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スリーアローズ・ストーリー 64

 カズの話を聞いた途端、選手たちの表情からは、硬さが取れたように感じられました。
 ヘッドフォンをしていたS君は慌ててそれを外し、隣にいたI君に「どうした? 今、カズさん、なんて言ったの?」と聞きました。
 するとI君は、「自分に酔うなって言われたぞ」と返しました。ややナルシスティックな所のあるS君は、カズの方を見て、へへへと変な笑いを向けました。
 S君のお母さんは、彼は昨夜はほとんど眠れなかったのだと私に言いました。するとヒロのお母さんも、じつはうちもそうだったと同調してきました。
「もし負けたら、最後になってしまうということが、どうしても信じられなかったみたい」とS君のお母さんは続けました。
 その言葉に、私もはっとさせられました。
 ひょっとして今日ですべてが終わりになるかもしれない・・・
 もちろん来年以降もチームは続くわけですが、私の着任と一緒にこの学校に入学してきた3年生たちには、特別な思い入れがありました。彼らは1年生の時から試合に出続け、練習を休みがちだった先輩たちに代わってチームを牽引してきた。これまで彼らと苦楽をともにし、長い時間を一緒に過ごしてきた。
 スリーアローズはもはや、私の一部になっていることは疑うことができないが、たしかにS君のお母さんの言うとおり、万が一、今から行われ試合で負けてしまえば、彼らと一緒にラグビーをすることはなくなってしまう、永遠に・・・
 すると、その時、私の目には入念にストレッチをするM君の姿が入ってきました。彼だけは全く動揺を見せず、いつもと同じ様子で、目の前のゲームに集中しているふうでした。
 彼の姿を見た時、私もいつもと同じような心持ちを取り戻したような気がしました
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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