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キラキラ 335

 僕には自信があった。こんなにも追い詰められているにもかかわらず、この自信はいったいどこから来るのだろうと思うほどの、強いものだった。
 僕の記憶には、今の状況と同じような光景が2つほど残っている。1度目は、麻理子を見送った時だ。あの時僕は空港に立っていた。光沢のある紫のスーツケースに、ジーンズのショートパンツ、腰まで伸びたソバージュの髪。麻理子の後ろ姿はひときわ美しく見えた。こんな、うっとりするくらいに魅力的な女性とそれまで付き合っていたことが、何かの間違いのように思われた。出発ロビーへと抜けた麻理子は、僕の方に振り向き、ウインクをして唇の端をつり上げた。僕も、精一杯の笑顔で応えたが、きっとその表情は醜いばかりに引きつっていたことだろう。
 麻理子を見送った後、空港の駐車場に向かいながら、あぁ、これで幸恵とゆっくりと会うことができる、と安堵した。だが、その思いの真反対側では、同じ大きさの罪悪感がくすぶっていた。いや、そんな言葉では表せないかもしれない。とにかく、麻理子に対してとりかえしのつかないことをしてしまったという思いが、僕のすべてを黒い影で覆い尽くした。そんな中、最後に麻理子が僕の方を振り向いてくれたことだけが、せめてもの明るみとなって黒い心の片隅を照らしてくれた。
 僕は麻理子を幸せにしてやることはできなかった。ようするに彼女は僕にとっては不釣り合いな女性だったわけだ。そうやって開き直ってみても、心の影がすべて晴れることはなかった。あの時の麻理子のまなざしは、今でも脳裏に焼きついている。
 そうして、もう1つの記憶は、幸恵との最後だ。じつは、その時の僕たちには「これで最後なのだ」という認識はなかった。だが、僕には、漠然とではあったが、予感はあった。そして、おそらく、幸恵の方も僕と同じ考えを共有していたのではないかと、今になってそう思う。
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