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キラキラ 129

 そんな僕をよそに、奈月はバス乗り場に向かってすたすたと歩いた。17時を過ぎているというのに日差しは衰えるところ知らず、それどころか、ターミナルに入ってくるバスの熱気で、辺りは異様にむんむんしている。
「やっぱり、京都の夏は、ちょっと違いますね」と奈月は言いながら、バルーンの写真が貼ってあるうちわを久々に取り出してあおぎ始めた。それを見て僕も彼女に倣った。うちわの風の中に、バスの排気ガスの匂いが混じっていた。
 僕たちは嵐山行きのバス乗り場の前に立った。どうやら、先のバスは発車したばかりらしく、僕たちの前に待っている人の姿はなかった。
「それにしても暑いですね」と奈月は繰り返した。こめかみには玉のような汗がにじみ出ている。
「前回来た時にも、ホテルまでバスを使ったっけ?」と僕は聞いた。依然として記憶が甦ってこない。
「使ったと思いますよ。だって、それ以外に行きようがないじゃないですか」と奈月は返した。「私、ここからバスに乗って嵐山に行ったことが何度かあるんで、いろんな記憶が錯綜してますが、たしかあの時もみんなでバスに乗ったと思いますよ。すごいぎゅうぎゅう詰めで、須磨で海水浴した人たちは吊り輪を持って立ったまま寝てたような記憶もありますね。曖昧ですけど」
 奈月はそう言い、白いトートバッグを肩にかけ直した。そんな彼女の背中を見ていると、今回の旅は、今この瞬間から始まるような気がしてならなかった。須磨と明石を歩いたのはほんの序章で、今から本論に入ってゆく。そう思えた。
「前回来た時も、そのままホテルに直行したっけ?」と僕は次の質問を投げかけた。すると奈月は「とりあえずホテルに直行しといて、それから嵐山を散策しようという話でしたが、ホテルに着いた瞬間、みんなぐったりして、けっこうばらばらになっちゃいましたね。先輩はたしか、単独行動されたんじゃなかったですかね」と奈月が言った時、ようやく記憶の断片が蘇った。あの時僕は麻理子に電話した後で、幸恵の土産を買いに1人で街に出たのだ。
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Author:スリーアローズ
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