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キラキラ 153

 次の停留所は嵐山だという、録音されたアナウンスが流れた。ところが、さっき車折神社を過ぎた辺りからずっと道路工事が続いていて、バスはなかなか思うようには進んでくれない。
「けっこう、時間がかかっちゃいましたね」と奈月は顔の半分を陽光に照らされたまま言った。
「だいぶ、空が夕方っぽくなってきたな」と僕は外を見ながら応えた。
 バスは工事用の信号の前で停車した。奈月はしおりに目を遣りながら、話をさらに進めた。
「で、その夜なんですけどね、明石の君の方も、初めて光源氏の顔をはっきりと見たわけです。源氏の容姿はもちろん言うまでもなかったんですが、それより、都から流れてきて以来、長年の仏道修行で顔がやつれているように見えて、それがまた明石の君の胸を打ったんです。好きな男がもがき苦しんでいる姿を見ると、どうしてもうるうるってきちゃうんですかね」と奈月は言った。
 信号はなかなか青にならない。対向車線からは、信号待ちを終えた車たちが次々と流れ込んでくる。
「その後に描かれた明石の風情が、またいいんです。『波の声、秋の風にはなほ響きことなり。塩焼く煙かすかにたなびきて、とり集めたる所のさまなり』。風に乗って運ばれる波の音が心に響き渡る。遠くで塩を焼く煙もかすかに空にたなびいて、あらゆる風情をここに集めたような景色が広がっている。もちろんその風景の中には、光源氏と明石の君の姿も含まれるわけですね。光源氏は、明石の君に向けて、和歌を詠みます。

このたびは 立ちわかるとも 藻塩やく けぶりは同じ かたになびかむ

 たとえ離ればなれになっても、藻塩を焼く煙が同じ方向にたなびくように、私たちはそのうちいっしょになるよ、っていう意味です。源氏は、いずれは明石の君を都に呼び寄せたいと思ってるんです」
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Author:スリーアローズ
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