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キラキラ 136

「ということは、そのうち明石の君は、都に住むことになるんだな」と僕は推測した。
「結論から言うと、そうなりますね」と奈月は答えを言った。膝の上のうちわのカラフルなバルーンの写真がこっちを向いている。
「でも、明石の君が都に上がるまでには、さまざまないきさつがあったはずです」
「明石の入道が娘を離そうとしなかったとか?」
「詳しいあらすじは、しおりを見てみないとちゃんと思い出せませんが、とにかく明石の君は、源氏と関係を持った後も、まあ、予想通りですが、苦しんだんです」と奈月は穏やかな顔で返してきた。
「それから、たしか、源氏の妻である紫の上も微妙に絡んでたと思いますよ」と奈月は続け、足元のトートバッグにうちわをしまい、それと引き替えにしおりを取り出した。「とにかく、前回バスに乗ってホテルに行く途中、東山君はそんな話をしてたような気がします」
 四条烏丸の交差点を左折したバスは、四条通を西へと進んだ。等間隔に設けられたバス停に必ず停まるために、ずっと低速ギアでの走行だ。気がつけば、西の空の色は薄くなりはじめている。
 奈月はバスに揺られながらしおりを見ている。肘から肩にかけて僕の腕に触れていることに彼女は気づいているのだろうかと思う。すると、彼女は口を開いた。
「明石の君と会うようになった後、さすがに源氏も紫の上に対して申し訳なさを感じるんです。自分を信じて都でひたすら待っている紫の上が、風の便りにでも明石の君とのことを耳にすることがあれば、もちろん気の毒だし、恥ずかしいと思います。東山君は、源氏のこの思いを妻への情愛だと解釈してるみたいですが、私はそうは思いませんね。源氏は恋の駆け引きにはまって、奥さんのことをほったらかしにしてただけですよ。明石の君も可哀想ですが、それ以上に紫の上の方がずっと気の毒です」
 奈月はそう言い、脚を組んだ。彼女の筋肉質なふくらはぎが露わになった。
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Author:スリーアローズ
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