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キラキラ 126

「いかにも東山らしい、大胆な見解だな」と僕は感想を述べた。
 奈月はいったんしおりを膝の上に置き、「でも、それなりに説得力ありますよね」と応えた。「『源氏物語』では、ラブシーンは省略されるわけですから、なんというか、比喩的な表現になってしまうのは十分に考えられますもん。たしか、人妻である空蝉と関係を結んだ時や、藤壺と密通した時にも、同じような感じで、さりげなく、なまめかしい描かれ方がされてましたよ」
 奈月がそう言った後、僕は改めて比叡山を眺めた。距離が近づいた分、さっきよりも緑が濃く見える。その瞬間、新幹線はもう1段減速したように感じられた。すると、オルゴール調の甘い音楽が流れ、「まもなく、京都。京都です・・・」というアナウンスが控えめに響いた。
 それでも奈月は、「でも、私の場合は、明石の君よりも、やっぱり六条御息所の方が気になっちゃいますね」と話を終わらせなかった。僕は彼女の横顔に目を遣った。
「源氏にとって、初めて明石の君と過ごす夜は、ドキドキだったんです。だって、須磨に流れて以降、独り寝の寂しさを味わい続けてたんですから。そもそも明石の君に近づいたのは『心細き独り寝の慰めにも』という思いがきっかけでしたし。だからこそ、明石の君との夜は、いくら源氏とはいえ、あっという間に感じられたことでしょう。でも朝になれば、平安時代の恋のルールに従って、自分の屋敷に戻ります。そして、後朝(きぬぎぬ)の手紙といわれる、愛を交わした翌朝に送る手紙をこっそりと送るんです。源氏には、半ば強引に明石の君を抱いたという良心の呵責のようなものがありました。都から流れた身でありながら、このようなことが起こってしまったのを包み隠そうとも思うわけです。   
 でも、決して悲しい場面に見えません。六条御息所と別れた野宮の朝と比べると、むしろ前向きにさえ感じられます。これから明石の君との新しい生活が始まってゆくわけですから。そう考えると、どうしても六条御息所に、私は同情しちゃいますね」
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