スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キラキラ 145

 ただ、僕は、明石の君が気の毒だとは思いつつも、どうしても光源氏の目線で物語を読んでしまう。
 義母との叶わぬ恋に破れ、その後で妻を愛人の物の怪によって失い、どうすることもできない心の『癖』から再び危険な恋に落ちた光源氏。政敵である弘徽殿女御の反目にも遭い、自ら都を離れて須磨に退去した。そこにはきっと「自粛」の他に「反抗」の意味もあったはずだ。流離の地での失意の生活の中、おそらく源氏は、都から自分を求める声を心のどこかで待っていたに違いない。
 だが彼は、明石で恋に落ちてしまった。いくら流離したところで彼の心の『癖』は消えてはいなかった。明石の君と密通した直後に、若妻である紫の上に対して罪悪感を感じ、新たな愛人の家に泊まるのをやめた。そこへもってきて、都から声がかかった。思わぬ展開になりながらも、最後は源氏の希望が叶う形になったわけだ。
 これら光源氏を取り巻く物語をたどる時、どうも僕の人生と重なるものを感じてしまう。もちろん、僕は源氏のような輝く星の下に生まれたわけでもないし、彼のような華々しい人生を送っているわけでもない。だが、そういうことを差し引いて考えても、源氏の人生に惹きつけられる自分がいる。
 太秦を抜けたバスの車窓越しの景色がしだいに歴史の色を帯びてきたのを見た瞬間、ふとこんな言葉が頭をよぎった。
「思い通りにならないようで、じつは思い通りになっているのが人生」
 それは、もしかすると過去にどこかで聞いた言葉なのかもしれない。ただ、ほとんど偶然に、僕の脳裏を駆け抜けたような気がした。偶然? 偶然と必然は対極のようで実は紙一重・・・
 すると奈月がこう言った。
「思い通りにならないようで、じつは思い通りになっているのが人生ですよね」
 自分の耳を疑う。僕の心の中の声が聞こえたように錯覚したのではないかと思う。だが次の瞬間、奈月は口を動かしてこう続けた。
「ただ雲のように漂っているようで、結局は、自分の思う方に流れていってしまうのかもしれませんね、人生って」 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。