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キラキラ 161

「ほら、嵐山公園が見えますよ」と奈月が指さした。嵐山公園というのは大堰川に浮かぶ中州のことで、渡月橋はそこで終わっている。ホテルに行くには、嵐山公園からさらに小さな橋を渡って対岸に行かなければならないと奈月は説明した。
「あそこって、春には桜がすごくきれいなんですよ」
 奈月はそう付け加えてから、ソフトクリームをすすった。
「もちろん、あの時も通ったよな?」と僕は確かめた。すると奈月は僕の方を振り返って、「通りましたよ、みんなで」と笑いかけてきた。「あの日は今日よりも時間帯が早かったですね。空がもっと青かったですから。須磨で泳いだ人たちはけっこうくたびれてましたよ」
「そうだったかな」と僕は首をかしげつつ、その時の記憶を頭の中で探した。
「それにしても、今日はあの時とはまるで別の旅みたいですね」と奈月は言ってきた。僕は彼女の横顔に目を遣った。「つい昨日のことのようにも思えるし、逆に、すごく昔のことのようにも思えるし、それから、前世での出来事のようにも思えたりしますね」と彼女は述懐した。
「前世?」
「『源氏物語』には『宿世(すくせ)』という言葉で出てきますよね。現時点での出来事は、良いことも悪いことも、すべて前世での行い、つまり宿世によるものだっていう考え方です。それが、前世での記憶が今につながってるような気もするんですよね。頭がおかしいんでしょうね、私」
 奈月は僕と似たようなことを感じている。さっきここへ来るバスの中で、彼女は「思い通りにならないようで、じつは思い通りになっているのが人生だ」としみじみとつぶやいた。それは、その時ちょうど僕の頭に浮かび上がっていた言葉と怖いくらいに一致していた。
 そして今、彼女は「前世での記憶が今につながっている」と言った。つまり、「これまでの出来事は、すべて今から起きることの序章だ」という僕の感じ方に、かなり近いように思う。
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Author:スリーアローズ
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