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鎌倉物語 49

 ところで、生きることと死ぬことにはそんなに大きな差はないのだと言っていた人がいました。さっき寿福寺で出会った山本耕二さんです。
 山本さん、不思議な人です。あの人、いったい何だったんだろう・・・
 私には神のように見える。いや、神っていうのはちょっと違うかもしれません。寿福寺に眠る数え切れないほどの魂の代表者みたいな人。
 ごめんなさい、あなたには何のことやら、よく分からないでしょう。とにかく私はあの人の話を聞きながら気持ち良くなったのです。あぁ、いつも私が考えていることと同じことを言ってるって。私の中に残っていた生と死の間の壁がすうっと取り払われた感じがして、死ぬことが本当に怖くなくなった。
 でも、心配しないでください。何も私は今から死のうとしているわけじゃないですから。もっとひたむきに自分と向き合おうと思うのです。
 山口に来て本当に良かったです。でも、もう次の土地に移らなければいけません。そこで本を読みながら暮らすつもりです。この世にはまだ多くの本が眠っています。私は本の中に生き、そしてその時が来れば静かに死んでいきます。それが、私に与えられた人生なのです。
 あなたと出会った瞬間、心が大きく波打ったのを覚えています。彼と似ているところを感じたのです。身を隠して生きてきたつもりだったのに、実は彼と再会できることを密かに期待していた自分にその時気づきました。
 あなたと一緒にいると、東京や福井での幸せだった生活を何度も思い出すことができた。そうしていつしか私は以前の自分の一部を取り戻していた。信じられないことだった。だから私はあなたから離れる時機をついつい先送りしてしまった。
 去年だったかしら、あなたは結婚しようと言ってくれましたね。私、素っ気なく流してしまったけど、実は心が燃え上がるくらいに嬉しかったのです。正直なところ本気で揺れました。
 でも揺れれば揺れるほど、彼の顔が浮かんできて、やっぱりあなたのやさしさの中に飛び込むことができなかったのです。あなたに迷惑をかけてはいけない。あなたは私がいなくても生きていける。
 これ以上あなたと一緒にいてはいけないと自分を責めました。でもそれでもどうしてもあなたに会いたくて、体がいうことを聞いてくれなかった。甘えがあったのかもしれません。一体自分は何をしたいのだと、あなたの部屋を出てマンションに帰りながら自問自答し続けました。
 あなたのことは終生忘れられない、忘れられるはずがありません。でも私はあなたの知らないところに旅立ちます。あなたはまだ若い。思う存分人生を楽しみ、幸せというものをつかみ取ってほしいと心から願います。    明子
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Author:スリーアローズ
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