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キラキラ 134

 そう言って奈月は、うっすらと笑いながら、どこかおぼろげな視線を窓の外に送った。僕は、うちわをあおぐのをもうやめてもいいよと言った。すると奈月はそれを太ももの上に持っていったが、なおも小さく動かし続けた。ろうそくの火でも消すようなあおぎ方だった。
「ホテルに入って、とりあえずお風呂でのんびりしたいな」と奈月はつぶやいた。
 空はまだ明るいとはいえ、夕刻が近づいている。京都の真ん中を南北に貫く烏丸通には車がひしめいている。バスの車内もごった返してきた。バス停のたびに乗客が入ってくる。もはや空席は見あたらない。すし詰め状態になるのも時間の問題だ。
 それにしても、あの時東山たちとバスに乗った記憶がまるでない。ホテルに到着した後、幸恵の土産を買いに部屋を出たところからしか思い出せない。学生時代の想い出を辿る旅のはずなのに、肝心の記憶が消滅してしまっては、どうしようもない。京都に入った途端、今回の旅が前回とは違った意味を持つような気がしたのは、おそらくそのせいだ。
「あの日、東山は、どんなこと言ってたっけ?」と僕は質問を投げかけた。するとぼんやりと窓の外を見ていた奈月はゆっくりとこっちに顔を向け、「え?」と怪訝そうに声を上げた。同時にうちわをあおぐ手も止まった。
「さすがにそこまでは覚えてないですよ。さっきも言いましたけど、すべての記憶が曖昧なんです。何度も京都に来てますから、いろんな記憶がごちゃごちゃになってるんだと思います」
 奈月はさっきと同じことを言った。
「ただ、東山君は、京都に入るといつも、異様に熱く語ってましたね。土地にはパワーがあるんだって、耳にタコができるほど聞かされたもんです。たとえば、長崎っていう土地には、古くからいろいろな歴史的事件が集中して起こってきたけど、そういうのは決して偶然なんかじゃないっていうのが、彼の持論でしたね。だから前に先輩と来た時も、きっと興奮してたと思いますよ」
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Author:スリーアローズ
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