだかすかに震えている。
「ちょっと、待ってくれ」
 僕の喉の奥からそんな言葉が勝手に飛び出した。
 奈月は震える唇を強引に抑え込むように口を固く閉じた。それから、肩にたまっていた力をふっと抜き、改札口の方向を見た。そこで何かを考えた後で、再び僕の顔に視線を戻し、こう言った。
「きりがないです」
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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