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私の年越し その2

 薄暗くて広大な鶏舎の中には鶏たちの姿はどこにもなく、異様な雰囲気でした。どうやら昨夜の班が殺処分を済ませ、運び出していたようです。鶏糞の上に落ちた白い羽や卵を見てはじめて、数時間前ここには数万羽の鶏たちがいたことがうかがえました。
 かなり時間をかけて鶏舎内の鶏糞の除去と消毒が終わっても、叩きつけるような雨は降り続いていました。すると、職員がハンドマイクを持ち、他の鶏舎の中には鶏たちの死骸がまだ残っているから、それをドラム缶の中に詰め込んでくれという指令を発しました。
 暴風の中、長い坂を下りてそこに立ち並ぶ鶏舎を恐る恐る覗くと、とんでもなく大きな白い塊が入り口付近に折り重なっていました。それは、もう正視できないほどの光景で、雨粒と熱気でゴーグルが曇って視界がはっきりしないのが幸いでした。
 イニシャルだけが書かれた防護服を着た私たちは、全く無言でバケツリレーの列を作り、手から手へと運び出しました。それは予想以上に重く、ずっしりと肩に堪えました。中にはまだ温かい鶏もいて、手に取った途端、ぞっとしました。しかも、驚くことに、まだ生きているものさえいました。死骸の山の中から何とか這い出てきた鶏は、養鶏家の方によって静かに絞められ、ドラム缶に運び込まれました。
 作業は日没まで続きました。真っ白な防護服は、血だらけになっていました。いったいどこから血が出るのか、分かりませんでした。
 作業終了の声がかかった時、鶏舎の中はすっかりきれいになっていました。他の鶏舎の中に残っている死骸は次の班が徹夜で運び出すということでした。
 帰りのバスに乗っても、鶏の重さは肩に残り、血なまぐささは鼻の奥にくすぶっていました。私は、何とも言えない気持ちを抱えたまま、町の明かりに目をやりました。それは思いの外眩しく、目にしみるようでした。決して忘れられない大晦日となりました。
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Author:スリーアローズ
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