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キラキラ 144

「なるほどね、偶然のように見えて、じつは桐壺院の思惑だったんだ」
 僕がそう言うと、奈月はすっと顔を上げた。
「私、最近になって特に思うんですけど、偶然と必然って、よくよく考えてみれば、対極じゃなくてけっこう紙一重だったりしません?」
 バスは車折神社の赤い鳥居の前で停まった。新たに乗り込む人よりも降りる人の方が多い。それで、吊り輪につかまって立っている人の数はずいぶんと減り、車内はたちまちすっきりとした印象になった。
「たとえば、人との出会いなんてまさにそうじゃないですか。偶然に出会った人とたまたま仲良くなったのか、それともその人と出会ったのは必然で、本当は予め定められていたのではないか。そんなことを突き詰めて考えると、偶然と必然って、感じ方の違いにすぎないと思ったりします。つまり、人生なんて、ただ流れに乗って、雲のように漂うものなのかもしれないなって思えるんです」と奈月は言った。
「なんだか、奈月にしては、投げやりなことを言うなあ」と僕は感想を述べた。すると彼女は「誰と出会い、どこにたどり着くかなんて、自分の力じゃどうすることもできないんですよ」と続けた。
 その言葉を聞いた時、奈月は自分の結婚について言っているのだと気づいた。「最近になって特に思う」というのは、そういうことだ。「人生なんて、ただ流れに乗って、雲のように漂うもの」という捉え方が、現時点における奈月の結論なのだ。彼女が「縁」という言葉を好まないわけが、妙に納得できた。
「光源氏が明石を離れて都に戻るというのも、先輩が言うとおり、偶然じゃなく、亡き桐壺院の思いであり、つまりは住吉の神の導きだったわけです。光源氏はそんな星の下に生まれた人物だったんです」
「でも、輝かしい星の下に生まれた人を好きになったがゆえに、置き去りにされる女性もいる」と僕がつぶやきかけると、奈月は「それが明石の君だったわけですね」とすぐに応じた。
「光源氏が自分の方を向いてくれなくなって、悪夢が現実になったような思いをしているところに、源氏は都に帰ってしまうわけです。私なら、たぶん、気が狂うでしょうね」と奈月は寂しげに笑った。
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Author:スリーアローズ
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