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キラキラ 128

 新幹線のホームを出た後でエスカレーターに乗り、出口に向かって降りていると、眼下に広がる大きなフロアに多くの人々がひしめき合っているのが見えた。
「うわぁ、すごい人ですね」と奈月は声を上げた。「先輩はあんまり驚かないでしょ?」
「東京も人が多いからなぁ。ただ、人混みには驚かないけど、この京都駅の様子は、東京とはまた違う感じがするね」と僕は答えた。
 奈月は「佐賀から出て来た私は、圧倒されちゃいますよ」と甲高い声を上げたが、僕の目にはウキウキしているように映った。
「前に来た時もこんなに人が多かったかな?」と問いかけると、「多かったと思いますよ、たぶん。正直、あんまりよく覚えてないですけどね」と奈月は返してきた。
 じつは僕も同感だ。前回ここに来た時の記憶は、おそろしいくらいにきれいに消えている。
 須磨と明石の風景は鮮明に残っているのに、京都駅に近づくにつれて記憶が溶けてゆく。東山と奈月の後を付いてサークルの他の仲間たちと一緒にここの改札を抜けたはずなのに、その時の情景がどこにも見あたらない。
 そんな奇妙な錯覚にとらわれながら1階に下りると、そこにはさらなる人だかりができていた。どうやらミニ・ライブが行われているようだった。軽快な男性ボーカルの声がギターに合わせて高らかに響き渡っている。奈月はその人垣の中に小さな体を突っ込み、しばしの間音楽に耳を傾けていた。テレビでも活躍するような知名度の高いデュオがそこにいたらしく、彼女は「やっぱ、本物はかっこいいっすね」と興奮気味に戻ってきた。僕にとっては、何から何までが非現実の世界の出来事のようだった。
 駅ビルの外に出ると、胸のすくような青空を背景に京都タワーがそびえ立っている。足を止めて見上げると、初めてここへ来たような錯覚がますます強くなるばかりだった。
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Author:スリーアローズ
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