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渚のシルエット 5

「懐かしいけど、思い出したくない話だね。25年経っても、まだ十分に恥ずかしい」
 僕がそう言うと、彼女は、足元に落ちていた丸い石を拾い上げ、慣れない動作で海へと放り投げた。
「そういえば、今日、雅子ちゃん来てなかったね、どうしたんだろう?」
 彼女の言う通り、あの頃僕は、堀川雅子というクラスメイトのことが好きだった。恋心をこらえ切ることができず、何枚もラブレターを書いた。堀川が困っていることにさえ気づかずに、最後まで突っ走った。
「雅子ちゃん、今どこで何してるんだろうね。そういえば、さっきの同窓会でも話が出なかったね」
 僕は心だけ中学時代にタイムスリップしたような気がしていた。そして、そこから今を見た時、これまでの時間が愕然とするほどにあっという間だったのを悟った。
「でも、正直、今日はびっくりしたわ。みんな、やっぱり更けてたしね。生徒だったのが、いきなり保護者になったって感じ。柴田君なんて、もうおじいさんになってた」
 彼女は水平線を見ながらそう言い、ショートヘアをかきあげた。眼鏡がきらりと光った。
「それにしても、海って、いいね」
「横浜にも海があるじゃないか?」
 僕がそう言うと、彼女は「横浜の海も素敵よ。私、大好き。でも、なんていうのかな、田舎の海はまた格別ね。心に刷り込まれちゃってるのかな、なんか、すごく落ち着く」と応え、薄く微笑んだ。
 いや、彼女は一見すると笑っているようだが、楽しそうな感覚は、なぜかまるで伝わってこなかった。見方によっては、泣いているようでもあった。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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