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渚のシルエット 3

「私ね、橋田君のこと、好きだったのよ、じつは」
 高校の正門の前を通過する時、彼女はだしぬけにそう言ってきた。
 僕は、ハンドルを握りながら、まず自分の耳を疑った。彼女は僕の顔を見ている。中学校時代の雰囲気をかすかに残した表情で。
 すると彼女は、「ねえ、何か言ってよ」と催促してきた。
 頭の中ではいろんな言葉が思い浮かんだが、この場に相応しい言葉が見つからなかった。
 彼女はアイスコーヒーのストローに唇を付けた。
「君はずいぶんとモテてたから、何人か好きな人がいたんだろう」
 僕がそう言うと、彼女は心底つまらなそうな顔をし、視線を窓の外に向けた。
「ねえ、ちょっとだけ窓を開けていい?」
 すぐ外には防波堤が続いていて、その向こうは海になっている。彼女が開けた窓からは磯の香りを含んだ潮風が入り込んできて、空の下には白い海鳥が浮かんでいる。
「こういうことを言うのも失礼かもしれないけど、なんで橋田君はまだ結婚しないの?」
 彼女は海鳥の方を見ながら、そう尋ねてきた。僕の中にはうまくいかなかった結婚生活の記憶がよぎったが、それはすぐに後方へと流れ去った。
「結婚しないんじゃなくて、できないんだよ」と僕は答えた。
 すると、しばらく間を置いてから、彼女は、「橋田君って、見た目はだいぶ変わったけど、心はあんまり変わってないね」と漏らした。
「俺のことはいいからさ、そっちはどうなんだよ?」と僕は聞き返した。
 彼女は医療系の短大を出た後、病院に就職して医師と結婚し、子供を2人産み、現在は横浜に住んでいるという話はさっきの同窓会で耳にしたばかりだった。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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