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キラキラ 341

「人は心に深い苦悩を抱えている時、それを誰かに打ち明けずには生きていけない」
 奈月は野宮でそう言っていた。
 そして、それを打ち明けることができるだた1人の人とは、苦悩をもたらす張本人しかいないのだと。
 奈月がこれまで心に抱え込んできた苦悩の数々を、僕に向かって吐き出したということは、「張本人」は僕だったということになる。
 ここに立つといつも寂しくなると奈月がつぶやいた八条口の風景を漠然と眺めながら、ふと思った。奈月にとってのこの旅の意味とは、僕に苦悩を打ち明けることだったのだと。これまで僕は、自分はさまざまな局面において被害者だと感じることが多かった。さもなければ、傍観者かもしれなかった。
 大きく取られた窓から入り込む日差しは、1秒ごとに強さを増している。これまでの人生の中で白を並べてきたオセロの駒が1枚ずつひっくり返されていき、やがては僕の心を黒く覆い尽くしてゆく。僕は被害者でも傍観者でもなく、実は加害者だったのだ! 
 その時だった。天井の上で低くうなっていた新幹線が、轟音とともに動き出し、それとともにフロアの空気が不気味に振動した。
 僕は、もう1度改札の方を振り向いた。今まで気ぜわしかったサラリーマンたちの往来はすっかり落ち着いている。奈月がホームへと運ばれたエスカレーターに乗っている人もまばらだ。
 轟音は天井を右から左へと移動しはじめた。そうして、そのうちあっけなく過ぎ去ってしまった。すべてがあっという間の出来事だった。
 気づかないうちに僕の頬には涙が伝っている。すべてが遅すぎたのだ。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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