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キラキラ 141

「明石の君も、それから紫の上も、光源氏に振り回されちゃうんですね、可哀想に」と奈月は声を小さくした。「光源氏が、明石の君とのことを紫の上に打ち明けたりするからですよ。それなのに、明石の君も紫の上も、源氏には広い心で接する。何か悟ってますよね、彼女たち。私には絶対できない」
 奈月がそう言った時、さっき彼女が教えてくれた話が頭をよぎった。
「ほら、奈月はさっき、光源氏には『性』と『癖』があったって言ってたじゃないか」と僕が言うと、今までしおりに目を落としていた奈月は顔を上げてこっちを向いた。バスは停留所に停車した。
「普段宮中に上がっている時は、光源氏はむしろ気むずかしいところがあって、簡単に女官たちには靡こうとしない。それが彼の『性』なんだ。でも、ひとたび恋に落ちてしまうと、何としてでもその女性を手に入れなければ気が済まなくなる、それが『癖』なんだって、さっき奈月は言ってたよな」
「ですね」
「それってさ、光源氏が好きになる女性は、特別な何かをもってるってことじゃないか?」
 奈月はこっちを見ながら考え込んでいる。まるで僕の顔に書いてある何かを解読しているようだ。
「光源氏って、母の身分があんまり高くなかったですよね」と奈月は切り出した。「父の桐壺帝は寛大な人で、身分だけで女性を判断しなかった。そしてやっぱり光源氏も、世間体じゃなくて自分の目で女性たちを評価してたんだと思うんです。その辺のことは、物語の前半に出てくる『雨夜の品定め』という場面で書かれてます。まだ女性を知らなかった頃の光源氏が、同年代の同僚たちと女性論を交わすんです。源氏は『中の品』といって、身分がそこまで高くない女性に興味をもちます。なので、先輩の指摘通り、紫の上も明石の君も身分云々ではなく、特別に心がきれいな女の子だったのでしょう。確かに源氏は彼女たちのそんなところを好きになったのかもしれませんね」と奈月は新たに車内に入ってきた乗客たちを見ながらそう言った。
「でも、彼女たちのやさしさに甘えるのは男として最低です」と彼女が続けると、バスは動き出した。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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