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キラキラ 142

――男として最低。奈月の言葉が胸に響く。それはまるで僕に向けられているかのような錯覚を感じる。心がきれいな女の子に愛されていながら、そのやさしさに甘えて、彼女たちを傷つけてしまう。
 僕がため息をつくと、奈月はふっと顔をこっちに向けた。
「なんだかさ、『源氏物語』って、妙にリアルだな」と僕は言った。「千年以上も昔に書かれたとはとても思えない」
 すると奈月は窓の外に目を遣り、だんだんと金色がかってゆく西の空を眺めながら「というより、どんなに時が経っても、人を好きになる心っていうのは変わらないってことじゃないですかね」と言った。
「つまり人間は進化しない」と僕がつぶやくと、奈月は「ですかね」と小さく返してきた。
「私には男心っていうものが理解できないんで、光源氏という人にはなかなか共感しきれませんが、明石の君とか紫の上とか、六条御息所とかの気持ちはものすごくよく分かります。どんどん時代が先に進んで、それと一緒に人間も進化しているようには見えたりしますけど、私はそうは思いませんね。特に、佐賀の実家に帰ってから、つくづく実感します。今も昔も人間は大して変わらないです。むしろ昔の人の方が、むしろ人間らしく生きてたんじゃないかなって。ましてや、恋愛になると、なおさらだと思いますね。人間である以上、人を好きになるんです。恋心を止めることなんてできないんです」
 奈月はそう言い切った。
「たとえば、メールとか、けっこう悩みの種だったりするじゃないですか。せっかく送っても返信しない人がいたりして」と奈月は僕の顔を見て言った。もちろんそれは僕のことだ。僕は苦笑いで返した。
「『源氏物語』には和歌がたくさん出くるでしょ。で、そこには恋の駆け引きが詠まれますよね。あれって、今のメールそっくりだと思いません?」と奈月は語尾を上げた。
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Author:スリーアローズ
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