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キラキラ 138

 僕には光源氏に共感するところがあった。明石の君と関係をもったことを、紫の上に報告しなければ済まないという気持ち。それは、前回、嵐山で幸恵のことだけを考えて歩きながらも、その前に麻理子に電話しなければ済まなかったという心境によく似ている。
「結局、紫の上に打ち明けたことで、紫の上自身も、それから明石の君も、2人ともが傷つくことになるんです。すっきりしたのは源氏だけですよ」と奈月は追い討ちをかけた。まるで僕がなじられているように聞こえた。
「しかも、紫の上への手紙の書きぶりがまた、許せないんですけど」と奈月は続け、源氏が読んだ和歌を声に出した。

しほしほと まづぞ泣かるる かりそめの みるめはあまの すさびなれども

「あなたのことを思い出すと、しおしおと泣けてくるのです。かりそめに他の女性を抱いてしまったのは、海人(あま)の戯れごとのようなものにすぎません。ただ、どうしても止められなかったのです。それでももちろん、私はあなたのことを思い続けていますよ」と奈月は和歌を訳してくれた。
「で、その和歌の中で『しほしほ』とか『かりそめ』とか『あま』という言葉を散りばめてるでしょ。ほら、須磨という地には『うきめ刈る海女』とか『藻塩垂る海女』なんていう言葉が隠されてたじゃないですか。好きな人を思いながら密かに涙を流すっていう意味の言葉ですよ。源氏はこの期に及んで、紫の上の和歌に、海辺に流れた人の恋心を込めたんです。ほんと、虫がよすぎますよね、この男」
 奈月はそう吐き捨てた。その時バスは四条大宮の停留所で止まった。降車した人と同じ数だけの乗客が新たに車内に乗り込んできた。僕は話の続きが気になった。
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