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キラキラ 155

「なんだろう、源氏が詠んだ和歌と比べると、やっぱり、どこか、せつない感じがするな」と僕は思いを述べた。すると奈月は「同感ですね」と応えた。
「『かひなき』とか『うらみだにせじ』とか、そのへんの言葉に、何だかもの悲しさを感じますね」
 奈月はそう言って、もはやよれよれになったしおりを再度めくった。
「明石の君が詠んだこの歌には、いろんな意味が込められてると東山君は書いてますね。そのまま訳すと、海女がかき集めて焼く藻塩の火のように私の物思いは尽きませんが、かと言って今はどうすることもできません。だから恨み言を申すのはやめましょう、っていうことですね。ただ、この和歌には、いろんな言葉が掛け合わされてます。『海女』と『尼』はもちろんですが、そのほかにも『藻の思ひ』と『物思ひ』、それから『思ひ』の『ひ』には『火』が掛けられてるとのことです。それに、『かひなき』と『貝なき』、『うらみ』には『浦』を掛けてるということです。そう考えると、明石の君は、源氏が詠んだ和歌に対して、こんなにも手の込んだものを返したんですね」
「『藻塩』を焼く煙が同じ方向に流れるようにまた会えると詠んだ光源氏とは対照的に、浦で藻塩を焼く火のようなめらめらとした未練を詠んだわけだ。これって、女心なのかな?」
 僕がそう言うと「かもしれませんね。ほら、都はるみの『北の宿から』っていう歌にもあるじゃないですか。『女心の未練でしょう、あなた恋しい、北の宿~』って」と奈月は歌を交えて返した。
「都はるみって、奈月の世代じゃないだろう?」と笑いながら聞くと「うちのお父さんが好きなんですよ。介護しながらよく聞かされたもので」とさらに笑い返してきた。
 僕は明石の君の和歌をもう一度奈月に詠んでもらった。

かきつめて あまのたく藻の 思ひにも 今はかひなき うらみだにせじ
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Author:スリーアローズ
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