スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キラキラ 156

「そういえば、海女が海辺で焚く火に投げ木を入れるっていう和歌がなかったっけ?」と僕は聞いた。奈月は、「えっと、誰でしたっけ、『投げ木』という言葉に、心の『嘆き』を掛けたんですよね」と言いながら、しおりのページをさかのぼった。
「あ、ありました。藤壺と朧月夜がその表現を使ってますね。それから、光源氏が六条御息所に返した和歌の中にも心の『嘆き』という言葉が詠まれてます」
「つまり、海女が浜辺で焚く火には、心の『嘆き』がちらほらと見え隠れしてるわけだ。きっと、明石の君ともなると、そのへんのことをしっかり踏まえた上で、さっきの和歌を詠んでるな」と僕は仮説を立てた。
「あなたは『そのうちまた会えるだろう』とか言って都に帰られるけど、明石で待つ私は、ずっと未練の炎をくすぶらせながら嘆いてるんですよ、っていう思いをそれとなく和歌に込めたんでしょうね。女心だ・・・」と奈月はしみじみと語った。
「で、それでも光源氏は都に帰っちゃうわけだ」と僕は聞いた。
「ですね。それは源氏の宿願でもあったわけですから」
「それに、住吉の神の導きでもあった」
 僕がそう続けると、奈月は「やっぱり先輩、東山君っぽくなってきましたよ」と目を丸くした。そのうえで「光源氏と明石の君は、最後の夜、琴を弾き合うんです。思えば、2人の恋物語は源氏と明石の入道との琴のセッションから始まりましたよね。琴の音色が物語を包み込むようですね」と言った。
「でも、源氏と明石の君との物語には、まだまだ続きがあるんだよな」と僕は確認した。すると奈月は「ですね。ただ、それは、切ないことに、六条御息所が消滅する物語と引き替えなんです」と答えた。
 バスは嵐山の停留所に停まった。外に出た時、太陽は西の山にずいぶんと近づいていた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。