スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スリーアローズ・ストーリー69

 ベンチに座った瞬間、緊張で唇と指先が激しく震えだしました。この1年の成果が試される、もしかしたらすべてが終わるかもしれない、そんなプレッシャーが襲いかかってきました。自分でプレーできない、選手を見守るしかない、そうして、信じるしかない、いや祈るしかない、これがラグビーの監督のつらさなのです。
 隣にはすでにカズが座っていて、目を細めて風を見ていました。ケンジがじゃんけんで勝った場合は陣地を選択するように言っておいたが、果たしてどうなるだろうかと彼はつぶやいていました。ラグビーでは、キックを有利に使うことができれば容易に前進でき、試合の主導権を握ることができます。つまり風向きはとても大事な要素なのです。
 カズはこの試合、後半に勝負があると踏んでいました。そのためにも、後半に風上に立つことができるように、前半はあえて風下を選択したいという思惑を抱いていました。
 するとケンジはじゃんけんに勝ち、カズは「あいつをキャプテンにしといてよかったよ」と笑いました。
 私は大きく深呼吸しました。今まで頬を濡らしていた涙はグラウンドに吹く風で乾き、それゆえ、オレンジのラグビージャージを着た選手たちの姿が鮮やかに映っていました。
選手たちは改めて円陣を組み、その掛け声が空に昇華してゆくのを待たずにそれぞれのポジションに散り散りになった時、場内は妙に静まりかえっているのを感じました。
 初冬の青空と、その下でグラウンドを取り囲むようにたちすくむ観客の姿。そんな光景がいっぺんに視界に入ってきた時、静寂を切り裂くようなホイッスルが突如として響き、H商工のキックオフで試合が始まりました。
 いよいよスリーアローズの集大成を披露する瞬間がやってきたと思うと、体中に取り憑いていた緊張が抜け、頭が妙に実務的に働き始めました。
 ところが、試合はいきなり予期せぬ方向に転がったのです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。