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キラキラ 345

「その頃からです。先輩と2人きりになることに、憧れるようになったのは。それも、これまでみたいにただ先輩のそばにいるんじゃなくって、先輩と2人でどこか遠くに行きたくって仕方がなくなりました。特に、想い出の詰まった『源氏物語』を辿る旅を、先輩と2人だけでもう1度やりたかった。そうして、これは、最上の願いだったけど、先輩に抱かれたかった。すごくすごくほしかったんです。麻理子さんにことごとく抑えつけられた反動が、私をもっとわがままにさせたんでしょうね」
 奈月の表情は、徐々にまたもとの輝きを取り戻しはじめた。僕はとりあえず、彼女が言いたいことをすべて吐き出すまで見守っておこうと考えた。実際のところ、そうするしかなかったのだ。
 周りでは、駅に入っていく人たちの動きが慌ただしくなっている。ついさっきまではサラリーマンたちが多かったが、観光客や京都市民と見られる人の姿も混ざりはじめてきた。
 早くここを離れて、僕の方も彼女と2人きりになりたかった。
 そんなことを考えていると、あろうことか、奈月は僕に寄り添い、キスを求めてきた。もちろん僕は彼女を制した。だが、どういうわけか、奈月は僕の手をすり抜けて、僕の口に唇をあてがってきた。
野宮で奈月を抱く直前に聞こえた「危ない」という声が、思い出したかのように、どこかで上がった。しかし、気がつけば僕は、人々の往来の真ん中で奈月とキスをしていた。
改めて抱く奈月の身体は、あたたかく、やわらかく感じられた。それに、ホテルや野宮にいた時よりも、素直になっているようだった。学生時代の奈月を抱きしめているとしか、僕には思えなかった。
「好き、大好き。ずっとこうしてたい。ずっと、ずっとこうしてたい。このままがいい」
 奈月は僕の腕の中でそんなことまで言ってきた。どこからどう見ても、10年前の奈月だ。僕は彼女の勢いに押され、人々の往来の中にもかかわらず、彼女を心から抱きしめた。奈月はこんなにもかわいらしい女の子だったのかと、抱きながらしみじみと実感した。
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Author:スリーアローズ
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