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キラキラ 337

 奈月の白いワンピースが見えなくなってしまう直前のことだった。彼女は、突然、すっと背筋を伸ばした。この時はじめて、今まで奈月は、少しうつむき気味になってエレベーターに乗っていたことが分かった。
 とにかく彼女は、僕の前から消え去ろうとするまさにその時に、あたかも眠りから覚めたかのように、まっすぐ立ったのだ。それは、僕の目にもはっきりとわかる動きだった。
 僕は、乾いた口の中にわずかだけ残っていたつばを飲み込んだ。麻理子や幸恵のように、奈月は振り向いてくれる。改めてそう確信した。それと同時に、身体が券売機の方に向かって反応した。僕は今から入場券を持って改札を抜け、奈月の元に走るのだ。そうして、彼女を京都に引き留めて、もっと、じっくりと話し合おうと思う。これからも彼女と連絡を取り合えるような関係でいたい。須磨と伊勢に離ればなれになっても、文通によって結ばれた光源氏と六条御息所のような仲を取り戻すことが何よりも先決だ。
 もし僕たちが『宿世』によって結ばれているのであれば、きっとこれまで想像しなかったような新しい関係の中で、僕たちは再び歩き出すことができる。それがどんな関係なのかは今の時点では分からない。だが僕たちは、これまで以上に分かり合えるはずだ。そのことこそが、今回の旅で時間を共有した意味なのだ。
 そんな様々な思いがぎゅっと圧縮されて頭の中に入り込み、弱気になっていた僕を勇気づけた。
 奈月は、背筋を伸ばしたまま、新幹線のホームを見上げて、1つ、大きく息を吐き出したように見えた。そうして、次の瞬間、彼女はくるりと顔をこっちに向けた。その黒い瞳はまっすぐに僕を見ている。
 何もかもが、想像したとおりだった。僕は入場券を手に入れるために、自動券売機に向かって足を踏み出した。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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