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キラキラ 331

 しおりは、おそらくは、奈月の手によって、新幹線のホームのゴミ箱に捨てられるのだ。そのことをしおり自身が最も悲しんでいるように見える。東山と奈月の手によって丹念に作り上げられ、旅行に同行し、長いこと奈月の懐に温められてきたしおりが、まさにこれから捨てられようとしているのだ。
 そのうち、しおりは、僕に何かを訴えかけているような気がしてきた。そんなことを思いながら奈月の手に握られたしおりを眺めていると、磯の香りの中から、和歌が浮かび上がってきた。

わくらばに 問ふ人あらば 須磨の浦に 藻塩垂れつつ わぶと答へよ

 僕はこの和歌を暗記していたわけではない。にもかかわらず、完全な形で心に再生された。
 それは在原行平が詠んだもので、「藻塩垂る」という須磨の情景を人々に定着させることになった和歌だ。私は海女たちが浜辺に引き揚げる海藻から藻塩が垂れるこの須磨の浦で1人寂しく生活しているのです、という孤独感が詠まれている。おそらく、東山のしおりの中に最も多く登場する和歌だろう。
 光源氏は、悲運の英雄である在原行平の後を追って、自らも須磨に退出した。僕たちの旅は、そんな光源氏を追いかけるところから始まったと言えるかもしれない。
 それにしてもどうして僕は、しおりの中の和歌をこうもきれいに暗記しているのだろう? 
 自分でも恐ろしくなっているところに、さらに次の和歌が心の中にこだました。

うきめ刈る 伊勢をの 海人を思ひやれ もしほたるてふ 須磨の浦にて

 それは、さっき奈月が野宮で情感を込めて口ずさんだ、六条御息所の和歌だ。
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Author:スリーアローズ
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