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スリーアローズ・ストーリー  5

 いよいよ夏の大会を間近に控えた頃のことでした。ちょっとした奇跡が起こりました。というのも、引退する予定だった3年生が、最後まで、つまり12月の全国大会予選まで続けたいと言い始めたのです。
 そのことを聞いた私は、うれしかったというよりは、安心したという感じでした。やはり、どんな生徒にも熱意と誠意は伝わるものだと改めて実感したのです。
 尤も、あの時の自分の思いを「熱意」だとか「誠意」という言葉に置き換えるのもおこがましい気もします。それは今だから言えることであって、実際は「無我夢中」でしかありませんでした。3年生がそれまでの通例を打ち破り、ラグビーと受験勉強を両立しようと決意したのは、「無我夢中」だった私に同情してくれたのかもしれません。
 とはいえ、問題はすべて解決したわけではありませんでした。
 3年生からは、最後までラグビーは続けるが、練習は週3日とさせてほしいという要望があったのです。私はその条件を呑むことにしました。彼らが主体的に判断した結果そう考えたのであれば、彼らを支えるという立場を変えるつもりはなかったからです。
 ただ、それ以上に厄介なことがありました。1人だけ、すぐに引退すると言ってきたのです。そのA君という選手は、荒削りながらも大胆で独創的なプレーができ、中学時代はバスケットボールの地区選抜に入るほどの選手で、身体能力も高く、体格もずば抜けていました。他校からは間違いなく驚異と感じられる、いわばチームの大黒柱でした。
 A君は早稲田大学への入学を熱望していました。ちょうど「起業家」という言葉が流行っていた御時世で、彼もIT関連のベンチャー企業を立ち上げたいという大いなる野心を抱いていたのです。たしかにそれはいかにも彼らしい夢でした。
 私は、彼を何度も引き留めようとしましたが、決意は固いようでした。
 A君のいない練習は、やはり、盛り上がりに欠けるところがありました。
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Author:スリーアローズ
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