スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鎌倉物語 17

 京都へは大学四年の秋に可南子と二人で訪ねたことがあった。可南子は秋の京都が好きだった。
 僕たちは嵐山で紅葉を見、それから二条城の辺りをあてもなく歩いた。あの時に撮った何枚かの写真は今も本棚の引き出しにしまってある。
 そんな想い出があったがために、京都駅に降り立った時、隣に美咲がいることにどうも違和感を覚えずにはいられなかった。
 あの日の可南子に比べると美咲には力強さがあった。彼女は世界に羽ばたくかもしれないジャズプレイヤーなのだ。
 親友同士だった可南子とは共通点があるようで、じつはまるで異なった人格だったとその時気づいた。
 とはいえ、美咲との旅の途中で、可南子と訪ねた京都を何度も思い出すことになった。それは、季節が同じ秋だったからかもしれない。とにかく目に入ってくる風景すべてがあの日の延長線上にあった・・・

 僕と美咲は駅前のターミナルからバスに乗り、いったんホテルに立ち寄った後で、清水寺に行った。それから清水の坂を下り、八坂の塔を抜け、祇園の街に出た。昼はにしんそばを食べ、八坂神社と円山公園を歩き、銀閣へと向かった。
 とにかく有名な場所を見ておきたいと美咲は繰り返した。銀閣の参道を歩きながら、そういえば可南子はそんなことは言わなかったことを想った。
 その後、龍安寺の庭を見て、金閣へと移動した。まさに京都のゴールデン・ルートともいうべき行程をたどったわけだ。
 美咲はカメラを持たなかった。その分、しっかりと心に焼き付けておきたいのだと説明したが、僕はそうは思わなかった。未来において、写真を見ながら僕を思い出すのが嫌なのだろうと想像した。
 夜は先斗町で京料理をつまみ、その後ビストロでワインを飲んでから、ハイアット・リージェンシー京都に戻った。
 部屋の窓に掛けられたシェードを上げると、眼下には京都国立博物館がひっそりと佇んでいた。セピア色にライトアップされた重厚な建造物は、何かの遺跡を連想させた。美咲は珍しくしんみりとした顔つきでそれを眺めていた。
 僕たちは軽くビールを飲み、シャワーを浴びた後で最後のセックスをした。

 あくる日の朝食はレストランでのビュッフェだった。大理石調の広々としたフロアには、大きな窓から差し込む朝日の光があふれていた。
「すてきだ」
 美咲はテーブルにつくと同時にそう漏らした。彼女の言うとおり、いかにも絵画的な風景だった。
 窓の外には日本庭園がしつらえられてあり、風に吹かれる一群の青竹が光を揺らし、テーブルの上に光と影を交互に作りだした。
 僕たちはその光の揺らめきの中で朝食をとった。周りの席では外国人を含む多くの宿泊客がにぎやかに食事をとっていたが、僕たちは淡々と、それぞれの思考に沈みながら料理を口に運んだ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。