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キラキラ 133

「うん、いや、まぁ、そこまですることもない。奈月が問題ないって言うのなら、俺の方は全然構わないし、もし本当に不都合があれば、ホテルに着いてからいろいろ考えても何とかなるだろう」と僕は結論を先送りするように答えた。とはいえ心の中では、「大丈夫だ、俺と奈月は先輩と後輩の仲なんだ。大学生が合宿をするようなノリで泊まればいいし、おそらく奈月もそれくらいの感じでしか捉えてないはずだ」と自分を納得させるように言い続けた。だがその奥で、鏡の中の醜い顔が微笑みかけてくる。「ホラホラ、これがほんとうの僕だ。結婚を控えた女の子と泊まるだなんて、罰当たりな男だ」と。
 その時、えび茶色に塗られた72系統の京都バスが勢いよく入ってきた。
「あのバスですね、嵐山って書いてあります」と奈月は指をさして静かに声を上げた。
 僕はうちわをあおぎながらバスに乗り込んだ。大丈夫だ、きっと楽しい旅になる。心配することは何もない。この旅の主役は奈月だ。すべて彼女に任せておけばいい。座席に着いた後も、何度もそう言い聞かせた。そのうちバスは動き出した。
 京都駅発ということで車内には十分な空席があり、僕たちは後方の2人がけの席に隣同士で座ることができた。だが、バスは新幹線とは違い、冷房の効きは弱い。奈月は僕に向かってうちわをあおいでくれた。その度ごとに彼女の腕と膝が僕に触れる。汗ばんだ奈月の身体はさすがに少しだけ冷たい。
 京都タワーはあっという間に後方に消え、バスはそろそろ夕暮れに向かって時間が流れる真夏の京都の街を北へと進んだ。
「なんだか、疲れちゃいましたね」と奈月はうちわをあおいでくれながらそう言った。「私たちも、年をとったっていうことですかね?」
「っていうよりは、学生の時みたいに普段遊び慣れてないってことじゃないか?」と僕は応えた。
「たしかにそうかもしれません。私、ほとんど忘れかけてましたもん。楽しすぎて疲れるっていう感覚」
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Author:スリーアローズ
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