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鎌倉物語 35

 美咲の話を聞いた僕は久々に佐織のことを思い出すことになった。一緒に南アフリカに行った友達というのは、まさに佐織のことだったのだ。大学時代に彼女たちは同じ研究室に所属していて、そこに南アフリカからの留学生が来たことがある。たしかその女性はハリスという名前だった。ハリスが帰国して数ヶ月後に、2人はヨハネスブルグにある彼女の家を訪れた。僕は佐織からなんとも怪しげなキャンディや、トウモロコシで作られた饅頭のような食べ物をお土産にもらったものだ。
 ところで僕がジャズハウスに入り浸るようになってからも、週に2、3回は佐織から連絡があった。彼女から電話がかかってくることもあったし僕の方から電話することもあった。まさか佐織は僕が毎回美咲のピアノを聴いているなんて知らなかっただろう。まして僕たちはちょくちょくセックスをする仲になっているだなんて、夢にも思っていなかったはずだ。もちろん僕に罪悪感がなかったわけではない。ただそれ以上に佐織を傷つけたくないという思いが強かったのだ。
 しかしこのことを最後まで隠し通すことはできなかった。美咲の彼氏が佐織に忠告したのだ。あの2人はどうもあやしいと。
 ある夜、佐織はぬきうちでジャズハウスに現れた。しかしその夜は僕が店に足を運ばない数少ない日に当たっていた。佐織は僕の部屋に入ってきて、僕の顔を見るや否や大泣きした。命拾いした僕はただ狼狽するばかりだった。その日は夜通し佐織を看病することになった。佐織の髪を撫でながら、身の毛がよだつのを必死にこらえた。今考えると、中原中也と同じような運命をたどったのは、佐織の方だったのかもしれない。
 結局それが彼女との最後の夜になった。
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こんにちは

展開がいいです。ほんとうに旅をしているような気になります。これからも楽しみにしてます。
作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

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