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キラキラ 148

 そう言って奈月は、膝の上のしおりに再び目を落とした。
「ちょっと、生々しい想像ですけど、2人とも、かなり濃密な夜を過ごしたんでしょうね。6月くらいになって、明石の君の気分が悪くなったと書いてあります。妊娠しちゃったんです」
「妊娠?」と思わず僕の口から言葉がこぼれた。その後でふと我に戻った僕は、横目で周りの人を気にした。だが、他の乗客はこちらに頓着する様子もなく、ほとんどが窓の外の風景に目を遣っている。
「なんだか、すごいな、光源氏は」と僕は小声で続けた。
「当時の貴族男子にとっては、複数の女性と結婚することは、まぁ、あったわけですから、妊娠自体が今ほど問題になることはなかったとは思いますけどね」と奈月はやはり、淡々と語った。「当時の法律では、一応不倫は御法度だったって東山君は言ってましたね。一夫多妻制が許されてたのは、優秀な世継ぎを生まなければならない天皇だけだったんです。でも、その法律自体、強い拘束力があったわけじゃなかったから、貴族たちは、陰で自由な恋愛に落ちてたみたいですよ」
「ただ、俺の中では、光源氏って、気品と聡明さのある、どちらかというと草食系男子のイメージがあったけど、こりゃ完全な肉食系だな」と僕は思ったことを口にした。
 奈月は「たぶんですけど、一流の男って、多面性を持ってるんだと思いますよ」と言った。
「男性論が語れるくらい、奈月もいろんな人と出会ったんだな」と僕はやや意地悪く返した。すると彼女は「だったらいいんですけどね」と舌を出した。
 その時、奈月の肩越しに流れる風景の中で、川面がきらめいた。いよいよ嵐山に入ろうとしている。しおりに目を落としたままの奈月は、それに気づくことなく話を続けた。
「別れの間際になってこんなに愛情が深くなっては後で互いに傷つくだけだと源氏は思います。それでも自分の思いを止められなかった。後先のことが考えられないくらいに燃え上がってたんですね」
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Author:スリーアローズ
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