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キラキラ 163

 僕たちが通されたのは純和風の客室で、畳から壁まで綺麗に磨かれているために、電灯を付けた途端に部屋の隅々までがぱっと明るくなった。
「わぁ~、素敵な部屋」と奈月は声を上げ、荷物を置いて、さっそく畳に寝っ転がった。
「おいおい、そんなワンピースとかで転がるなよ」と僕は言った。すると奈月は「まあ、いいじゃないですか、見えても減るもんじゃないんですから」と応え、畳の上で両手を広げて背伸びをした。
 僕はそんな彼女を見ながら黒檀の座卓の前に座った。
「何度も言うけど、前に泊まったのと同じホテルだとは思えないな」と僕は感想を述べた。
「ことごとく綺麗になってますね」と奈月は寝そべったまま、顔だけこちらに向けて言った。
「俺たちの部屋はこんなに広くなかったような気がするね。旅行というよりは合宿っていう感じだったな。そんな印象だけが何となく残ってるよ。奈月と東山の部屋はどうだった?」
「私たちの部屋も、たぶん先輩たちと同じ広さだったと思いますよ。広すぎて間延びした感じでしたから。なんか、殺風景でしたよ。でも、今日は2人なのに広すぎるって感じはしないですね。何でだろう?」
 奈月は寝そべったまま天井を見上げ、しばらくして後ろ髪に付けたシュシュを外した。その瞬間、彼女の黒髪が、電灯に白く反射している畳の上にふわっと広がった。
 食事は19時からなので、それまで風呂に入ることになった。奈月は支度があるからと、僕の方が先に部屋を出た。館内は全てが清潔に保たれていて、朱色の絨毯が敷かれた廊下は足音を完璧に吸収した。天井に埋め込まれたスピーカーから流れる箏曲のBGMが、小さいながらにくっきりとした音質で耳に届く。そういえば、光源氏と明石の君の接近には、琴の音色が影響していたことを思い出した。
 風呂から上がって再び部屋に戻った時、すでに夕食の準備が調っていた。窓際では、えび茶色の浴衣をきっちりと身にまとった奈月が、外をぼんやりと眺めていた。
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Author:スリーアローズ
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