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New York State of Mind  《part2》

 重厚なドアを開け、中に足を踏み入れると、ビアホールに似た景色が広がっていました。ニューヨークのジャズハウスといえばクールなイメージを抱いていた私には、少しかけ離れた印象です。ただ、ここでも、アルコールと人のにおいが充満しています。
 白熱灯に照らされた店内にはジャズの巨匠たちの写真がずらりと並び、板張りの壁には今なお彼らの名演が染み込んでいるように感じられました。
 観客たちが陽気に談笑している中で、私もとりあえずビールを注文しました。よく冷えたギネスは長旅と時差ぼけで火照り気味の頭を鎮めてくれるようでした。
 その時、照明が落とされ、ステージだけが青白い蛍光灯に浮かび上がりました。そして、アメリカ人ドラマーの後にコントラバスを抱えたFB仲間が登場し、左端のグランドピアノに山中千尋が腰掛け、何の前置きもないままに「ダニー・ボーイ」が始まりました。
 その瞬間、会場内はぴたりと静まりかえり、トリオの演奏だけが進行しました。
「ダニー・ボーイ」の後、畳みかけるように名曲が続きました。「テイク・ファイブ」「ワルツ・フォー・デビー」「イパネマの娘」・・・
 山中千尋は黒のワンピースを着て上機嫌に鍵盤を叩いています。いつもは画面越しに対話するFB仲間も得意げに弦をつま弾いています。
 観客たちは時折グラスの音を立てながら、チームワークの取れた3人が奏でる即興の音楽に酔いしれているようでした。
 私が日頃感じている職場の息苦しさや人生の不毛感も、すべてこの空間の中に昇華して消えてゆくようでした・・・

 閏日の2月29日、仕事が終わった後、スマホの「You Tube」で山中千尋のライブ動画を見ながら、私はこんな妄想に耽るのです。想像は、全能ですね。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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