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キラキラ 147

「都から赦免が言い渡されて、もちろん光源氏はうれしかったんですが、あまりに急な話でもあったので、明石の浦を離れることに寂しさを感じたんですね。須磨では、寂しかったり暴風雨に襲われたりと、何かとつらいことが多かったですが、やっぱりこの明石には格別の思い入れがあったんでしょう。東山君がどこかに書いてましたけど、『縁』あって明石に来たということです」と奈月は言った。
 奈月の話を聞いていると、わけもなく高校時代の記憶が甦った。これまでの半生を振り返ってみても、あの3年間ほど1日が長く感じられたことはなかった。学費の安い国立大学に合格するために勉強をし、放課後は部活動で適当に汗を流し、同じ学年の3つ編みの女の子に恋をした。ただ、退屈さは否めず、大学生になって独り暮らしをすれば、何か楽しいことが待っているだろうと思いつつ毎日を過ごしたものだ。
 だが、そんな高校生活でも、不思議と卒業式の時には特別な感慨が込み上げてきた。意外にも未練のようなものさえ感じた。これから自分は田舎を出て新しい生活に入ってゆくのだと思うと、妙に不安になった。それと同時に、いかにこれまで自分は高校というシステムに守られていたのかということを思い知らされた。
 卒業式の最中、僕は「1日は恐ろしく長く感じられたが、3年間は一瞬だった」と実感し続けた。きっと10年なんてあっという間に過ぎるのだろうと思うと全身に寒気が走った。そして、あれから10年以上経った今、僕は思う。人生なんて、あっという間なのだろうと。
 そうやって卒業式の体験と明石に未練を感じる光源氏とを重ね合わせていると、バスはがたがたと音を立て始めた。嵐山に続く道幅がしだいに狭くなり、舗装も悪くなってきたのだ。バスに揺られながら奈月は言った。
「それから光源氏は、一夜も欠かさず明石の君の家に泊まるようになります。恋心に再び火がつくんです」
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Author:スリーアローズ
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