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キラキラ 168

 奈月の忠告は、僕の心を少なからず揺すぶった。
 もう先輩ったら、自分だけの感情で突っ走らないでくださいよ。その人がいつまで先輩と一緒に遊んでくれるかなんて、分かんないですよ。女って、男の知らないところで傷ついてるものなんですから!
 奈月の目に見つめられていると、さらにそんなことを言われているような気がした。僕はまさに、そのようにして麻理子を失ったのだ。幸恵に夢中になっている間、麻理子が傷ついているとことに僕は気づかなかった。
 僕がビールを飲み干すと同時に、奈月は「あー、でも、うらやましいですね。東京での生活かぁ、楽しいですか?」と話題を切り替えた。僕はグラスを置き、改めて奈月の黒い瞳と向き合った。
「俺思うんだけどさ、人間って、状況に適応してゆく生き物なんだよ。最初は、まさか俺が東京に出るなんて、思いもしなかったよ。東京の、しかも本郷に住むことになるとはね」
「本郷、ですか?」
「そう。東大がすぐ近くにあって、ちょっと歩けは上野にも出るし、南に降りたらお茶の水にも行ける。お茶の水界隈は、特に俺が好きなところで、いわゆる都心だ。そんな所にいきなり出て行ったわけだから、最初はドキドキだったさ。でも、そのうち慣れたね。なにしろ人が多いわけだから。何て言うんだろう、とりあえず何かに紛れていれば、どこかにたどり着けるっていう感覚かな」
 奈月は、興味深そうに話を聞いている。その時、彼女の周りに、うちわに描かれた佐賀のバルーンフェスティバルの光景が浮かびあがった。
「楽しそうだけど、なんとなく、楽しくなさそうな気もしますね」と奈月はつぶやいた。
「で、奈月の方はどうなんだよ。俺なんかよりも、もっと楽しい生活をしてるんだろ?」
 僕がそう問うと、彼女ははっと我に戻ったような表情に戻り、悲しそうに笑った。
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Author:スリーアローズ
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