試合後にVTRで確認して分かったことですが、練習試合でもほとんど破綻することのなかったディフェンスラインに問題が起こっていました。というのも、2年生の中に、組織的な動きができていなかった選手がいたのです。おそらく彼も極度の緊張によって頭が真っ白になっていたのでしょう。そうして、そういう選手の所に攻め込まれてしまうのがラグビーなのです。
トライを取った後、H商工の選手は全く喜びませんでした。まるで、当たり前のことを当たり前にこなしたまでだとでもいわんばかりの雰囲気でした。相手はやはり横綱だったのです。
H商工との過去の対戦は一方的な大差で負け続けていたために、今日も同じ結果になるのではないかと嫌な予感を抱かせるほどの、じつにあっけないトライの取られ方でした。H商工の選手たちもこのまま立て続けにトライを奪って、前半で一気に決めてしまおうというような言葉を口々に言っていました。
スリーアローズの円陣の中では、ファイターであるI君が檄を飛ばしているのが見えました。それから、M君がなにやら具体的な指示を出しているのも見えました。カズは私の隣で微動だにせず、口の前で両手を合わせて戦局を見守っていました。
スリーアローズのキックオフでゲームが再開されると、選手たちはさっきまでとは違う動きをし始めました。彼らはH商工のお株を奪うようなパワープレーを仕掛けていっているではありませんか。夏に取り組んだコンタクトスキルを試すかのように、低く、鋭く、組織的に、相手を押し込みはじめました。隣でカズが、オッケー、と大きな声を上げました。
トライを取られたことで目が覚めたスリーアローズは、じりじりと相手を押し込み、H商工の選手たちにも焦りといらだちが見られはじめました。そうして前半15分、相手の反則から得たペナルティー・ゴールをM君が決め、3点を返しました。
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