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渚のシルエット 4

「楽しくやってるよ」
 彼女は即答した。
「医者と結婚だなんて、ラッキーだったな」と僕が言うと、「ごく普通の生活を送ってるけどね」と彼女は付け足した。
「経済的なゆとりは精神的なゆとりをもたらすものだ」
「そんなに裕福でもないと思うよ。そもそも、お金があればいいっていうもんでもないだろうし・・・」
 それから僕たちは、車を停め、高校の近くの海岸を歩いた。5月の海は金粉をばらまいたかのようにまぶしく広がっている。僕は改めて、彼女と一緒に歩いていることが奇跡のように感じられた。この海岸は、高校生たちには、カップルで歩く憧れの場所だったのだ。
 波が遠慮がちに砂を濡らし、空を舞う海鳥はけだるそうに鳴いた。
「そういえば、橋田君、ハウンド・ドッグが好きだったね」
 彼女はそんなことを言い、足を止め、水平線の方を眺めた。僕はその言葉に驚いた。たしかに僕は中学生の頃、いつもハウンド・ドッグばかり聴いていた。
「橋田君が放送委員で、給食のときにハウンド・ドッグのバラードをかけたのをすごく覚えてる。誰もリクエストした覚えはないのに、橋田君の権限で勝手にかけたのよ」
「25年ぶりに思い出す話だ。そういえば、ちゃんとリクエストした奴からは、散々文句を言われたよ」と僕は述懐した。中学校のランチルームの匂いが思い起された。
「橋田君って、あの時、雅子ちゃんのことが好きだったんでしょ? で、あの曲は雅子ちゃんに捧げたんだって、ちょっとした噂になってた」
 彼女の横顔は、中学生の時に戻っていた。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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