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キラキラ 343

「先輩」とその女の子は、僕に向かって、小さくささやきかけてきた。
 振り返ると、そこには白いワンピースを着た、背の低い女性が立っている。目を見開いて彼女を見ていると、思わず「うそだろ?」と言葉がこぼれた。僕の背後に立っているのは、紛れもなく、奈月だった。
「乗らなかったのか、新幹線に?」
 僕は、はやる気持ちを抑えながらまずそう聞いた。だが奈月は笑みを浮かべたままそこに立っているだけだ。ただ、その笑顔はさっきまでの作り笑いとは違って、無邪気であどけない。
 そうだ、大学時代、まだ僕たちが出会って間もない頃の奈月の顔だ。父親の病気も、麻理子からの陰湿なプレッシャーも経験しない頃に見せていた笑顔だ。
「先輩、ほんとに楽しかった」と奈月は吐き出した。「夢みたいだった」
「奈月」と彼女の名前を呼んだ。僕も夢のようだった。「もう少し話をしよう。これまでのことと、それから、俺たちのこれからについて、きちんとしておきたいんだ」
 僕は自分の声がうわずっているのを感じた。まるで他人の声のようだった。
「夢が叶ったんです」
 奈月は僕の言葉に頓着することなくそう言い、黒くつぶらな瞳で僕を見た。さっきまでの疲れもすっかり消えている。目の前に立っているのは、学生時代の奈月そのものだった。なつかしさがこみあげてくる。 
「ずっと先輩と2人っきりで旅をしたかったんですよ。須磨にも明石にも、京都にも行ってみたかった。どれくらいこの日を夢見ていたか、先輩には分からないでしょう。大学の時もそうだったし、佐賀に帰ってからも、この日のことを夢見ない日はなかったんですよ」
 奈月は甘えるような声を出した。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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