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書くことと、生きること

 紫式部が『源氏物語』を執筆するエネルギーとなったのは、彼女の実生活でした。
 華やかな宮仕えを果たした彼女でしたが、そこに至るまでには、当時にしては遅かった結婚の2年後に、夫と死別するという苦難を味わいました。
 平安朝の女性にとって、宮中に上がって天皇をはじめ権力者たちのそばに仕えるというのは、至高の憧れでした。しかし、紫式部は、最高権力者であった藤原道長の娘に仕えるために宮中にスカウトされたものの、そこでの人間関係の波にさらされることになり、実際は決して華やかな時間を過ごしたわけではありませんでした。
 彼女はまず、現実の中に生きざるを得ない自らの「身」を強く意識しました。貴族社会に束縛される「身」、未亡人としての悲しみを背負う「身」、やがては死んでいく「身」、自分はそれらを受け容れて生きていくしかない「身」であることを悟ったわけです。
 ところが、あるとき、不思議なことに気づきます。どんなに厳しい現実の中においても、それらに束縛されない自由なものがある、それは「心」でした。
「心」は、どんなに苦しい「身」であっても、やがてはその現実に適応し、自由に広がり、自分を慰めてくれる、そのことに気づいたのです。 
 
心だにいかなる身にかかなふらむ 思ひ知れども思ひ知られず(『紫式部集』五十六番) 
 
 この心だけは、いかなる「身」にも従うことはない。自分でつかんでいるようで、決してつかめないのが、心というものだから。
『源氏物語』は、紫式部が彼女なりの人生の中で紡ぎあげた「心」の世界だったのです。その世界は彼女の「身」を遥かに超え、千年以上経て、私の「心」を慰めてくれます。 

※参考文献:『源氏物語の時代』山本淳子 朝日新聞出版
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Author:スリーアローズ
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