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キラキラ 171

「いいえ、すごく重なるところがありますよ」
 奈月はそう返し、籐の椅子に深くもたれかかった。僕には奈月が本心から言っているとは思えなかった。もしかすると六条御息所に憧れているのかもしれないと思った。東山にとって御息所は理想の女性だったのだ。
「それで、光源氏が都に復帰した後、六条御息所はどうなるんだろう?」と僕は聞いた。奈月は、ふっとこちらに顔を向けて、「さっきから何度か話題に出てますけど、彼女は物語の中から消えていきます」と応えた。「明石の君の台頭によって、たちまち影の方に追いやられるんです。六条御息所は消滅し明石の君が再生されたっていうことですよね」
「で、その明石の君は、まさにこの場所に引っ越してきたわけだな」
 僕は質問の矛先を軌道修正した。
「まさに、この場所ですよ」と奈月は足元を指さした。それから、やおら立ち上がり、部屋の隅に置いていた白いバッグからしおりを取り出してページをめくった。そのついでにスマートフォンを手に持って再び椅子に着き、「ちょっと、しおりを読んでみますね」と言ってから東山の文章を朗読した。
「都に帰った光源氏は、かつての輝きを取り戻すことになる。なにしろ彼には、故桐壺院が味方していたし、住吉の神の導きもあったわけだ。そのような力を借りて、逆境を見事に切り抜けるということで、彼は正真正銘のスターであることが証明されたわけだ。冒頭に私が述べた通り、光源氏の流離は、彼がさらに高みに駆け上がってゆくための通過儀礼だったのだ。
 さて、過去の栄光をすぐに手に入れた光源氏は、さっそく、流離の間寂しい思いをさせていた女性たちに報いてゆく。特に妻である紫の上へのもてなしは手厚かった。だが、そんな時、知らせが届く。明石の君に女の子が生まれたのだ」
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Author:スリーアローズ
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