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キラキラ 127

 奈月はどこか煮え切らないような表情を浮かべてそう言った。
「どんなに会えない時間が長くても、好きな人を思う気持ちは色褪せないものだって私は思うんです。でも、他に好きな人ができた場合、それも、会えない人の存在を埋めるような人のことを好きになった時、これまで思っていた人への気持ちって、自然と移ろい消えてゆくものなんじゃないでしょうか」
 奈月は、実体験を話しているように見える。東山のことを言っているのかもしれない。
「なんか、せつないです」
 奈月がそう漏らした時、新幹線はさらに減速した。窓の外には東寺の五重塔が青い空に向かって黒くそびえ立っているのが見える。いよいよ京都に入ったんだなと僕は実感した。奈月もふっと我に戻ったような顔をして、「おっ」と小さく口走った。「いつの間にか着いてましたね」
 そうつぶやいた奈月は、膝の上のしおりをやさしく真ん中で折り、白いトートバッグの中に仕舞った。
 東寺を過ぎた新幹線は八条の街を右手に眺めながら、京都駅ビルの中にゆっくりと潜り込んでいった。ここへ来るといつも僕は、ある名状しがたい暗さを感じてしまう。もちろん駅ビルがあまりに大きいために日差しを遮ってしまうといえばそれまでだ。だが僕は、それ以上の何かを感じる。歴史の重みというのはあまりに陳腐な表現に思われる。とにかくこの京都駅は、たとえば東京駅とは明らかに違う世界に覆われているといつも思う。前回東山たちとここへきた時にも同じことを感じた。
 だが、明石から新快速列車に乗ってきたあの日と比べても、今日はひときわ暗く感じられる。さっきまであまりにまぶしい日差しに照らされていたから、そのコントラストによるのかもしれない。
 ホームに降り立った瞬間、熱気が全身を包み込んだ。時計は17時を過ぎている。奈月は「とりあえず、宿に行きましょうかね」と言った。「前回と同じホテルをとってますから」 
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