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キラキラ 164

「待たせたかな?」と僕は、濡れたタオルをハンガーに掛けながら聞いた。
 すると奈月は「私もちょうど今戻ってきたばかりです」と言いつつ、座卓の前に腰掛けた。さっきまでポニーテイルだった髪は、後ろで小さくまとめられている。そのせいで、細い首筋が露わになっている。学生時代の奈月からは想像もできないくらいに、大人びた表情を見せている。
「やはり、お風呂までリニューアルされてましたね」と奈月は言い、膳に載せられた料理を俯瞰した。
「ホテルの至る所が綺麗になってるね。あの時の記憶が、さらに思い出せなくなってるよ」と僕は応え、奈月の前に座った。
 僕と対面した奈月は、その黒々とした丸い瞳を向けて「何だか、ワクワクしますね」とかすかに口元をほころばせた。「須磨とか明石でも感じたことですけど、楽しくて胸が詰まりそうになるなんて、何年ぶりかなって思いますね。いや、学生の頃以上のワクワクかもしれません」
 その時、接客係の女性が部屋に入ってきて、瓶ビールを運んだ後、膝を付いて挨拶した。奈月は彼女が部屋を出たのを確認してから、食前の梅酒を口にした。そうして、だしぬけにこう聞いてきた。
「先輩、今、彼女とかいるんですか?」
 僕は梅酒の入ったショットグラスを口の直前で止めて、奈月の顔を見た。彼女の瞳は、さらに黒さを増したかのように、まっすぐこちらに向いている。
「まぁ、いないこともないけどな」と僕は曖昧な返答をし、それから梅酒をゆっくりと口の中に注ぎ込んだ。思った以上に濃厚な酒だった。
「へぇーっ、いるんだ。そりゃ、そうですよね。東京には素敵な女の人はわんさと歩いてるでしょうし、何より、先輩はモテますしね。いいなー」
 奈月はもう酔ってしまったんじゃないかと思わせるような声を上げた。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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